二三戒 幻獣②
こうして戦っている時、いつも目的が分からなくなる。幻獣を退け、眠兎を助けるためだと分かっているが、剣を振っている時はその時の目的以外に意識がいってしまう。
そもそも、なぜ俺は世界政府に従って働いているんだ?物心付く前から戒盾になるために勉強と訓練をしてきた。その頭と五体があるなら他にも仕事は選べたはずなのに。過去の日々は思い出せるのに、戒盾になるきっかけみたいなものは全く思い出せない。まるで自分が産まれる前の遠い過去のように。
「あぶねぇ光狼!」
キュイン――
呆けていた俺に幻獣は黒いレーザービームのようなものを放ってきた。
「
馬将が指を鳴らすと、叢雲が漆黒に覆われる。馬将の言う通りに幻獣のレーザービームをぶった斬ると、パチパチと音を立てながらレーザービームは霧に変わっていく。
「ぼーっとすんな。今はあの幻獣に集中しろ。」
「わるい。」
蛇亀は幻獣に飛びかかり湾刀を振る。計5回の斬撃は、幻獣の皮膚を少し削るようなダメージしか入っていなかった。
「あれぇ?俺の使千器毒出てるはずなんだけどなぁ。」
人間離れの3人で攻撃しているが、全くと言っていいほど効果が無い。
「小僧共、それが本気か?貴様らは娘が傷つく可能性があると思い攻撃の手を緩めているのだろう。だが娘を見ろ、私達があんなに攻撃してるのにかすり傷すら無い。」
戦闘中で気に止めていなかったが、眠兎は仰向けの状態で気絶している。確かに傷らしきものはなく、これなら容赦なく幻獣に攻撃ができる。
「馬将の言う通りだ。光狼、少し本気で幻獣を叩くぞ。」
蛇亀は使千器を地面に叩き付ける。すると湾刀の刃からじんわり黄色い液体が流れ出てくる。
「俺は弱らせる専門家だからな。トドメは任せたぞ!」
「ふん、絶命させるには小僧が斬り刻む方が効果的だな。風穴を開けて刻みやすくさせてやろう。」
蛇亀は前に行き、馬将はその場から幻獣にダメージを与え始めた。
「15秒間、俺は今から撃つ技の為に集中する。その間に幻獣を弱らせてくれ。」
「「任せろ。」」
俺は地面に叢雲を突き刺し目を閉じる。
こうして意識を一点に集中させると思い出す。
「だいぶいい感じか〜?」
眼を開き幻獣を見ると、傷を付けることがやっとだったソイツが片膝を着いている。息は上がり身体には穴が複数空いている。兎の耳の上にある天使の輪のようなものは、切れかけの電球のようにチカチカしている。
「
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