二二戒 幻獣

 眠兎の頭に突き付けられていた鉄砲が逸れて眠兎の耳を抉った。震えているように見えた眠兎の使千器が宙に舞い、馬将の鉄砲をずらしていた。

「っ!娘、ここに来て召喚するのか!」

 馬将は訳の分からないこと言って大きく距離を離す。

「あ、あぁぁぁ!!!」

 眠兎は苦しみだし胸の辺りから光る結晶が出てきた。宙に舞っている眠兎の2つの使千器がその結晶を砕くと、それは眩い光を放ち、ゲームのRPGに出てくる魔法の呪文のような輪が空に段々になって放たれる。

 ずっと不思議に思っていた。牛騎が飛行機の中でやった使千器の合体。眠兎は同じケースに使千器を入れていたのにどうして合体しないのか。もしかしたら、馬将の言う『召喚』されるが関わってくるのか?

 結晶の光の中からぼんやりと姿が現れた。

「何をしてる小僧共、私の使千器を返すんだ!窮炎上きゅうえんじょうを解除する。今は私の民を避難させるのだ!」

 確かに今はいがみ合っている場合では無さそうだった。俺と蛇亀は死合場にいる観客達の避難誘導をする。

「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」

 観客の避難が済むと、結晶の光からでてきたやつははっきりと姿形が見えるようになった。

「こいつはな、使千器の持ち主が危険になると現れる幻獣だ。現れる理由は、苦しんでいる使千器の持ち主を楽にするためだ。」

 結晶から現れた幻獣はとても醜い形をしていた。頭部が肥大化し、大きな口と複数の目、頭頂部には兎の耳のようなものがあり、その上には天使の輪のようなものまである。胴体は人の形をしていて、皮膚は所々ツギハギと金属が混じっている。節々からは赤い液体が滴っていて、背中には絵で書いたような歪な翼が生えている。

「貴様らは、我々十二支が悪魔と契約したと聞いているだろう。それには少し語弊がある。我々が契約したのはこの幻獣だ。死の淵に追いやられた私や他のヤツらは、こいつと契約して十二支となり不死となった。」

 だからあの時、蒼猪さんは『天使みたいなキモイやつ』って言ってたのか。

「どうすればいい?」

 蛇亀は湾刀を構えながら馬将に尋ねる。

「知れたことを。抗え。娘を助けたいならそれしか無い。」

「邪魔するなよ。」

「しないさ。むしろ幻獣討伐に協力しよう。貴様らが幻獣を刺激すれば、アレは周囲の物を破壊するだろう。」

 俺達3人は各々の使千器を構え一点を見る。

「「「ブチ殺してやる!」」」

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