二十戒 死合開始

「控え室はここだ。戦いにおいて制限は無い。ここにある物は好きに使え。」

「おい待てよ、俺達のチームは1人足りねぇぞ。」

「ふむ、なら1人好きにしていいぞ。私の家臣から選ぶか、自分で呼ぶか。」

 眠兎は速攻で透明の板で誰かに通話をかけていた。

「んだよ。」

「蛇亀!今暇!?印都まで来て欲しいんだけど!」

 眠兎は蛇亀に通話をかけていた。確かに、戒盾で叩き潰せばこの試合は簡単に終わるだろう。

「まぁいいよ。ちょうど用事もあったし。」

「馬将さん、3人揃うからちょっと待っててね。」

「ふん、良いだろう。死合は今日の午後9時だ。」

 俺達は再壊の死合場から一旦出て蛇亀の到着を待った。


 午後8時55分

「お待たせ。」

 蛇亀が尾に亀の甲羅が付いてる蛇に乗ってやってきた。背中には包帯が巻かれた湾刀を背負っていてやる気も充分だった。

 死合場のゲートを抜けると、そこは何のギミックのない普通の地面と、それを囲む観客の熱気で溢れていた。奥から3人の男が現れ、中央の馬に乗った男がマイクを握り一喝する。

「今宵の宴は一味違う!遠路はるばる、私の使千器を奪い取りに来た勇敢な戒盾十三人の3人が、 今日の主役だ!!」

 ウオオォオオォォ!!!

 観客は喜び、叫び、そして楽しむ。このコロシアムはこの国の娯楽で、伝統的な競技なのだろう。

 馬将がマイクを客席から少し離れた場所へ投げる。

「ここからはこのマハルが実況するぜ!みんな、今日は特別な日になる!夜が明けるまで騒げ!!」

 観客の興奮はマハルという実況者に煽られさらに激化した。スポーツ観戦している時の客席はこんなに興奮していないだろう。

「さてじゃぁ早速行ってみよう!第一戒戦の闘者は名乗れい!」

「おい、誰が最初に行く?」

「俺が行くよ。」

「おお〜じゃぁバフでもかけとく?盛り上がるよね!」

 眠兎は実況席に演奏の許可をもらいに行った。

「な、なんと!?戒盾チームのうさぎさんが生ギター演奏を戦闘BGMにしてくれるみたいだ!異論あるやつは〜?居るわけないよな〜!?」

「それじゃぁ行くよ!六絃琴旋律・喜ギターバフ・クレイジー!!」

 眠兎は実況席で派手にギターを演奏し始める。

 ウオオアアァァァ!!!

 観客が盛り上がり、向こうからは重そうな鎧を纏っている男がこの場の中央付近に歩いてくる。

「俺はハシバだ!」

「我らが馬将軍の先鋒はハシバ!馬将さんの右腕的存在の彼が一戒戦目の闘者だッ!」

 蛇亀も対戦者の方へ歩いていく。

「蛇亀だ。」

「対する戒盾軍の先鋒は蛇亀!戒盾十三人では4番目の実力者にして、自然を愛する心優しき一面もあるこの男がハシバの相手だ!」

 ハシバと言う男は腰に帯びた剣を抜き、蛇亀は背中の湾刀の包帯を取り始めた。解かれた包帯の隙間から見える湾刀の刀身は濃い緑色で、普通の湾刀には見えなかった。

「それでは第一戒戦、ハシバ対蛇亀!死合開始だッッ!!!」

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