一六戒 蹂躙

 あの独特な形の建物が見えてきた頃、黒電話部隊の顔も多くなってきた。中には破壊者もいて、彼らが戦っていた破壊者は龍の兵器だと知った。

「お前達、ダットはどうしたニダ?」

「一旦龍と話をする。通してくれ。」

 黒電話部隊の男は快く龍のいる黒い部屋に案内してくれた。

「おかえり。どうだったかね?」

「俺はお前のした事と彼らの考え、そしてダットのボスの正体を知った。うさぎは逃げたが、残った彼らは一時休戦の後に再度人員を絞って戦うそうだ。」

「そうか。キム、兵を引かせろ。」

「了解ニダ。」

 案外すんなり龍は彼らの要求に答えた。ダットのビルで感じた違和感が再度した。これが杞憂でなければいいが。

 

 数時間後、眠兎が起きるのと同時に、大量の黒電話部隊と破壊者、他にも見た事のない兵器がこの奇妙な建物に集った。

「狼に兎くん、君達はよくやってくれた。無駄に首を突っ込んだ月兎さえ居なければダットを潰すのは容易い。さ、私の使千器だ。」

 龍は杖を渡してきた。

「これは封碧辰ふうへきしんたつに会った時伝えてくれ、『使うなら気をつけろ』とな。」

 約束通り、龍に使千器を譲ってもらった。これが偽物の可能性は無い。なぜなら、戒盾が自分以外の使千器を握ると恐ろしく重く感じるからだ。一見軽そうなこの杖を俺が持つと、まるでバーベルのように感じる。

「さ、君達は任務に戻ってくれ。私はこれからやる事があるんでな。ありがとう。」

「光狼〜、行こっか。」

 龍の部屋を後に、俺達は黒電話部隊に案内されてヘリのある滑走路に来た。

「龍様に、お前達を無事に帰すように言われたニダ。どこに行けばいいニダ?」

「英政府王国まで〜!」

「まて、その前にダットのビル付近に行ってくれ。」

 1つ気がかりがあった。自国に被害を出して内戦まで激化させている龍が簡単に敵の言うことを聞くとは思えなかった。ダットのビルで子供や老人を見た時の違和感が正しければ、やつは何か仕掛けている。


 ズドン――

 ガラガラガラ――

 ダットのビルやその周辺は、多くの兵器と黒電話部隊で埋め尽くされていた。建物は崩れ、今飛んでいるヘリからも見えるほど多くの血が流れていた。

「ああ、今龍様から指示があったニダ。ダットの所にいる子供型クローンと老人型クローンが自爆するニダ。」

「は?」

 眠兎は口を抑えてとても驚いている。俺もこの予想外な結末に動揺している。

「何でそんなこと!」

「何怒ってるニダ?お前達はもう関係無いニダ。ま、作戦の概要を話すと、時間を掛けて投入してた爆弾を起爆するためにお前達に月兎を襲わせたって事ニダ。」

 最低なヤツだった。自分の国民を1箇所にまとめて消し飛ばしたって事だ。わざわざ兵を引かせて、戦力が1点に集まる瞬間を狙ってやがった。

「……任務完了だ。」

「……。」

 激しい爆発と熱風、大量に撒き散らされた血や肉片に目を逸らし、俺達は英政府王国へ向かった。

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