一五戒 宣戦布告

「こいつはここに寝かせておく。あんた達、少し話さないか?」

 俺は自分らの目的を引き換えに、この国に起きてる詳細な情報をダットと取引することにした。リオンは任務の注意事項で、他人に教えてはいけないなんて言っていなかったから、おそらく言っても良いだろう。

「あんた達は何者なんだ?何でここに居る?ボスはどこだ?」

「俺とコイツは戒盾十三人だ。ここに来た目的は、十二支と呼ばれるヤツらの持っている武器の回収だ。黒電話部隊のリーダーの龍が十二支で、そいつの交換条件でここに来た。」

「お前達のボスも十二支だった。奴の持っている武器も回収しようとしたが逃げられた。」

「やっぱりお前達が原因でボスは消えたのか!」

 ダットの1人が声を荒らげて拳銃を向けてきた。

「やめろ。聞いただろ。こいつは戒盾だ。そんなもん向けたら殺されるぞ。」

「っ…。」

「俺は龍との取引で、このダットの壊滅を約束した。だが俺も人間だ。何で黒電話部隊と、国と戦ってるんだ?」

 30代に見える男が椅子から立ち上がり、眠兎の寝ているベットから少し離れてタバコを吸い始めた。

「龍の前のこの国のトップはな、ところ構わず兵器を試していたんだ。弾道ミサイルや爆撃機などな。周辺の国に迷惑を掛けていて、この国の印象は悪くなる一方だった。だがある日、そのトップが暗殺されたのさ。後任が今の龍になった。」

 男は悲しそうな顔をして説明を続けた。

「前任者は自国に被害を出さなかったが、龍は違った。自分らの敷地以外で被害を多く出したんだ。そこに、谷西露から来たボスが反撃のチャンスをくれたんだ。戦う勇気がなかった我々を奮い立たせてくれた。」

 谷西露の月兎が北夕鮮の内部事情に首を突っ込んで混乱を加速させていたのか。十二支は統率が取れないのか?

「ボスはもう戻っちゃ来ないよな。これからどうするべきか。」

「お前達は何がしたいんだ?」

 男達は俺を見てキョトンとしていた。

「龍のやり方が嫌だからテロを起こしてるんだろ?そこにお前たちの意思はあっても、月兎が居なくなった途端に戦意喪失するなら、それは命を賭けるべき事なのか?」

 皆下を向いてだんまりだ。

「俺達の目的はダットの壊滅だ。お前達がこの戦争を止めるならそれに越したことはない。ただ本気で龍を止めたいなら俺達はお前達の敵になる。」

 タバコを吸っていた男が呟いた。

「……わかった、俺達は戦う。ただ一時休戦を求めたい。一旦兵を戻してお前たちの事とボスの事を話す。それでも命を賭ける精鋭で再びお前達に挑む。無理な頼みだが、龍に伝えてくれないか?」

 男の返答は、意外にも戦争を選んだ。俺達の正体を知ってもなお戦おうとする。

「言うだけ言ってみよう。俺はコイツを抱えて一旦龍の所へ行く。次会うときは殺す。」

 俺は寝ている眠兎を抱き上げダットのビルを出た。眠兎を傷つけないために、なるべく戦いの色が無い場所を経由して龍のいる建物に向かった。

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