十戒 北夕鮮
北夕鮮は酷く荒れていた。あちこちで破壊の後、銃痕、捨てられた家々、死体まで。周りでは、耳をすませば爆発音がする。かなり遠いが、未だに内戦が酷い証拠だ。
「どうやって十二支探すの〜?」
「そうだな……。」
俺は眠兎を連れて、この国の中心である平壌へ向かう事にした。
ヒュ――
「っ……」
どこからか何かを打ち込まれた。眠兎は既に倒れていた。意識の途切れる間際、同じ顔で同じ髪型をした奴らを見た。
「ガキは犯すなよ、値が下がるニダ。」
段々と意識が回復してきた俺は、朧気な視界でまたさっきの顔のヤツらが見えた。持ち物は取られ、俺と眠兎は裸にひん剥かれていた。
「こいつ!目を覚ましたニダ!」
1人の北夕鮮らしき人物がこちらに近づいてくる。
「おい、お前たちは何しに来たニダ?あの持ち物は何ニダ。観光にでも来たニダ?」
「俺はこの国の十二支に会いに来たんだ……、狼と兎が来たと伝えてくれれば分かるはずだ…。」
警戒しながらも1人は部屋から出ていった。
数分が経過すると部屋に入ってきたやつが周りの奴らと会話をしている。
「お前ら、持ち物返すニダ。女、すまなかったニダ。」
意識の無い眠兎に頭を下げ、俺たちの拘束を解き荷物が返された。
「準備が出来たら部屋を出て近くのやつに言うニダ。案内するニダ。」
奴らが部屋から出ていった。裸の眠兎に服を着せ荷物を確認した。
「うし。おい眠兎、起きろ。」
「……光狼?ここは?」
「多分北夕鮮の軍の敷地内だ。今まで拘束されてたが、十二支の話をしたら解放してくれた。」
部屋を出たら殺される事だってある。十分に注意するよう眠兎に合図を送る。
ガチャ――
「準備が出来た。案内してもらおう。」
「分かったニダ。着いてくるニダ。」
辺りは白く、どこを見ても十字路だらけだ。今はどこで、何回道を曲がったのか分からなくなるぐらい歩くと、一つだけ黒い部屋に着く。
「ここが
そこはここの白さとは真逆のごちゃごちゃした部屋だった。沢山の賞状やトロフィー、豪華な家具や甲冑などが飾ってある。
「君たちが戒盾十三人の狼と兎だね?待っていたよ、この国に入国してきた時からね。」
「俺達はあんたの持ってる使千器を貰いに来た。なるべく抵抗はしないで欲しい。」
正直に目的を話してみるが、龍とやらはどう出る?
「まぁ落ち着きなさい。私には敵意は無い。だが使千器をタダで譲る訳にもいかない。少し話をしよう、座りなさい。」
緊張が解けたのか、眠兎はそそくさと指された椅子に腰をかける。
「おじさんは何してるの〜?」
「そうだね、北夕鮮を救おうとしている。」
「何故この国は内戦をしてる?前から争いはあると聞いていたが何故だ?」
「そうだね、まず、この国はふたつの勢力に別れている。私の率いる黒電話部隊と、民間やゲリラを従えているダットという組織だ。その組織を潰してくれたら私の使千器を譲ってもいい。」
正直、軍を指揮して民間人を支配してる悪にしか見えなかったが、政府の犬である俺達は政府から出された任務が最優先。非加盟国がどうなろうと知ったことでは無かったが、違和感を抱きながら龍の条件を飲んだ。
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