九戒 虎

「なにしてんだよ、お前。」

「あー、久しぶりだな。」

 そこに居たのは虎閃だった。だが、敵襲と聞いて応援に来たら虎閃がいた。他にも顔見知りが数人いて察した。戒盾の虎が敵に寝返った。

 状況は理解出来るが、アイツが敵側に寝返った理由が分からない。この1年で何があった?

「あー光狼、悪い。でもこうするしかなかった。政府にはもう従えない。」

「理由を言えよ、言われても納得できねぇけどな。」

 俺は叢雲で虎閃を攻撃する。虎閃も対抗して殴り返してくる。本気で斬るつもりで剣を振っているのに、アイツはまるで俺を殴ろうとはしない。

「何が目的なんだ。」

「あー、政府を止めるんだ。俺達は騙されてたんだよ。」

 傷つける意思のない攻撃が飛んでくる。

「遊んでんじゃねぇぞ。いい加減にしろよ。」

 瞬間、殺意の乗った攻撃が来た。俺は叢雲で受ける。

 ピキ――

 使千器にヒビが入った。今まで刃こぼれすらしなかったこいつに。信頼していたヤツからの一撃で。

 虎閃は俺を始末せず帝の間へ進んで行った。



 1年前 政府庁



 会議室でリオンからの任務を受けた。俺は北夕鮮担当だ。金、使千器、着替えに、水と行きで食べる食い物。あとは誰を連れて行くかだ。

「光狼さん、誰を連れて行くか決めました?」

 今までの任務は虎閃と一緒か、1人で受ける事が多かった。急に言われてもパッと思いつかない。

「あたしが着いてこっか?」

「蒼猪さんは死刑じゃないんすか?」

「何馬鹿なこと言ってんの、あたしが従うわけないじゃん。」

 蒼猪さんの特性と俺の特性は相性が悪い。だとするなら……。

「蒼猪さんはいいっす。俺は眠兎みんとを連れて行きたいっす。」

「えぇー?あいつよりあたしの方がエロいよ♡」

 こういう所なんだよな、この人は。

「分かりました、眠兎さんに連絡します。」

「あー、なら俺らは先行くからよ。また今度な。」

「おう、死ぬなよ。」

 虎閃は一足先に谷西露に向かって政府庁から出て行った。次に会うのはいつになるんだろうな。


「光狼〜?何〜?」

 銀髪で小柄な眠兎が会議室に入ってきた。背中にはいつものやつを背負っていた。

「任務が出た、着いてきてくれ。」

「何するの〜?」

「北夕鮮に行って十二支の持ってる使千器を回収してくるんだ。その為にお前が必要なんだ。」

 普段はやる気無さそうにしてるコイツでも、褒めると喜んで協力してくれるからな。チョロいもんだ。

「分かった!準備してくるから待ってて!」

 眠兎がちょこちょこしながら扉から出て行った。

 

 ガラガラ――

 5分もしないで眠兎が帰ってきた。

「お待たせ〜!じゃ、行こっか北夕鮮。」

 俺は頷いて政府庁から出た。ここからが命懸けの任務になる。澄ました顔をしていたはずなのに、眠兎はこちらを見てニコッと笑った。

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