三戒 虎と狼

 ぶん殴られた2人は事務所の向かいのビルまでぶっ飛ばされた。壁に叩きつけられ、ボロ雑巾のように転がる。

「これが戒盾の虎と狼か。こんなもんで世界政府の警護人なのかよ?」

「煽るのもほどほどにしなよ。特に虎閃は盛り上がるタイプだからね。」

 ぶっ飛ばされた場所には虎閃と光狼の姿は無く、地面は20cmほど凹んでいた。

判虎はんこ。」

 虎閃はかっちゃんの懐から、顎めがけて掌底を放つ。次にかっちゃんが見ていた場所は空だった。体が宙に舞い、空からこちらに近づいてくる物体があった。かっちゃんはそれに向かって銃を撃つ。

放狼ほうろう

 かっちゃんと垂直に向かって来たそれは、巨大な剣を持った光狼だった。光狼は空を蹴り、かっちゃんの弾を回避をして腹を貫く。

「あー、やりすぎた。」

「死んだなこりゃ。」

 腹を貫かれ、地面に落ちてきたかっちゃんは辺りを血で濡らし、臓物が漏れ出ている。

「構えな、虎閃、光狼。」

 呆気にとられていた2人の首を掴み、かっちゃんは立ち上がった。

「効くぜー!だがこれで終わりだな。今度こそ死ね。」

 光狼は手にしている巨大な剣を片手で振り、かっちゃんの腕を切り落す。

判虎はんこ!」

 虎閃はかっちゃんの胸に掌底を喰らわせ、かっちゃんは事務所のあるビルにめり込む。

「あー!蒼猪さん!なんだコイツ!いきなり殴ってきたし死なねーし!」

「かっちゃんは悪魔と契約してんだ。世界政府に対抗するためにな。」

「悪魔ぁ?何言ってんすか。そんなのいるわけないじゃないすか。」

「悪魔っつーか、見た目は天使?でもキモイ感じのやつだ。」

 蒼猪が言うには、かっちゃんは悪魔と契約して死なない体を手に入れ、打倒世界政府を目論んでいる。そして、世界には世界政府が統治していない国に悪魔との契約者がいる。

「つまり、政府に都合が悪い奴が居るから無法国家もある、と。」

「まぁ、そんなところだ。この東の島も、ここに居るやつは赤丸って呼んでる1つの国だ。赤丸のお偉いさんも、かっちゃんがいるから政府の加盟国になれないってボヤいてたよ。」

「あー、俺らのボスはそんなに契約者が嫌なのか。」

「何ベラベラ喋っちゃってんのさ。」

 ビルにめり込んだかっちゃんが起き上がってきた。

「大体あってるぜ。俺ぁ死なねぇ。どうする?」

 2人は沈黙した。蒼猪も見守るだけで、特に何も言わずに静かな時間が来る。


 およそ5分した頃、虎閃が沈黙を破った。

「あー、とりあえず飯行かね?」

 光狼、蒼猪、かっちゃんの頭にはハテナが浮かぶ。

「かっかっかっ!何を言い出すかと思えば飯!?面白いな!かっかっか!」

「そんな場合じゃないだろ、俺らを殺そうとしてきてんだぞ。」

「いや、いい!一時休戦だ!向かいの焼肉屋やってるかな?」

「かっちゃん♡奢ってくれるんだよね♡」

「……。」

 蒼猪を除く3人は一時休戦とし、当初の目的である飯屋に入っていった。



 頼む、助けてくれ。お願いだ。

 さむい、さむいんだ。助けて!

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