第70話 すごいんだもん……
「お姉ちゃん、お風呂沸いたよ。一緒に入ろっ」
夜、部屋でゴロゴロしながらスマホをいじっていると、アリスちゃんがやって来た。
「え、もうそんな時間?」
時間を見ると、もう夜の九時前だった。
ちょっとだけいじるつもりだったのに、結構経っていたらしい。
「お姉ちゃん、一緒に入ろうよ。スマホは後でいいでしょ?」
「わ、分かったから。ちょっと待ってっ」
私はアリスちゃんに手を引かれつつも、寝間着と替えの下着を持ってお風呂に向かった。
「アリスちゃん、さ……」
いつものように、脱衣所でお互いの服を脱がせ合う私たち。
アリスちゃんの制服を脱がせた私は、あることに気づいた。気づいてしまった。
正直に言うと、前からそうなんじゃないかなーと思ってはいた。いた、んだけれど……
「もしかして、また、大きくなった……?」
「何が?」
「だから、その……胸が」
するとアリスちゃんは、ちょっと照れ臭そうに笑った。
「実はそうなんだー。ブラもきつくなっちゃってさ。新しいの買わなきゃ」
「へー」
自分でも驚くくらい、自分の声が平坦になっている。
ちょっとマズいかも。もう一言くらい付け加えなきゃ感じ悪いかな。
「何カップなの? Eくらい?」
「うぅん。Fだよ」
「あ、そう」
結局平坦な声になった。胸とおんなじだ、あはは。
「って、誰が貧乳か! ぺったんか!」
「何怒ってるの?」
アリスちゃんにキョトンとされた。
でも、そのおかげで私も冷静になれたので、一度深呼吸する。
したんだけど、目の前の大きく膨らみが目に入ると、また肩を落としてしまう。
何かアリスちゃん、胸だけじゃなく、背も伸びた気がする。
「アリスちゃんてさ、何か特別なことしてるの? その……大きくするために」
「え? うーん……」
考え事をするように、人差し指を顎にあてるアリスちゃん。
少しの間そうしていたけれど、やがて私を見ると、
「実はね、私、自分で胸揉んでるの」
「えっ?」
あまりに予想外の言葉に、私は〝鳩が豆鉄砲を食ったよう〟な顔になったに違いない。
「だからね、私、自分で胸揉んでるんだよ」
アリスちゃんがもう一度繰り返したことで、聞き違いじゃないことが分かった。……分かってしまった。
「ほ、本気?」
「うん。本当だよ」
嘘でしょ。
胸は揉んだら大きくなるって、それ迷信じゃなかったの?
……いや、でも……
私は、改めて目の前の大きなふくらみを見る。
紫色の下着に包まれた大きな双丘は、なんというか……うん。
私のなんとも言えない心中を察したのだろうか、アリスちゃんはパンと手を合わせると「そうだっ!」と言った。
「じゃあ、私がお姉ちゃんの胸を揉んであげる!」
名案でしょ! とでも言いたげに、笑顔で。
「疑うなら、私がたくさん揉んで、大きくしてあげるよ。ねえ、いいでしょ?」
だめ?
と、いつものようにおねだりをされて、
私は、大人しく首肯するしかなかったのである……
お風呂から上がると、私たちは部屋に戻った。
部屋に入った瞬間、アリスちゃんの香りがしたから「あれ?」と思ったけれど、間違いなく、ここは私の部屋だ。
最近、私の部屋からアリスちゃんの匂いが香るようになった。
それだけ、アリスちゃんが私の部屋にいる時間が長いってことなんだろうなあ。
なんて考えていると、アリスちゃんの香りが一層強くなった。
同時に、私の背に柔らかな二つのふくらみが押し付けられ……っ!?
「あ、アリスちゃんっ?」
「ジッとして。約束は守らなくちゃ」
寝間着の上から、胸を両側から挟み込むようにして揉まれる。
……な、なんだか、後ろから触られるって、すっごくドキドキする。
羞恥から反射的に逃げようとするも、強引に止められる。
「抵抗しないの。おっぱい大きくしたいんでしょ?」
「それは……」
なるならしたいけれども。
「ならジッとしてて。全部私に任せてね」
耳元で囁かれ、くすぐったさで体が震えた。
それに合わせるようにして、アリスちゃんの手もまた動き始める。
「……んっ、ぁ……っ……は……ぁっ……」
吐息のような甘い声が自分のものだとは、最初は分からなかった。
アリスちゃんに触れられるたび、私の体には静電気が走ってくるようだ。それはちいさな刺激ではあるけれど、休みなく与えられるので、私の吐息は次第に早く、大きくなって……
――違う。
最初は、私の吐息だと思っていたけれど、それだけじゃない。
耳元で、アリスちゃんの吐息も聞こえてくる。
暑い吐息が私の耳にかかって、それがくすぐったくて、恥ずかしくて、余計に体が震えてしまう。
「んん……っ!?」
突然、今までの刺激を上書きするくらいの、強い刺激に襲われた。
いつの間にか私の寝間着の中に入っていたアリスちゃんの手が、ナイトブラをずらしたかと思うと、直接触れてきたからだ。
ふくらみの先端にある、突起に。
「あ、アリスちゃん……っ!? そ、そこは……」
「こら。大人しくしてっ」
「そんなこと言ったって、ぇ……っ!?」
抵抗しようとしても、言葉も、力も、全然出てこない。
全身に強い電流が流されたようにビクビク震えて、頭が真っ白になって、全身から力が抜けていく……
結局、私は腰が抜けたように、その場に座り込んでしまった。
「あ、アリスちゃんっ。や、やめ……ぇっ」
「そんなに止めてほしい?」
必死にコクコク頷くと、アリスちゃんは「いいよ」と言ってくれた。
「その代わり、私のお願い、聞いてくれる?」
一も二もなく了承する。
けれど、そのお願いっていうのが……
「どうしたの?」
約束通り止めてくれたアリスちゃんは、今は私と向かい合って、キョトンと首を傾げている。
……寝間着を脱いで、胸を露出させた状態で。
「な、何でもないよっ」
言いながらも、アリスちゃんの胸から目を逸らすことができない。
ナイトブラも外して、完全に露出した胸。私のものとは全く違う、大きくてきれいなふくらみ。
そして……
「じゃあ、私がやるとおりにしてね」
「う、うん……っ」
頷くと、アリスちゃんの手が、また私の胸に触れた。
ビクンと体が震える中、アリスちゃんは私の胸を、両側から挟み込むようにして揉む。
だから、私も見様見真似で、アリスちゃんの胸を揉んだ。
すると、アリスちゃんの口から籠った吐息が漏れたので、私は慌ててしまう。
「ご、ごめん。大丈夫?」
「うん。大丈夫だよ。お姉ちゃん上手だから、そのまま続けて」
優しく微笑まれて、私はまた、アリスちゃんと同じように手を動かし始める。
……今さらだけど、すごい絵面だ。お互いに裸で、お互いの胸を揉んでいるだなんて……
けれど、今の私には、それを意識する余裕もなかった。
アリスちゃんの大きなふくらみ……その感触に、完全に意識を奪われていた。
やわらかくて、弾力もある。それに、私の手は完全に埋もれてしまう。
自分のものとはまるで違う温もりと、それに背徳感。私は酔いしれてしまい、ただただ無心で触れていた。
私を現実に引き戻したのは、アリスちゃんのクスリという笑い声だった。
「お姉ちゃんかわいい」
「だ、だって……」
すごいんだもん、という言葉は声にはならない。すごすぎて。
視線をさ迷わせていると、アリスちゃんと重なった。
途端に視線は固定されて、まるで吸い寄せられるようにして、私は、うぅん、私たちは……
そっと、唇を合わせていた。
声が漏れそうになって、唇を塞がれる。それでも、手の動きは止めてはくれない。
アリスちゃんは、そっと、まるで愛撫のように私の胸に触れる。
だから、私もそっとアリスちゃんの胸に触れた。慈しむように、気持ちが届きますように……
「アリスちゃん、私……っ」
「大丈夫だよ」
見上げると、アリスちゃんはサファイアの瞳で私を見つめていた。
「いっぱいキスして、揉んで、大きくしてあげるね……」
お互いに頬を上気させ、荒い吐息を吐きながらも、
私たちは、お互いを求めあったのだった――
ちなみに、揉んで大きくなったというのは、嘘だったらしい。
……うん、まあ途中から気づいてたけどね。
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