第60話 だれのせい?

 かわいい。


 最近の私の一日は、そんな感想と共に始まる。



 何への感想かというと……


「すー……すー……」


 隣で眠るお姉ちゃんを見て、私は、



 パシャ



 スマホを取り出して写真を撮る。


 撮る。撮る。撮る。撮る……


 シャッター音とフラッシュを消したカメラで、お姉ちゃんの寝顔を撮りまくる。



 うーん、かわいいなあ。


 お姉ちゃんとどうしてこんなにかわいいんだろう。


 キスしよっと。



 我慢できず、キスしたり、抱きしめたり、匂い嗅いだり、ちょっと触ってみたりしたけれど、お姉ちゃんは起きてくれない。


 たまに声を漏らしはするけれど……うーん、これは本当に寝ているみたい。


 昨日寝るのが遅かったからかなあ。




 今日は日曜日だ。


 休日にしては珍しく、お姉ちゃんも私もアルバイトはお休み。


 だから寝ていても問題はないんだけれど……



 スマホで確認すると、午前九時前だった。


 しまった。今日は私も寝坊しちゃった。ご飯はおばさんが作ってくれただろうけれど。


 お姉ちゃんのご飯は私が作りたい! 人間の細胞はその多くが二か月で入れ替わるっていうし! つまり二か月私が作り続けたら、お姉ちゃんの体は私が作ったってことになる!



 コホン。とにかく、お姉ちゃんを起こさないように気をつけながら、私はベッドから出て着替えを済ませる。


「お姉ちゃん。朝だよ、起きて」


 言いながら、私はカーテンを開けて窓も開ける。



 お姉ちゃんにもそろそろ起きてもらわなきゃ。おばさんが起こしに来るかもしれないし。


 ……おばさんはお姉ちゃんのお母さんだし、今まで何度も見てきただろうけれど、それでも私以外の人がお姉ちゃんの寝顔を見るって、なんかヤダ。



「んっ……なーにぃ……?」


 部屋に朝の冷たい空気が流れ込んでくると、流石のお姉ちゃんの目が覚めるらしい。


 亀みたいにゆっくり動いて、微睡んだ目で私を見てきた。



「ありすちゃん? どーしたの?」


「朝だよ、お姉ちゃん。起きて。一緒にご飯食べよっ」


「うん……」


 返事はあったけれど、完全に空返事だ。


 お姉ちゃんは朝だけじゃなくて寒いのも苦手みたいだから、冬の朝は覚醒するまで結構時間がかかる。



「ありすちゃん、まどしめて。さむい……」


「まだダーメ。お部屋の換気しなきゃ」


「うぅー……」


 お姉ちゃんは布団を頭まで被ってしまった。仕方ない。



「えいっ」


「あうっ」


 無理やり布団を引っぺがすと、猫みたいに丸まったお姉ちゃんが現れた。



「ほら、起きて。お着替えさせてあげるから。ね?」


「んー……」


 お姉ちゃんはのろのろとベッドに身を起こす。



 私はベッドに上がって、


「お姉ちゃん、バンザイして?」


 素直に手を上げるお姉ちゃん。


 私は寝間着とキャミソールを脱がせる。



 着替えはさっきお姉ちゃんに部屋に行って取ってきておいた。ニットのワンピースだ。裾がフリルになっていて、お姉ちゃんは出かけるときに着る時もあるし、部屋着にしているときもあるから、結構気に入っているんだと思う。


 私も気に入っています。それはピッタリしたワンピースだから体のラインが出るからです。


 お姉ちゃんは私のスタイルを羨ましく思っているみたいだけど、お姉ちゃんは小ぶりな柄もバランスの取れたスタイルで、とても魅力的だなと私は思いました。



 ナイトブラを外して普通のブラをつける。


 それからお姉ちゃんが寝間着にしているルームウェアのショートパンツを脱がせた。


 そして白いショーツに手をかけ、ゆっくりと脱がし……



「んっ……ん? あれ……あ、アリスちゃん!? 何してるのっ!?」


「何って、お着替えだよ? さっき言ったじゃん」


「えっ? う、うそ……」


 覚えていないみたい。お姉ちゃんはビックリしている。



「さー、脱ぎ脱ぎしましょーねー」


「や、やだやだっ! 待ってアリスちゃん! だめぇっ!」


 脱がしかけていたパンツを慌てて引き上げてベッドに丸まり、必死に抵抗するお姉ちゃん。



「着替えは自分でするからっ。だから先にリビング行ってて。ね?」


「え~どうして?」


「どうしても!」


 断固とした調子で言うお姉ちゃん。


 そういう反応をされると、是が非でもやりたくなっちゃうなあ。



「遠慮しないで。大丈夫だよ、ジッとしていれば終わるから。全部私に任せて」


「そ、そんなこと言われても……私っ、ほんとに……だめぇーーっ!」


「きゃっ!?」


 キャパシティが限界を迎えたのか、首まで真っ赤に染めたお姉ちゃんは、私を突き飛ばすみたいにして、ワンピースと下着を体の前に抱えて逃げて行った。



 その背中を見送った私は、とりあえず、


 クンクンクンクン


 お姉ちゃんが残していったナイトブラの匂いを嗅いでみました。


 お姉ちゃんの匂いがしました。とてもいい匂いだなと思いました。




 先にリビングに行って、暖房をつけてお姉ちゃんを待っていると、


「おはよう……」


 おずおずと言った様子でお姉ちゃんが入ってきた。


 私が用意したワンピースを着ている。てことは、下着も私が選んだものをつけてくれているのかな? ……ゴクリ。



「もう、アリスちゃんっ。さっきはほんとにビックリしたんだからね!」


 お姉ちゃんはちょっと怒ったような口調だった。……何故。



「ああいうのはやめてっていつも言ってるのに」


「ああいうのって?」


「だ、だから! 私が寝てる間にパ……パンツ脱がしたりすること!」


 お姉ちゃんは耳まで真っ赤になっている。かわいい。……ていうか失礼な! その言い方じゃ私が変態みたいじゃんっ!



「違うよ! 私はただお着替えを手伝ってるだけだもん!」


「だからそれ! 私着替えは一人でするっていつも言ってるでしょ!」


「え~? 遠慮しなくていいのに」


「そういうわけじゃ……もうっ」


 すこしムッとした様子のお姉ちゃんがなんだか無性にかわいくて、私はイジワルしたくなってしまった。



「どうして? 私たち、恋人同士なんだよ。一緒にお風呂に入ってるし、お洋服だって脱がせ合ってるし、他にもいろいろなことしてるんだよ。恥ずかしがる理由なんて、どこにもないと思うな」


 言いながら、一歩、また一歩、お姉ちゃんに近づいていく。お姉ちゃんが私が近づくたびに後ずさるので、結局、壁際に追い詰める形になった。


「でも、いいよ、別に。お姉ちゃんがそういう態度なら。今度からは……」


 私はお姉ちゃんの逃げ場を無くすように、壁に手をつく。


 そして、ゆっくりと唇を近づけていって……



「朝、ちゃんと起きられるようになってね」


 首まで真っ赤にしたお姉ちゃんの耳元で、そう呟いたのだった。




 ところで、朝起きたらおばさんはいなかった。


 テーブルにあった書置きによると、お友達とお出かけらしい。



 私たちはどうしようかーとお姉ちゃんと話し合ったんだけど、お出かけはせずに、お家にいることにした。何だか雲行きも怪しいし。


 おばさんが用意してくれた朝ご飯を二人で食べて一緒に後片付けを済ませる。


 お家にいるなら、一緒に映画でも見ようかなーと思っていたんだけれど、




「うぅーー……」


 ソファーの上に長くなったお姉ちゃんは、苦しそうな呻き声をあげた。


「大丈夫? お姉ちゃん」


 心配になってお姉ちゃんの顔を覗き込むと、また「うー」と唸った。



「無理かも。冬はほんと……それに、体もだるいし……」


 大分疲れているみたい。最近体をよく動かすからかなあ。


 となれば……よしっ!



「お姉ちゃん! 私がマッサージしてあげるっ!」


 すると、お姉ちゃんは「えっ」と声を上げた。それから私を見てくる。何故か怪訝な顔で。


「い、いい。大丈夫」


「ダメだよ! 体の疲れはちゃんと取らなきゃ!」


 食い下がると、お姉ちゃんは考えるみたいに視線をさ迷わせた。



 私を見ると、


「じゃあ、変なことしないなら……」


「もちろんっ!」


 もちろん、します。でも、あんまりグイグイいくとまた恥ずかしがっちゃうかもしれないから、まずはバレないようにやらなきゃ!




 というわけで、お姉ちゃんにはソファーにうつ伏せになってもらう。


 そして私は馬乗りになってマッサージを始め……



「うひゃっ!?」



 た途端、お姉ちゃんが変な声を上げた。



「あ、アリスちゃんっ。変なとこ触らないで……」


「えぇええええっ!? さ、触ってないよ!?」


「ウソ。だって、すごくくすぐったかったもん」


「そ、そんな……」


 私、まだ真面目にやってたのに。



「やっぱりいいよ。一緒に映画でも……」


「待ってお姉ちゃん! 今度は気をつけるから! だからやらせて!」


 まだ全然イタズラしてないんだもん! ここで止めるわけにはいかないよっ!



「う、うん。じゃあ、ちょっとだけ……」


「任せて! えいっ」


「ふあぁんっ!? もうアリスちゃんっ」


「えぇえええっ!? なんでなんでっ!?」


 私はただ腰を触っただけなのに!



「信じてお姉ちゃん! 私本当にまだ何もしてないの!」


「まだって何っ!?」


「と、とにかくっ!」


 口が滑ってしまったので強引に誤魔化す。



「私、お姉ちゃんの体を解したいだけなの! ねえ、いいでしょ? ……だめ?」


 すると、お姉ちゃんは言葉に詰まった。ちょっと迷ったみたいだったけれど、


「じゃあ、もっと下のほうやってくれる? 足とか」


「任せて!」



 お姉ちゃんにイタズラするために頑張らなきゃ!


 ……いや、違う。間違えた。


 お姉ちゃんに気持ちよくなってもらうために頑張らなきゃ!



 というわけで、位置を変えてマッサージ再開。


 お姉ちゃんの太ももやふくらはぎを解していく。



 今度はお姉ちゃんは変な声をあげなかった。……くすぐったそうに吐息を漏らしてはいるけれど。



 ……これならできるかも。


 いや、今しかない!



 私はマッサージを続けつつ、一瞬、力を強める。



「ん……っ」


 お姉ちゃんが体を震わせるのと同時、私はお姉ちゃんのワンピースの裾を捲りあげた。一気に捲ったらバレるかもしれないから、少しだけ。



 それを何度か繰り返すと、お姉ちゃんのパンツが完全に露出した。



 パンツを見た私は、思わず見入ってしまう。



 お姉ちゃんの……お姉ちゃんが穿いてるパンツ、私が用意したのじゃないっ!


 私が用意したのは、以前私がプレゼントした白のTバッグだった。


 けれど、今お姉ちゃんがつけているのは紫色の、サテンのパンツだ。



 食い込んでる……何だか余計にイヤらしく見えるなあ。


 それに生地が小さい。これ、ハーフバックだ。


 お姉ちゃん、こういう下着をつけるようになったんだ。前はもっとかわいい系のやつだったのに。今のは、何だか大人っぽい。



 目のまえの光景に、生唾を飲み込んでしまう。


 そこにあるのは、本来ならあり得ないような光景だ。


 気づかないうちに、私に恥ずかしい恰好を見られているお姉ちゃん。


 私にワンピースを捲られて、パンツを丸出しにして。


 こんな恥ずかしくて、それにみっともない恰好……スマホどこだろ。



「……アリスちゃん?」


 スマホで写真を撮っていると、急にお姉ちゃんに振り向かれそうになった。


「お、お姉ちゃ……きゃっ!?」


 焦るあまり、私はソファーから落ちてしまった。お姉ちゃんも巻き込んで。



「ご、ごめんお姉ちゃん! だいじょう……」


 近い! お姉ちゃんの顔が目の前にある!


 今ならお姉ちゃんにキスできる!



 何て言ってる場合じゃないよね。早く起きなきゃ……


「アリスちゃん……」


 お姉ちゃんが、ジッと私を見つめてきた。


 そして目を閉じて、顔を少し動かして……



 えぇっ!? こ、これって、そういうことだよね。


 お姉ちゃん……っ。



 幸せ。


 私の中が、どんどん幸せで満たされていく。



 最近、お姉ちゃんは前よりもずっと積極的になっている。


 嬉しい。ほんとに嬉しい。ずっとずっと、お姉ちゃんとこうなりたかった。


 夢みたいだけど、これは夢じゃなくて。でも夢なんじゃないかってどこか不安で、だから私は、すぐにもっと深くって求めてしまう……



「っ。だめ、アリスちゃん……! 変なことしないって約束したじゃん……っ!」


「変なことじゃないよ。だって、私たちは恋人同士だもん。だから、普通のことなんだよ」


 お姉ちゃんと触れ合うと、すぐにもっともっとって求めてしまう。


 お姉ちゃんはそうじゃないのかな、なんて考えてしまったこともあったけれど。



 大丈夫。お姉ちゃんも、私を求めてくれている。


 世界一愛しい人を腕の中に抱きながら、確信することができた。




 時刻は午後の一時を回って、私たちはすこし出遅れたけれど、昼食の準備を始めることにした。


「アリスちゃん、お昼は何食べよっか?」


「うーん、そうだなあ……」


 私はちょっと考えて、ニコッと笑顔で、



「お姉ちゃんを食べちゃいたいかも」


「もう、またそういうこと言うんだから……」


 お姉ちゃんは照れ臭そうに、でも嬉しそうに笑ってくれた。



 冗談だと思ったんだろう。


 お姉ちゃんは「どうしよっかなー」なんて言いながら冷蔵庫の中を確かめている。


 ワンピースは体に張り付いているから、腕を上に伸ばすと余計に体のラインが浮き出る。それにスカートが引っ張られて、下着も見えそう。


 小ぶりながらもバランスの取れた体。私だけが自由にできる、この世界で一番キレイなもの……


 そう考えた途端、私の体は勝手に動いていた。



「きゃっ!?」



 後ろから抱き着いたら、お姉ちゃんの体はビクンと震えた。



「どっ、どうしたのアリスちゃん?」


「なんでもなーい。ただ抱きしめたくなっただけ」


 ぎゅーーっと抱きしめながら、ついでにクンクン匂いも嗅ぐ。



「ん……っ。く、くすぐったいよ……っ!」


「ふふっ。お姉ちゃんいい匂いー。……でもちょっと汗臭いかも」


「も、もうっ!」


 すると、お姉ちゃんはちょっとムッとしたような声になった。


 顔を動かして、仕返しとばかりに私の匂いをクンクン嗅いでくる。



「アリスちゃんもちょっと汗臭いじゃん……」


「えー? そんなこと言う人には……えいっ」


「やぁ……っ!?」


 私は勢いよく、お姉ちゃんのワンピースを捲り上げて、おへそまでを丸出しにさせた。



「ちょ、ちょっとアリスちゃん! 見えてるってばっ!」


「当然じゃん。捲ってるんだもん」


「な、なんで……っ」


「お姉ちゃんが臭いなんて言うから。私だって年頃の女の子なのに」


「先に言ったのはアリスちゃんでしょっ!」


 お姉ちゃんは顔を真っ赤にしているんだろう。だって耳が真っ赤だから。


 かわいいなあ、お姉ちゃん……っ!?



 突然のことに体が強張る。声も上げそうになってしまった。


 だって、体の向きを変えたお姉ちゃんが、私を抱きしめるようにして、私のスカートを捲り上げてきたから。



「し、仕返しだよっ。変なことばっかりする子にはお仕置きです……」


 自分からやったくせに、お姉ちゃんは首元まで真っ赤にしている。


 か、かわいい……



 危うく悩殺されるところだった。


 理性を総動員して耐えて、



「きゃーっ。お姉ちゃんのエッチーっ」



 ごまかしも兼ねてちょっとふざけてみる。


 そのつもりだったけれど……



 お姉ちゃんと視線が重なる。


 お姉ちゃんの、黒い、水晶みたいにキレイな瞳……


 どうしよう、目が離せなくなっちゃった。でも……



 お姉ちゃんも、私から視線を逸らさない。ジッと、私を見ている。


 もしかして、お姉ちゃんも私と同じなのかな?



 ……あれ? 気のせいかな? さっきより、お姉ちゃんの顔が近くにあるような……?


 一体どっちから求めたのだろう? それが分からないくらい、お姉ちゃんに見惚れてしまっていた。


 近くに感じていたお姉ちゃんで私の中が満たされて、あっという間に溢れてしまった。


 気づけば、お姉ちゃんは私の下にいて、私はその上に覆いかぶさっている。



 ワンピースが胸まで捲り上げられ、露出したお姉ちゃんの体。


 その体には、紫色の、フリルで彩られた下着がつけられている。



「お姉ちゃんてさ」


 ポツリ、と自分の口から声が零れ落ちる。


「最近、キレイな下着付けることが多くなったよね。前のかわいい系のじゃなくて、何だか、大人っぽい感じ」


 自分の声が、やけに遠くに感じる。


 自分の声なのに、自分の声じゃないみたいな、非現実感が……




「アリスちゃんのせいだよ……」




 下からの擦れた声が、私を現実に引き戻した。



「アリスちゃん、変なことばっかりするんだもん。だから私、みっともない恰好は見られたくないって思って、それで……っ」


「それで? それで、なあに?」


 言葉に詰まってしまうお姉ちゃん。


 続けられる言葉は想像はできるけれど、直接聞きたくて、私はお姉ちゃんの髪をゆっくりと撫でて、続きを促す。



「いつ見られてもいいようにって、アリスちゃんに……も、もうっ!」


 羞恥が限界に達したのか、お姉ちゃんは裾を下げて体を隠そうとする。


「だめ。隠さないでよ。私の為につけてくれたんでしょ? もっとちゃんと見せて」



 ちいさく、頷いてくれたような気がした。


 また胸までワンピースを捲りあげてくれるお姉ちゃん。


 そこで手を止めてしまったので、私はワンピースを脱がせてしまう。



「アリスちゃん……!? なんで……」


「大丈夫だよ」


 驚いているお姉ちゃんに、私は自分の服に手をかけながら答える。



「ほら、これなら恥ずかしくないでしょ?」


 服を全部脱いで下着姿になった私は、お姉ちゃんに見せつける。


「私ね、今日期待してたんだ。おばさんがお出かけしてるって知ったとき。だから、もっと見てよ。私のこと」


「うん。見てる。見てるよ、アリスちゃん……」



 お互いに、ぎゅっと抱きしめ合う。


 下着姿だからか、熱を感じる。それを意識すると、さらに体温が上がった気がする。


 だめ、これくらいじゃ全然足りない。もっと、もっと……!



「お姉ちゃん……っ」


「アリスちゃん……っ」


 一体、どっちから求めているのか……


 うぅん、きっと私たちは、お互いに求めているんだ。


 だから、こうやって唇を近づけていって……




「ただいまー。いやあ、ひどい目に遭っちゃったわ。急にすごい雨が降ってきて……」




 何が起きたのか分からなかった。


 何も考えられなかった。


 ただ一つ言えることは……




 やっちゃった。

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