第16話 不思議な性癖のアリス

 お姉ちゃん好きーーーーーーーーーーっっ!!!!



 となることが、私には日に百回はある。最低百回だ。



 気持ちが止まらなくなるとキスをしちゃう。


 でも、これでも自制はしている方なのです。あんまりグイグイ行くと、嫌われちゃうかもだし、そんなことになったら滅んでしまう。



 だからそうならないよう、私は秘かに発散することにした。


 ……いや、違う。そういう意味じゃない。自分を慰めてるとかそういうんじゃない。知識はあるけどしたことない。だって最初に挿れられるのはお姉ちゃんの指って決めてるんだから!!


 私がしているのはそういうことじゃなくて……



「はい、お姉ちゃん。あーんして」


「あ、あーん……」


 最近、お姉ちゃんは以前よりも素直に口を開いてくれるようになった。


 私は、ちょっと前かがみになる。すると、お姉ちゃんはさっと目をそらしてしまった。


 照れているんだ。今私が着ている服は胸元が緩いから、お姉ちゃんには見えたはずだ。私の服の中が。



 お姉ちゃんは瞬きの回数が多くなって、咀嚼の速度も上がった。


 私の下着を見たんだろう。あの、黒い下着を。


 動揺しているみたい。かわいいなあ。



 私の頬はどんどん緩んでいって……


 おっと、危ない。慌てて頬を引き締める。危うく人様にはお見せできない顔になるところだった。



 お姉ちゃんに下着を見せたのはわざと!


 わざと見せて、その反応を楽しむ! それが私の発散方法!


 最近、あることをきっかけに取り始めた発散方法だ。




 四日前。


 私は脱衣所であるものを見てしまった。


 洗濯籠に入った、私の下着を見ているお姉ちゃんの姿を。


 お姉ちゃんは私のパンツを広げて、まじまじと見つめていて……



 うぅ……っ!



 なんか、流石に照れる。


 大丈夫かな? 汚れてないよね? 一応、手でもみ洗いしておいたし……



 今の発散方法を始める前、私は別の方法をとっていた。


 それは、お姉ちゃんと一緒にいるときは派手な下着をつけること!


 だって、お姉ちゃんと一緒にいるとき、万が一のことがあったら大変だ。もしかわいくないやつとか、くたびれたものだったら、滅んでしまう!


 だから下着には気を遣っているんだけど……



 そっか、そうなんだあ……お姉ちゃんて、そうなんだ……


 写真撮っちゃお。


 シャッター音とフラッシュを消したスマホのカメラで、お姉ちゃんを撮影する。



 私には、崇高な趣味がある。


 それは、お姉ちゃんの写真を撮ること!


 ホームステイを始めてからというもの、私はこっそり、お姉ちゃんの写真を撮っている。


 食事中のお姉ちゃんやスマホをいじってるお姉ちゃん、映画を見てるお姉ちゃんに、寝ているお姉ちゃん……



 けど、これはまだ大丈夫な方、お姉ちゃんにも見せられる写真だ。


 写真はたくさんある。


 下着姿や着替えている途中の写真、お風呂で体を洗っている写真、バスタオル一枚の写真……


 流石にこっちを見られるのはマズイ。



 それにしても、これだけの写真をこっそりと、バレないように撮るのは苦労したなあ。


 苦労した日々を思い出し、しみじみとしてしまう。



 おっと、浸ってばかりいられない。今日もちゃんとやらなくちゃ。


 私が学校から帰ってくると、お姉ちゃんはまだ帰っていなかった。よしっ!


 最近できた私の日課、それはお姉ちゃんの部屋に、私の下着を置いていくことだ。



 お姉ちゃんの反応はといえば、めっちゃめちゃ動揺しておられる。


 間違えて置いちゃったみたいと私が言っても、お姉ちゃんは余計に動揺していた。


 そして私はといえば……



 メチャクチャ興奮するっ!!



 お姉ちゃんに下着を見られてるんだって思うと堪りませんっ!!


 それに……



「お姉ちゃん、別の本貸してもらってもいい? これ読み終わったから」


「う、うん。いいよ」


 休日。お姉ちゃんの部屋で読書をしていると、お姉ちゃんは私からちょっと視線を外しつつ答えてくれた。



 スカートを穿いて体育座りをしたり、四つん這いになったりしてるからかなあ。


 チラチラ視線を感じて、ちょっとムズムズする。でも……やっぱり興奮する! ちょっとおしりをフリフリしてみよう。



 そんなことを続けていたある日のこと。


 お姉ちゃんの部屋に下着を置いて、「間違えちゃった」と言ったら、


「そんなわけないじゃん!」


 と突っ込まれた。



「アリスちゃん毎回そう言ってるけど、普通そんな間違いしないよ! 確信犯だよね絶対っ!!」



 ついにバレちゃったみたい。ていうか、もともとバレていたみたい。



 でも大丈夫、こういう時のために、アレを取っておいたんだから。



「これ、なーんだ?」


 私のパンツを広げて見ている写真を見せると、お姉ちゃんは明らかに動揺していた。


 お姉ちゃんを壁際まで追い詰め、ブラウスのボタンを外して、スカートをめくると……



「キレイだよ、とっても……」



 その一言は私のすべてを満たしてくれて、他のことは全部どうでもよくなった。


 気持ちが溢れて、溺れちゃいそうになった。


 このまま続けたらどうなるんだろう? お姉ちゃん、どんな下着付けてるのかな? 私に見られたらどんな顔するんだろう? 私の指が敏感なところに触れたら、どんな声を出すんだろう? どんな顔で、私を見るんだろう?


 欲しい、この人の全部が。全部全部、私のモノにしたい……



 そんな気持ちがあって、私は気持ちが急いていたのかもしれない。



「やっ、やっぱりだめぇ……っ!!」



 お姉ちゃんに突き飛ばされてしまった。



「お、お姉ちゃんっ!? そんな急に押されたら……きゃあっ!?」



 結局、私たちは倒れこんでしまう。


 しかも私は、お姉ちゃんに押し倒されたみたいな格好で……



 ほんの一瞬、拒絶されたんじゃと思って胸が張り裂けそうだったけど、すぐに気づく。


 ちがう。照れているんだ、お姉ちゃんも。私と同じように。



「お姉ちゃん」



 目を瞑る。しやすいように、ちょっとだけ顔を動かして。


 お姉ちゃん、応えてくれるかな? うぅん、応えてくれるよね。


 そうしたら、今度は――



「二人とも大丈夫っ!?」



 ドアが開く音と同時、おばさんが部屋に入ってきた。




 …………



 ……………………



 あっ。

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