電話
嘘だ嘘だ嘘だ!! 三人が三人とも同じ人を好きになるなんてありえないよ!!
いくらユウミさんが美人で天使で女神だからって!!
二人とも頭がおかしいんだ、いや僕がおかしいのか?!
ひょっとして、夢でも見ているのか?!
体から力が抜けてしまい、僕は玄関ポーチに突っ伏した。その拍子に赤・白・黄色の薔薇たちに腕が触れ、チクチクと棘が刺さる。
ああ、何で夢じゃないんだ。どうしてこれが夢じゃないんだ。こんなの本当におかしいよ……。薔薇たちに罪はないけれど、今はとても憎くて、葉っぱも花もむしり取ってしまいたい気分だった。
頭上では二人がやいのやいの言い合っている。頭が良いはずの二人も、どうやら今初めてユウミさんにまつわるお互いの気持ちに気づいたらしい。
「お前はあの世でクレオパトラとでもよろしくやったら良いだろ! ユウミさんの旦那になるだと? ふざけるな」
「君こそ早くあの世へ行ってジャンヌ・ダルクでも口説けば良いじゃないか。ユウミさんは僕のものだ! そもそもおかしいだろう、君は愚かな『女性嫌いの代名詞』じゃなかったのか!!」
「誰がいつそう言った!! 勝手に決めんな!!」
ほんとに何なんだよ……。この二人が相手じゃ、僕に勝ち目はないじゃんか……。
サンクチュアリの中で「ジリリーーン」と電話が鳴ったのを潮に、僕はふらふらと立ち上がった。二人を押し退け、薔薇を避けながら階段を登る。
「荷物をまとめておけ」とか嫌がらせのようにホームズさんが言ったけど、無視した。今はベットに倒れて寝てしまいたかった。
……が、二階にも辿り着かない内に、ロビンさんが僕を追いかけて来た。
「電話だよ、マフィン君」
「……僕宛てじゃないでしょう」
「いや、そうみたいだよ。マフィン君を出せって言ってる」
ロビンさんは僕の腕を掴み、輝くようなウィンクをした。
「……はあ」
何だか疲れて逆らう気も起きず、僕はロビンさんに引っ張られるまま階段を降り、受話器を取った。そうしたら……
「ハァーイ、リーハ! 私よ、私!」
この日、何度目かの衝撃が僕を襲った。
「ふっふ、驚いてるわね。私はアンタの母親よ? アンタの倍生きてるのよ? その大人相手にいつまでも隠し通せると思ったわけ? 全く、勝手な事をして! いい、明日私はそこに行くからね! 荷物をまとめておきなさいよ!」
「な、何でだよ!!」僕は電話口で悲鳴を上げた。
「何で母さんがここの番号を知ってるんだよ! 僕は教えてないじゃん!!」
「アホ、馬鹿、とんま! アンタに聞かなくとも、連絡先を調べる方法なんていくらでもあるわっ。感謝しなさいよ! 私は今いるロンドンの探偵の中でも、一番腕利きだって言われている人に、アンタを探してくれるように頼んだんだから!」
「えっ、探偵?! 誰に?!」嘘だろ、まさか、まさか!
「ロンドンにいる癖に知らないの? 鈍臭いわね! えっと、名前は……」
一瞬の沈黙の後、母さんは言った。
「思い出したわ! その人はね、シャーロック・ホ…」
ガチャン!
助手の話はどうしたんだよーーーーーーーっ!?
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