第五章/事件発生

サンクチュアリの朝

 チュンチュン……

 どこからか小鳥のさえずりが聞こえて目が覚めた。


 あれ、ここは……?


 見慣れない天井と壁が目に入る。一瞬自分がどこにいるのか分からなくなったけど、すぐに「そうだった!」と気づいて僕はベットから飛び降りた。

 ここはサンクチュアリの三号室。つまり新しい僕の部屋!


 時計を見ると針は七時を指している。

 えっと……ユウミさんは十二時に昼食を用意してくれると言っていた。それまで時間を無駄にしないようにしないと。まず顔を洗って、簡単に朝ご飯を食べて、それから勉強をしよう!


 僕は伸びをして、さっと緑色のカーテンを開ける。暖かさをもった光が部屋の中にパッと広がった。外は素晴らしく良い天気だ。

 窓を開けて外へ顔を突き出すと、ユウミさんが庭で花に水をやっているのが見えた。その金髪は天使の輪が乗っているかのように艶めいていて、僕は思わず目を擦る。


 うわ……やっぱりユウミさんは美しいな……花が霞んで見えるくらいだよ。


 急いで服を着替えた後、僕は二階へ降り、シャワー室の隣にある洗面台でジャブジャブと顔を洗った。冷たい水とすーっとする良い匂いの石鹸のおかげで、頭は一気にスッキリとする。


 昨夜は「ハッピーDAYSどころか、お先真っ暗じゃん」と思ってちょっと憂鬱になったけど……。今は爽やかな朝の空気に影響されてか、「まあ、何とかなるだろ」という気になっていた。


 まだ出会ったばかりだから言い切れはしないけど、ホームズさんとロビンさんは、根はとても良い人たちだと思うんだよね。ロビンさんなんて特に。犬を助けていたし。

 昨夜はただ予期せぬ再会に混乱してしまったんだろう。うん。きっとこれからは大丈夫さ。戦い方が普通じゃなかったってことは忘れるとして、伯父さんも言っていたからね。

「物事は良い方へ考えるものだよ」って。



 さて朝食にしよう。僕は昨日買ったパンを掴んで一階へ降りる。

 大きな窓から光がいっぱいに差し込んでいる明るい居間には、とても綺麗なスミレの絵を描いているロビンさんがいた。ロビンさんは僕の足音を聞きつけると、すぐに振り返った。


「おはよう、マフィン君」


 うん……。また名前を間違えられてるけど、良しとしよう……

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る