第023話 レミアとの決闘⑤
アレンの振り下ろした剣をレミアは受け止めた。しかし、レミアの体勢は座り込んでおり、アレンの形勢が俄然有利だった。
「降参する気はあるかい?」
アレンがレミアに問いかける。当然、断ると思われたが、レミアは小さく頷いた。このレミアの頷きにアレンは戸惑い、一瞬力が抜けた。
その瞬間である。レミアが消えたのだ。アレンの右10メートルの距離にレミアが現れた。
「いつ、空間魔術を使った?」
アレンが、レミアが消えた理由を空間魔術を使ったからというのはあっさりと看過した。しかし、使ったタイミングが分からなかったのだ。
「あなたのオーケストラと一緒よ」
レミアはあっさりとネタばらしをする。どうやら、レミアもこの修練場に仕掛けを施していたようだ。当然ながらアレンも修練場をチェックしており、痕跡を探しに探したけど見つけることが出来なかったのだ。
「ちゃんと修練場を事前にチェックしてたんだけど見つからなかったな」
「そりゃそうよ、仕掛けていたのは修練場でなく、あなた自身なんだから」
「どういうことだ?そんな隙はなかったはずだし、俺自身にかけられればいくらなんでも気付くぞ」
「ふふ、いつかけたのかしらね♪」
レミアは嬉しそうに笑う。アレンを出し抜いたのが嬉しいらしい。そう言われて、アレンは自分の体をチェックするが、何も感じられない。どうやら自分にかけられたという罠は一度きりの使い捨てらしい。
「まぁ一回こっきりの使い捨てタイプの罠らしいな」
「ふふ、どうかしらね」
「まぁ、答えは、戦いが終わったら教えてもらうか」
「そうね、戦いが終わったら答えを教えるわね」
お互いの実力が伯仲しているからだろうか。アレンの体力は急速に失われている。一方でレミアの体力もかなり失われているようだ。
アレンはお互いの体力の消耗度合いから、決着が近いことを感じていた。
アレンはこの戦いの締めとして使う技は決めていたのだ。アレンの得意技である『
「じゃあ、答えが知りたいからこの戦いを終わらせようか」
「そうね、楽しい戦いだけどこれ以上長引くとアレンの方が有利だからね」
「体力面の事を言ってるなら、そんな心配は無用だと思うぞ」
互いに間合いを詰める。振り下ろしたアレンの剣をレミアは打ち払う。そして、反撃とばかりに間合いに入り込み剣を突き立てる。それをアレンは躱し、再び剣を振るう。この攻防がしばらく繰り返された。打ち合うこと十数合、アレンはついに『陰斬り』をはなつ絶好の機会を見つけた。
陰斬りの条件は二つ。一つは、レミアがアレンとの剣戟に『集中』すること。この技は集中すればするだけ決まる確率が上がるのだ。
そして、もう一つは剣を受け止めざるを得ない状況の時だ。
(ここだ!!)
その時が来たのだ。アレンは上段から剣を振り下ろした。すさまじい速度で振り下ろされるアレンの上段斬りをレミアは受け止めようと自分の前に剣を掲げる。
「な……」
レミアの内から驚きの声が発せられた。アレンの剣がレミアの剣を『すり抜け』、レミアの首のギリギリのところで止まっていたのだ。
レミアは自分が破れたことを悟ると決定的な言葉をアレンに告げた。
「参った……」
その言葉を受けて、立会人のフィアーネが決闘の終結を告げる。
「そこまで!!この勝負、アレンティス=アインベルクの勝ちとする」
フィアーネの宣言が終わり、レミアが剣を引くと、ようやくアレンも剣をレミアの首筋から離した。
こうして、世代をまたいだ再戦は再び、アインベルク家の勝利となった。
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