第021話 レミアとの決闘③
結論から言えば、その日の見回りはすごく楽だった。
アンデッドが出なかったわけではない。それどころかアンデッドは質も量も相当なものだった。
リッチ、デスバーサーカー、デスナイトという大物(アレンにしてみれば大したアンデッドではない)もでたし、細かいアンデッドも出現した。
そんなアンデッドが大量にでたが、まったく苦にならなかったのはアレンとレミアの二人がそろっていたからである。
レミアは本当に優れた技量を持っていた。リッチ、デスバーサーカーを斃したのは彼女であるし、アンデッドも半分以上斃したのは彼女だった。ほっとくと全部斃してしまいそうだったために、アレンはデスナイトだけは自分で斃した。そうしないと一方的にアレンはレミアの技量を見ることになってしまい不公平になるからだ。
アレンとレミアはいつもよりかなり短い時間で、見回りを終えて、国営墓地の敷地から出る。
「それじゃあ、レミア、勝負の日の細かい打ち合わせをしたいから、明日、うちに来てくれるかな?」
「分かったわ。明日、お伺いさせてもらうわね。でも貴族の屋敷に行くのにこんな格好で行ったら家の人に追い払われないかしら」
「大丈夫さ、話は通しておくし、家の人といっても家令のロムとメイドのキャサリンの二人しか居ないし、その二人も身なりで追い払うなんて失礼な事はしないさ」
「そう、じゃあ明日、お伺いするわね」
決闘の日の打ち合わせというのもおかしな話だが、アレンもレミアもお互いに卑怯なしないという奇妙な信頼があったのだ。戦い関する美学に共通するものをお互いに有していることが、今夜の見回りで分かったのだ。
こうして、アレンとレミアは墓地前でわかれたのだ。
* * * * *
次の日、10時頃にレミアはやってきて、二人で決闘の日の細部を詰めた。決闘の日時、決闘の立会人、場所などが決まる。
意外というか何というか、決闘の日時は3日後、場所はアインベルク家の修練場、立会人はフィアーネとなった。
決まったときに、アレンは『これでいいのか?』と不安になったものだ。アレンにとって都合が良すぎる決闘だった。決闘の日時はともかく、場所はアレンの庭、立会人はアレンの友人である。
アレンは、レミアに尋ねたが、レミアはあっけらかんと「もちろん、構わない」と返答する。自分の実力に自信があるのも勿論だが、どうもレミアはこの勝負を楽しんでいるふしがある。
といっても、アレン自身、レミアの実力を高く評価しているので、正直、決闘の日が楽しみであった。
そして、3日後……。
アインベルク邸の修練場に3人の男女が立っていた。アレン、フィアーネ、レミアである。アレンはいつも通りの服装で、魔剣ヴェルシスと長剣、投擲用のナイフを10本、鍵縄といつもの見回りよりも準備をしている。
それに対してレミアは二本の剣と皮鎧という最初に出会った装備そのものである。もちろん、お互いに手の内を完全にさらすわけがないので、切り札的なものも当然用意していると考えた方がよさそうだ。
ちなみにフィアーネは、いつもの通りのゴスロリファッションに身を包んでいる。違うのは長い銀髪を夜会巻きと呼ばれる髪方にしているとこだろう。アレンがなんで『夜会巻き?』と尋ねたところ、『そりゃ立会人だからね♪』とよく分からない返答を受けた。
対峙するアレンとレミアの間にフィアーネが立ち、決闘の条件について確認する。
「それでは今回の決闘について、確認を行います」
フィアーネが2人に条件の最終確認を行う。
「条件は3つ。
一つ、決着は、相手が戦闘不能となること、もしくは敗北を認めた時。
二つ、武器は今この場に用意したものであること。
三つ、魔術の使用は認める。但しローエンシア国法に則り、禁術に指定されたものは使用禁止とする。
以上3つの条件でこの決闘は行われます。双方、依存はありませんか?」
「ない」
「ありません」
アレンとレミアは即座に答える。公正を期すためにアインベルク邸の修練場はこの3日間、レミアの立ち入りを自由にしていた。修練場に罠をしかけるのも、それを知っていて見逃すのもお互いの技術の範囲内であり、3日間をどのように過ごすかは本人達の自由というものであった。
実際にレミアは何度も修練場に足を運んでいる。罠をしかけることはアレンもレミアも卑怯という認識ではない。アレンもレミアも戦いとは生存競争の一つであり、勝つために最善の方法として罠を仕掛けるというのは至極当然というものであった。
アレンもレミアも正々堂々と戦う事を好んだが、その正々堂々の基準が他者に比べて著しく異なっていることは否定できない。言い方を変えれば、両者は似た者同士であると言って良いだろう。
「それでは、双方異存なしとしてこれより決闘を開始する……始め!!」
アレンとレミアの世代をまたぐ再戦が始まった。
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