58 義妹とフィナ、深夜の激闘!(前編)
和真とフィナは、ケーキで完堕ち― ご機嫌になった真菜を加えて、出前の寿司を囲んでいた。当初真菜が夕食を作ると言ってきたが、異国人のフィナには東方国の食べ物である寿司が良いだろうとなったからだ。
「ごちそうさまでした」
食事を終えた後、暫く雑談してから和真と真菜は食器を洗っていると、義妹がこのような話をしてくる。
「
「ああ、そうだな」
「どうです? この後、
義妹が本題を言い終える前に、義兄はその頭部にアイアンクローをして、発言を強制的に中断させる。
「
半泣きで義妹が痛みを訴えてくるので、義兄は可愛そうになってその手を話すことにした。
「
すると、義妹は頭を抑えながら、捲し立てるように抗議を開始する。後半の文言はよくわからないが……。
「以前に言ったはずです! 可愛い
義妹の発言を聞いて義兄が溜息をつくと、彼女はテイク2を開始する。
「それは… コホンっ。 …どうです? この後、
義妹が本題を言い終える前に、義兄は再び無言でその頭部にアイアンクローをして、発言を強制的に中断させる。
「フィナさんは、今夜この客間で寝てくださいね」
「はい、ありがとうございます」
和真は客間に来客用の布団を敷いて、フィナに向かってそう伝えると、彼女からはお礼の言葉が返ってくる。そして……
「どうです? 和真も一緒に寝ますか?」
フィナが和真を誘うような言葉を口にする。
「えっ!?」
「フフフ… 冗談です♪」
和真が戸惑っていると、フィナは悪戯っぽく微笑む。
「
すると、真菜が部屋の外から非難を浴びせてきた。
「アイアン… クロー…? 何のことですか?」
「あの
和真はそんな真菜を無視して、フィナと会話した後にその場を後にする。
自室に戻ろうとした和馬の後ろを、ほっぺたを膨らませて不満顔全開の真菜が、ずっとついてきたが無視してそのまま自室に戻った。
その夜、深夜1時―
真菜は明かりの消えた真っ暗な2階の廊下を、<気配遮断>のスキルを発動させ足音と気配を消しながら歩いていた。もちろん目的地は和馬の部屋である。
義兄の部屋の扉の前に到着した真菜が、ゆっくりとドアノブに手を伸ばしたその時―
「「!!?」」
なんと、細くて柔らかい指と触れ合ってしまう。
驚いた真菜とその相手は、慌てて手を引き二人はお互いの顔を視認した。
「……真菜ちゃん?」
「フィナさん……?」
暗闇の中で目が慣れてきたのか、二人はお互いの姿を確認する。
二人は… 少なくとも真菜は和馬の部屋への不法侵入によって、<気配遮断>のスキルは高いが<気配探知>のスキルは低いために、同じく<気配遮断>のスキルの高いフィナの存在にここに至るまで気付けなかった。
「フィナさん、ここで何をしているんですか?」
「真菜ちゃんこそ、こんな夜中に何をしているのかしら?」
真菜の質問はそのまま自分にも返ってくる。それはそうだ、彼女自身も同じ立場なのだから……
お互いに同じ疑問を抱いたまま、少しの間沈黙の時間が流れるが、その空気を断ち切ったのは、やはりと言うべきか真菜だった。
「わっ 私は… その… そう! お手洗いから帰ってきて、部屋を間違えたんです! 廊下が暗いから!」
「何十年も住んでいて、その理由は厳しくないですか?」
「はうぅ!?」
だが、真菜の答えにフィナは鋭いツッコミを入れてくる。
動揺した真菜であったが、一瞬で立て直すと今度は逆に彼女に問い質す。
「そっ そういうフィナさんは、どういう理由でここにいるんですか? フィナさんの客間は一階なんですから、部屋を間違えたなんてことはないですよね?」
「うっ!?」
真菜の言う通り、フィナが泊まっている客間とトイレは一階なので、彼女が二階にいること自体がおかしいのだ。
図星を突かれたフィナだったが、彼女は冷静さを取り戻すと、いつものように落ち着いた雰囲気を纏いながら答える。
「それは、お世話になっている<ジートロス教会>での私の部屋が二階で、いつものつもりで勘違いして2階に来てしまったのです」
「ふーん…… そうなんですね」
嘘だと思った真菜はじっとフィナを見つめるが、彼女の瞳からは真実を読み取ることはできなかった。
そして、再び訪れる沈黙……。それを破ったのは、またしても真菜の方であった。
「じゃあ、フィナさん。一階の客間にお帰りください。今度は間違えないでくださいね?」
「真菜ちゃんも、間違えずに自分の部屋に戻ってくださいね」
「「では、おやすみなさい」」
二人は笑顔でそう告げると、お互い自室に歩き出した。
そして、20分後―
二人は、和馬の部屋の前で鉢合わせていた…
「ちょっと、フィナさん! どういうことですか!? どうして、また
「真菜ちゃんこそ、どうしてまた和馬の部屋の前にいるんですか!? しかも、ご丁寧に帰ったと見せかけて、時間差で戻って来るなんて…… 」
「それは、お互い様じゃないですか!? フィナさんだって、私が戻った後に時間を見計らって戻って来たくせに!」
二人はお互いに一歩も引かず、相手の行動を非難しあう。
「違いますー! 私はフィナさんが
「私だって、真菜ちゃんが和馬に変な事をしていないか、心配になって確認しに来ただけです!」
「そんな事しません!」
「そんな事しないわ!」
「「む~!!」」
二人は自分の事を棚に上げて、相手の行動を非難しあいながら睨み合う。
その頃、扉を挟んで部屋の中の和真は―
(二人共… 早く部屋に帰ってくれないかな……)
<気配察知>スキルを持つ和真は、最初のバッティングから二人に気付いて目が覚めており、ベッドの中で嵐が過ぎ去るのを待っていた。
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