51 <次元の歪み消滅計画>開始!





 次の日、遂に<次元の歪み消滅計画>実行の日が訪れる。


「真菜、無理するなよ」

「もちろんです。私は義兄にいさんと結ばれるまでは、死ぬつもりは有りませんから♡」

「……そうか」


 和真は少し呆れながら返事をした。


「何ですか、その冷たい反応は!? もっとこう、『そうだな。生きて帰ってきたら抱いてやる』とか『この戦いが終わったら、結婚しよう』とか言ってくれたっていいじゃないですか!?」


「あー、はいはい。あと、後者はフラグだから止めておけ」


 和真の反応に不満だったのか、真菜は頬を膨らませ抗議するが彼はそれを軽くあしらう。


「もう! 本当に素っ気ないですね。でも、そんなところも大好きです!!」

「そりゃどうも」


 この会話を聞いていたフィナが、真菜に出発を促す。


「真菜ちゃん。そろそろ時間ですよ? 早く行きましょう」

「はい、わかりました。じゃあ、行ってきますね義兄にいさん」

「二人共、気をつけて」


 こうして、真菜とフィマナは和真をテントに残し戦場に向かう


「さて、俺は俺でやるべき事をやりますかね」


 和真はテント内で一人呟くと、準備に取り掛かるのであった。


 その頃、<ユビキタス本部副司令>イアン・ローリーが、真菜達参加者を鼓舞する演説を行っていた。


「 ―というわけで、この作戦が成功すれば大型の<次元の歪み>を消滅させることが出来る事が証明され、世界からアグレッサーの驚異を無くす事ができる!諸君! 心して任務にあたってくれ!!」


 その場に集まった者達は、歓声を上げ士気を高める。

 そして、最後に作戦を説明した後、今回の作戦目標である<次元の歪み>に向かう。


 <次元の歪み>の発生場所はアルスラン平原にあり、そこには既に数人の偵察兵が待機して<次元の歪み>とアグレッサーの様子を窺っている。


「よし、予定通り到着したな。事前の作戦計画どおり配置に付け」


 ローリーが指示を出すと、各国の討伐者達はそれぞれの<マナルーラー>を中心に隊列を組み始め陣形を組む。


「それでは、これから作戦を開始する。各自、作戦通りに行動せよ!」

「了解!!」


 各隊の隊長が答えると、隊員達が一斉に動き出す。

 事前に計画された通りの配置につくためだ。


 そして、真菜達も事前に決められた配置に付くが、その表情は不安に満ちている。


(大丈夫かな……。私にできるかな……。義兄にいさん……)


 真菜は、内心不安に思っていた。

 しかし、ここで弱音を吐いても仕方がないと思い気持ちを切り換えようとするが、どうしても緊張してしまう。


 その時、ローリーの攻撃命令が、拡声器越しに戦場に響き渡る。


「攻撃開始!!!!」

「うおおぉぉぉぉぉぉー!!!!」


 攻撃開始と同時に、各国のマナルーラー達やマナ使い達によって、マナによる遠距離攻撃が一斉に開始される。


 マナの矢や槍、弾などに形状を変化させたマナが、眩い光を放ちながら<次元の歪み>前に陣取っているアグレッサーに放たれていく。


 マナによる攻撃はアグレッサーを撃破するが、それはほんの一部に過ぎなかったが、先制攻撃としては悪くない戦果であった。


 特にマナルーラー達の攻撃は、一人で数十体撃破しており、他の国からも称賛の声が上がった。


 だが、当然攻撃を受けたアグレッサー側も黙ってはおらず、人間側に向かって突進してくる。


 その光景はまるで津波のように押し寄せてくるように見え、撃破しても撃破しても数にモノを言わせて迫って来ており、その勢いは凄まじかった。


「おい、何だよ! あの数は!?」

「ヤバいぞ!」


「怯むな、迎撃しろ!」


 戦いが始まる前に設置していた簡易型の防御柵で、何とか突進の勢いを殺せたが倒した訳ではないので、そのまま近接戦に入る。


 近接担当者達が前線を支えている間に、後方にいるマナルーラーやマナ使い達が、次々とアグレッサーを撃破してその数を減らしていく。


 そんな中、真菜達も必死になって戦うが、やはりまだ実戦経験が少ないのか中々思うように動けず、苦戦していた。


「マナの奔流!!」


 真菜が放った技により、アグレッサーは吹き飛ばされるがそれでもまだまだ敵はいる。


「マナの流星!!」


 フィナはマナの玉を上空に数十個作り出すと、それをアグレッサーの頭上から雨のように降らせる。その威力は絶大で、アグレッサーが一気に減っていく。


 その後も真菜達は奮戦するが、一進一退を続けることになり、人間側にも負傷者が増えて後方に搬送されていく。


「マナの大球!!」


 そこに真菜達が担当している左翼が対峙しているアグレッサーの群れに、マナルーラー並みの巨大な球を打ち込む者が現れた。


「誰だ!?」

「何者だ!?」

「なんだ? あのおかしな格好をした奴は!?」


 真菜や左翼で戦う討伐者達が、その人物を確認するとそこには全身青い色のコスプレをしたおかしな人物が立っていた。


 頭は青いフルフェイスヘルメットを被っていて、額に「B」を象った立物が付いており、服は青いジャージのような格好で、足には黒のブーツ、手には厚手の丈の長い黒色の手袋を着用している。


「マナの大球!!」


 男が叫ぶと、その男の前にバスケットボールぐらいの大きさのマナの球体が現れ、それがどんどん大きくなっていき、彼の身長ぐらいまで大きくなるとそれを前方に向けて放つ。


 マナの大球は輝きを放ちながら、進行方向にいるアグレッサーを消し飛ばし、消滅するまで前進していく。


「すげえ! おかしな格好なのに強いじゃないか!」

「あいつも<マナルーラー>なのか? 変な格好だけど!」

「どうやら味方みたいだな… 見た目はダサいが…」


 その男の姿と相反する圧倒的な強さに、周りの者達は驚きを隠せない。


 そのおかしなコスプレ野郎は和真であり、これが彼の秘策の<ヒーロー>とやらであったのだ。


(ダサいとか… おかしな格好とか… 変な格好とか… みんな酷すぎる!!)


 だが、ウキウキの本人の予想と違って、一同の酷評に彼は内心ショックを受けていた……

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