46 義妹、金髪少女と出会う
次の日―
真菜は街の【ユビキタス支部】に呼び出され、例の作戦の参加を命じられていた。
「どうだ? 引き受けてくれるか?」
「はい…… わかりました」
「そうか、良かった。君ならきっと出来るはずだ」
彼女の返事を支部長は満足げに微笑む。
「その代わりに、
義妹の申し出に、支部長は一瞬だけ顔をしかめる。支部長はその願いを聞き入れるわけにはいかないのだろう。
この一大作戦に、戦力にならない和真が付いてきても足手まといであるし、その分食料も寝場所も確保しなければならず、支部長からすれば無駄でしかない。
「月浦くん。君の不安な気持ちもわかるが、そろそろ独り立ちするべきでは無いかね? いつまでも義兄を頼るべきではないと思うのだが……」
支部長の言葉に、義妹は唇を噛み締める。
(わかっています……。そんなことくらい)
だが、まだ16歳の真菜にとって、和真のいない戦場での戦闘など考えられないのだ。
「お願いします…… どうしてもダメですか?」
「月浦君…… 」
義妹の瞳に涙を浮かべた懇願するような表情を見て、支部長は言葉を失う。
しばらく悩んだ後、彼が口を開こうとした時―
「支部長、よろしいではないですか? 一緒にお
隣の部屋から金髪を靡かせながら現れた少女が、笑顔で支部長に声をかけてきた。
「フィナ・オーエス殿…」
それは、<ジートロス教会特別顧問>のフィナ・オーエスで、女性用神官の服を身に纏った優雅な姿であった。
「彼女は<マナ・ルーラー>所持者とは言え、まだ16歳。それに本格的な戦闘訓練も半年しか受けていません。不安になるのは当然で、それを支えてくれる人物を欲するのは仕方がないと思います」
フィナはそう言って、チラッと真菜を見ると微笑みかける。
「確かにそうですが……」
支部長は渋々納得するが、それでもなお何かを言いかけたので、フィナは遮るように話を続ける。
「では、支部長さん。真― 月浦さんが、お
「え!? あ、ああ…… 仕方がない。義兄の随伴を許可する」
支部長は顔色を青くすると、慌てて許可を出す。
「ありがとうございます」
こうして、真菜と和真は作戦に参加する事になった。
真菜が支部長の部屋から出て、廊下を歩いていると後ろから誰かが自分を呼んだので、振り向くと、そこには先ほど支部長に口添えしてくれたフィナの姿があった。
「アナタは… さきほどの… 」
「私はフィナ・オーエスと言います。よろしくね、月浦真菜さん」
「こちらこそ、よろしくお願いします。あの、さっきは助けてくれて、本当にありがとうございました!」
真菜は深々と頭を下げる
「いえいえ、気にしないでください」
そう言うと、フィナは右手を差し出す。握手を求められているのだと気づいた真菜は、少し躊躇したが、彼女の手を握り返した。握られた手はとても柔らかく、暖かかった。
その瞬間、真菜はフィナとどこかで会ったようなそんな懐かしい感じに囚われた。
「私も次の作戦に参加するので、共に頑張りましょうね」
フィナは優しく微笑む。
「はい! 一緒に頑張りましょう」
元気よく返事をする真菜に、フィナはクスッっと笑う。
だが、真菜の頭の中の<ヤンデレ義妹レーダー>は、フィナが咲耶と同じくらい危険な存在だと警報を鳴らしている。
(
真菜は警戒心をあらわにして、フィナを心の中で睨んだ。
だが、当の本人はニコニコとしているだけで、特に敵意のようなものは感じられない。
その頃、そのお姉ちゃんは―
「久しぶりね。アンタの部屋に来るのも」
帰り道、和真とばったり会った咲耶は、彼に誘われて久しぶりに部屋に遊びに来ていた。
咲耶はベッドの側のクッションに座ると
「さっそく、エロ本チェック~!」
そう言って、ベッドの下に腕を伸ばす。
(真菜に没収されて、エロ本なんて無いから問題ないぜ。さあ、いくらでも探すが良い!)
和真がそのように余裕を噛ましていると、咲耶が思いもよらないことを口にする。
「発見~!」
「なん… だと… 」
ベッドの下から、一冊の雑誌を取り出した咲耶に、和真は驚愕した表情を見せる。
―が、その手に持った本の表紙を見た咲耶のほうが、更に驚愕の表情を見せた。
そして、その表情はすぐに和真への蔑みに変化した。
「いや… 別にさ… アンタも年頃の男の子だし… 只の幼馴染の私にアンタの性癖をとやかくいう資格はないけど…… 流石にこの趣向はどうかと思うのよ…… 」
咲耶は蔑んだ目で、表紙を彼に見せながら和真にそう言ってくる。
「こっ これは!? <美少女JK義妹と秘密の放課後プレイ ~制服を剥ぎ取り、抵抗出来ない義妹を好き放題に弄ぶ!>じゃねえかーーーー!!」
和真は驚きのあまりに、思わずタイトルを叫んでしまう。
「大声でタイトルを叫ぶなぁああ!!」
顔を真っ赤にした咲耶が、和真の頭をその手に持った<美少女JK義妹と秘密の放課後プレイ ~制服を剥ぎ取り、抵抗出来ない義妹を好き放題に弄ぶ!>で、バシバシと叩いてくる。
「しかも、こんな<
咲耶はバシバシ叩きながら、和真を避難してくるので、彼は右腕を盾にしながら言い訳をする。
「痛い! 叩くなよ! 俺が買ったわけじゃない!真菜が買って勝手に置いていったんだよ!」
「どこの世界に、
咲耶はそこまで言うと、真菜なら”する”と思い急に冷静さを取り戻す。
「で? これどうするつもり?」
「どうするって… おかずに使えるわけがないだろうが… 」
「誰が、そんな事を聞いているのよ! 私は処分をどうするのって聞いたのよ! このバカ!」
咲耶は耳まで真っ赤にさせて、和真を怒る。
「どうするって聞かれてもな~。真菜が購入したヤツだから、勝手に置いていったモノだとしても、一方的に処分する訳にはいかないだろう? アイツの部屋に返してくるよ」
「まあ、それがいいかもね。まあ、またアンタのベッドの下に返ってきそうだけど… 」
「うっ…… それはそれで困るが、とりあえず部屋に置いて来る」
そう言うと、和真はエロ本を手に持って、自分の部屋から出て行った。
咲耶はその背中を見送ると、ため息をつく。
(まったく、あの義兄妹は本当に何も変わってないのね。小さい頃からずっと、変わんないんだから……)
咲耶はそう思うと、ふと昔の記憶を思い出す。
そして、その思い出の中にいるいつの間にかいなくなった金髪少女の姿を思い出して、思わず寂しくなり
「フィマナちゃん… 元気にしているかしら…… 」
そう小さく呟くと、再びため息をつく。
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