45  義兄弟によるいつもの夜の茶番ですよ






 その頃、そのメンバーとなる義兄妹は―


「おい! 出てこい、ラパン! 入室を許した途端に俺の<巨乳お姉さんと幼馴染>を連れ去りやがって! 良い子だから返しなさい、お義兄にいちゃん怒らないから!」


 義兄は怪盗ラパン(ヤンデレ義妹)に、盗まれてしまった<巨乳お姉さんと幼馴染モノ>のエロ本を取り返すために、アジト(真菜の部屋)の扉を叩いていた。


「またですか… だから、私は知らないって言っているじゃないですか… 」


 部屋の中から聞こえてきた義妹の声は、心底うんざりしている様子だった。


「おい! 何、前回と同じような言い訳しているんだ! デジャヴュは求めてないんだよ、俺は<巨乳お姉さんと幼馴染>を求めているんだよ! 早く返せ!!」


 義兄がそう言うも、「もう寝るので静かにしてください」と言って、義妹はドア越しに会話を終了させようとしてくる。


 そんな状況に業を煮やした義兄は、ドアノブに手を掛けると強引に開けようとするが、鍵が掛かっているのかガチャガチャと音を立てるだけで開かない。


「どうしたものか… これでは俺がヘルメットを改造していた時と逆の状況だな…… 」


 困った顔を浮かべながら義兄は呟く。


「!!!」


 そして、しばらく考えた後、あるアイデアを思いつくが「いや、これは流石にないな…… いくらなんでも……」と思い、すぐに頭を振るうと別の方法を考え始める。


 だが、結局思いつかなかったために、実行してみることにする。


「お~い、義妹いもうとちゃん~~。お義兄にいちゃんは、只今下着姿ですよ~」


 義兄のその言葉を聞いた瞬間、義妹の部屋の中からはバタバタと慌ただしい音が響く。

 そして、扉が勢いよく開くと義妹は自分の部屋の前で、下着姿で立っているという変態行為を行う義兄に、怒りで顔を真っ赤にさせながら抗議を始める!


「もう、義兄にいさん! どういうつもりなんですか!? 義妹いもうとの部屋の前で、下着姿で立っているなんて! 変態なんですか!? ホント困った義兄にいさんです!! ハァハァ」


 ―が、右手に持った携帯からは、義兄の下着姿を撮影するために絶え間なくフラッシュが焚かれており、呆れた顔の義兄を連写している。もちろん顔が赤いのは興奮しているからである。


 そして、暫くして義兄が下着姿でないことに気付いた義妹は、今度こそ怒りで顔を赤くして抗議を始める!


「って、義兄にいさん! 下着姿ではないじゃないですか!? 純粋な義妹いもうとを騙したんですね!? この人でなしーー!!」


「純粋な義妹いもうとは、義兄が下着姿でいる廊下に興奮しながら出てこないんだよ!写メを連写して録らないんだよ! しかも、こんなアホな罠にノコノコ引っかかりやがって、お義兄にいちゃん悲しくなってきたよ」 


「むぅ~~~」


 義兄のツッコミに、義妹は頬を膨らませて拗ねたような表情をする。その様子はとても可愛らしく、これでヤンデレでなければと何度思ったことか……


 …… そんな義妹の頭をポンッと叩きながら、義兄が優しく語りかける。


「ほれっ、いつまでも不貞腐れてないで、早くお義兄にいちゃんに<巨乳お姉さんと幼馴染>を返しなさい」


「残念ですがあんな私へのあてつけのような本は、もうこの世には存在しません!!」

「おまえ、また捨てたのか!?」


義兄にいさん。夕食の前に『美味しい、美味しい』と言って焼き芋を食べたじゃないですか~?」


 そう言って、ヤンデレ目でニヤリと笑う義妹を見て、義兄の顔から血の気が引く。


「オマエ…… まさか…… 」


 義兄は後悔するが既に遅い。


「美味しかったですか~? ご自分の大切なHな本で焼かれたお芋の味は?」


 義兄に向かって、義妹は満面の笑みを浮かべて言う。


「この子、マジ怖いんですけど!!!?」


 ヤンデレの義妹の発想に、義兄はガクブルしてしまう。


「でも、義兄にいさん。あの本を燃やしたというのに、まだ義妹いもうとの心の奥底では、嫉妬という黒い炎が燃え盛っているのです……」


「オマエは何を言い出しているんだ?」


 義兄の言葉を無視して、義妹は言葉を続ける。


「このままだと、義妹いもうとの心は嫉妬という名の闇に包まれてしまいそうです……」


「オマエの心は、もう十分すぎるほど闇に覆われているんだけどな……」


 義兄の声など聞こえていないかのように無視をして、義妹はさらに続ける。


「なので、その嫉妬という名の闇を吹き飛ばすために、私を抱いてください! そうすれば、毎日イチャイチャラブラブ出来ますよ♪」


 ”義妹には『抱いて』と言わないといけないノルマでもあるのか?”と思いつつ、義兄は義妹の頭に軽くチョップをしながら、話を本筋に戻すツッコミを入れる。


「第てじゃねんだよ! 何俺の本を勝手に燃やしてんだ!? 燃やした俺の本を弁償しろ!! この馬鹿義妹いもうと!」


義兄にいさんの嘘つき!!! 怒らないって約束なのに、怒ってチョップしたり、服を脱いでいると言って私を騙したり、義兄にいさんはサイテーです!」


 義妹は大して痛くはないが、義兄の良心に訴えるために、自身の頭を抑えながら反論してくる。


「うるせーよ! 全部オマエが悪いんだろうが! いいから、早く弁償しろ。身体じゃなくてお金でな!」


 義兄が叫ぶように言い返すが、義妹は首を横に振る。

 そして、義兄を上目遣いに見つめてこう言った。


義兄にいさん、ごめんなさい。義妹いもうとには、もうお小遣いはありません」


 義兄が叫ぶように言い返すが、義妹は首を横に振る。

 そして、義兄を上目遣いに見つめてこう言った。


「なので、義兄にいさん。どうしても、弁償しろというなら、義妹いもうとが提示できるモノは2つです。1つはこの身体で、義妹いもうとのお勧めですぅ~」


 モジモジしながら、答える義妹に義兄は呆れた顔で言う。


「『お勧めですぅ~』じゃないんだよ! 2つ目を言え。どうせ碌でもないと思うが一応聞いてやる」


 義兄の言葉を聞くと、義妹は自室に戻ってとあるモノを持ってくると頬を赤らめながら、義兄に見せてくる。


「2つ目はこれです! これを<巨乳お姉さんと幼馴染>の代わりに、収めてください。これは、私がこういう時のためにネット通販で購入したモノです♪」


 それは、男性向けのHな本で義兄は驚くが、タイトルを見て更に驚愕する。そのタイトルは……


「<美少女JK義妹と秘密の放課後プレイ ~制服を剥ぎ取り、抵抗出来ない義妹を好き放題に弄ぶ!>だとぉおおおお!!!!」


 義兄は思わず叫んでしまう。

 しかも、その本の表紙のヒロインは、義妹にそっくりな黒髪ロングであったからだ。

 義妹は、義兄の反応に満足げに微笑むと、言葉を続けた。


「さあ、義兄にいさん! どちらを選び―― 」

「どっちも選ばねえよ! 来月現金で弁償しろ!」


「そんなっ!?」


 義兄は義妹が言い終える前に、両方却下と言い放ちその場を立ち去る。


義妹いもうと(本人)と義妹いもうとモノ(Hな本)なんて、選べるわけがないだろうが!!)


 義妹いもうとモノを選んで愉しんだ後に、真菜に迫られたら年頃の自分では拒絶できないかも知れない…… 和真はそう考えながら、自分の部屋に戻っていった。


義兄にいさん…… この義妹いもうとモノはどうすればいいんですか?」


 義妹は義妹いもうとモノを手に持ったまま困惑してしまう。


「明日、義兄にいさんのベッドの下に置いておこう♪」


 真菜はそう呟き、満面の笑顔で自室に戻っていった。



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