35 義妹とその親友、あとお姉ちゃん
和真が森の中で、1人訓練を始めてから1週間過ぎた頃―
「聞いてよ、由愛ちゃん! 最近
「そうなんだ~ 大変だね~」
真菜は数少ない友達の中でも、親友と呼べる
由愛は口調からも解るように、おっとりのほほんとした性格なので、少し(?)我の強い真菜を受け止めてくれるため、真菜は彼女の事を大切な友達だと思っている。
彼女の天啓(ギフト)は、非戦闘系の事務系であるため、討伐者育成学校には通っていない。
ちなみに将来の夢は、保育士さんである。
「育成学校が終わった後に家に帰らず、夕方になるまで帰ってこないのよ」
「それは、心配だね~」
「後を追跡(尾行(ストーキング))したら、どうやら1人で森に行っているみたいなの!」
「後を追うなんて、探偵さんみたいだね~」
由愛は愚痴を受け止めてくれるが、真菜の欲する答えが返ってこないので、相談相手としては適切な相手ではない。
そこで、しばらく雑談してから、お姉ちゃんに相談することにする。
咲耶の部屋―
「咲耶さん、聞いてください! 最近
「そう… なんだ…」
咲耶は真菜から最近の和真が、育成学校が終わった後に家に帰らず、夕方になるまで帰ってこないと相談を受ける。
「また、森に行っているんじゃないの?」
「はい、それはもう何度も尾行して確認しています!」
(あっ やっぱり、尾行はしているんだ…)
真菜は真っ直ぐな眼で、咲耶を見つめながら即答する。
その真っ直ぐな眼は、尾行(ストーキング)が悪い行為であるという事を、微塵も思っていない。
「毎日、後を森まで追いかけて、影から
(今、思わず監視って事実を言いかけて訂正したわね。一応本人も自分が行っている行為が、不味いことだと理解しているのね。お姉ちゃん、真菜ちゃんが一応常識を知っているようで少し安心したわ)
咲耶は真菜に一応常識が残っていることに、少し安堵するが尾行は罪と思っていないのでで、彼女の線引には疑問が残る。
真菜は由愛には言わなかったことを話し出す。
「
「アイツ! そんな危ない事をしているの!? 1人で森に”小型のアグレッサーに遭遇しに行っている“なんて!」
真菜から和真が、森に1人アグレッサーに遭遇しに行っていると聞いた咲耶は、その危険な行為に怒りを顕にする。
「……!?」
だが、すぐに自分が口にした言葉に違和感を覚え、思い返せば真菜も何か話し方がおかしかったことに気づく。
「真菜ちゃん、”遭遇しに行っている“ってどういう意味? 戦いに行っているんじゃないの?」
「それが、戦っているようには見えないんです…。
「でも、ちゃんと監視― じゃなかった見守っているのよね?」
咲耶は思わず間違えを言い直すが、当の真菜は気付かなかったのかスルーして話を続ける。
「はい、見守り続けています! でも、いつも気づくとアグレッサーが居なくなっているんです! しかも、いつのまにか時間が経っているんです! まるで、記憶が飛んでいるみたいで…」
「記憶が飛んでいる…? 見守っている内に、いつの間にか居眠りしているなんてことは? って、そんな緊迫した状況でそれはないわね……」
「そんな事、あるわけないじゃないですか! あんな鬱蒼とした怖い森で、眠れるほど私のハートは強くないです!」
(そういう所は、繊細なのね…)
咲耶は、以前聞いた真菜のヤンデレお仕置きメニューを思い出しながら、”あんな恐ろしい事を考える子が、森が怖いなんて…”と思っていると、彼女は自分なりの推察を話し出す。
「私の推察では… 」
「ごくり」
真菜が真剣な表情で語り始めたので、咲耶も思わず息を呑んでしまう。
「きっと、時を止める【天啓(ギフト)】を手に入れた
もちろん、郁也に借りたエロラノベから得た知識である。
「えっ!? ああ… うん… そうね… それは無いと思うわね…」
咲耶はこの義妹のこの推察というより、妄想に呆れながら否定する。
「とはいえ、時間が経っているというのは、不思議な現象ね…。これは、和真本人に聞くしかないかもね」
咲耶が何気なくそう意見を述べると、ヤンデレ義妹が本性を顕にする。
「そうですね……。咲耶さんの言う通り
「私は<拷問しろ>なんて、一言も言ってないわよ!? あと、そんな酷い拷問方法をスラスラ考えつく子が、さっき森が怖いってよく言えたわね!」
真菜はヤンデレ義妹に拷問の事と、先程の繊細な女の子演出にツッコミを入れる。
真相は、もちろん和真の真のギフト発動切れに起きる記憶消去である。
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