24 実戦訓練前
実戦訓練は3日間のうち、移動が2日で戦闘は1日だけである。
訓練地への移動は兵員輸送用トラックでおこなわれ、荷台に備え付けられた座席の乗り心地は悪く訓練生達は、まずこの乗り心地の悪さと戦わねばならない。
「よし、お前達! 喜べ、ここがお前達のキャンプ地だ!!」
日が暮れてきた頃、トラックが停まって教官がキャンプ地とした場所は、道のすぐ側の空き地であった。
「キャンプ地って… どう見ての只の道端だな…」
最前線基地はプレハブでそれなりに快適ではあるが、戦況によってはこのようにキャンプとなることも少なくはない。
そのため訓練の一環ということで宿泊はテントとなっている。
訓練生達は文句を言っても仕方がないので、班ごとに分かれてテントの設置を開始する。
「
テントの中で当然といった感じで、和真の隣に座る真菜がそう言ってくると彼は少し苛ついた感じでこう答える。
「咲耶に擦ってもらえ」
義兄はただでさえ自分も痛くて不快な所に、義妹がセクハラに近いことを言ってきたので、更に腹が立ってこのような余裕のない返しをしてしまった。
「私は百合ではないので、咲耶さんに擦って貰っても嬉しいとも何ともありません」
「私も百合ではないけど、痛いならお姉さんが擦ってあげましょうか?」
「結構です!」
咲耶は荷物からレーションを出しながら、真菜にそう言ってくるが明らかに少し年下扱いしており、彼女にお姉さん振られるのが嫌な真菜は即拒否をする。
食事はもちろん戦闘糧食所謂レーションであるが、兵士の士気高揚のため味とボリューム、栄養には気を使われており満足出来るものであった。
まあ、初日なので目新しいからであり、これが数日続けばこのような感想にはならないであろう。
テントの外で、和真と郁弥は星空を見上げていた。
何故ならば、女性二人がテント内で体を拭いているからであった。
「
………どうして、覗かないんですか!!」
テントの中から、真菜がお約束を展開してくるが
「和真、覗いたら殺すわよ!」
すぐさま咲耶がマジなトーンで殺す宣言をしてくる。
「幼馴染と
「大変だな」
和真としては一時の欲望で、彼女達の信頼を裏切るような真似はしたくないので、覗きなどする気はない。
テントの中で眠る順番は郁弥、和真、真菜、咲耶の順番で眠ることにする。
真菜がこの機会に密着して誘惑してくると思っていたが、義妹は何故かむしろ距離を取っている。
そうなってくると、和真は逆に気になってしまいその理由を聞きたくなるが、それでは自分がそのような事を期待していたとも捉えられかねないため、彼は眠りにつくまでモヤモヤしながら過ごすことになる。
(臭ってないでしょうか…? )
ボディシートで体を拭きドライシャンプーで髪をケアしたが、正直臭いが取れているのか解らないので、真菜は和真に臭いを嗅がれたくなくて近づきたくないという乙女な理由で、少し距離を取ったのであった。
こうして、一日目は無事に過ぎ実戦訓練当日を迎える。
「あら、少し寝不足気味みたいね?」
大きなあくびを手で隠しながら、真菜が眠そうにしていると咲耶が声を掛ける。
「それ聞くんですか? 実は咲夜さんが眠った後に、
「いや、流石に騙されないわよ」
真菜がいつものように意味深な表情でそう答えるが、流石の咲耶も今回は騙されない。
「フフフ… 咲夜さん。声を出さないように、ハンカチを咥えていましたから…」
「なっ!? 和真!」
「いや、騙されるなよ… それだけなら声は漏れないだけで、他の音は出るだろう…」
咲耶は自分のその方面の無知ぶりに、恥ずかしくて顔を赤くしてしまう。
朝食を済ませて輸送トラックに乗り込むと、またトラックに乗り込み3時間程揺られると前線基地が見えてくる。
基地に到着すると訓練生達は戦闘準備を整えて、小さな歪がある場所に教官と基地の討伐者達に引率され、警戒しながら徒歩で空間の歪近くまで向かう。
すると、前方にアグレッサーを3体発見する。
「下位のアグレッサー3体発見! 全員戦闘態勢のまま散開せよ!」
教官が指示を出すと訓練生達は、班ごとに武器を構えて散開する。
下位と言っても体長は2メートル近くあるため、それなりに大きい。
「あれが、下位のアグレッサー。緊張します…」
真菜は和真の後ろに隠れながら、人生で2度目となる下位のアグレッサーを目視で確認すると流石に緊張するようで声が少し震えている。
「全員配置についたな! 1~5班までは、左のヤツを! 6~10班までは、真ん中を! 10~15班までは、右のヤツを目標とせよ!」
訓練生達の戦闘準備が整うのを確認すると、教官は攻撃の号令を発する。
「全員、攻撃開始!!」
教官の号令が緊張で静まり返った現場に響くと、訓練生達は一斉に攻撃を開始する。
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