22 義妹参戦!
実戦訓練は四人一組で行われ、好きな者、相性の良い者同士で組み残った者で組むことになる。
こういう班分けの場合、外れギフトの和真とオタクの郁弥は敬遠され、必然的に二人は組むことになり、あとの二人は残った者と組むことになる。
和真と郁也の連携は悪くはないが、そんな理由で組んだ班の連携が上手くいくことはなく、いつも成績は良くない。
二人が実戦訓練実施の報告を受けた講堂の隅で、班が次々と決まっていくのを眺めていると咲耶が近づいてきて驚く言葉を口にする。
「今回はよろしく」
咲耶はフィマナによって、Sランクギフト【紫電一閃】を得ているため、いつもはAクラスの級友と班を組んでいる。
「どうして、俺達と?」
「それは― 」
「教官達も余計な配慮をしてくれたものです」
咲耶の背後から、真菜がそう言って現れる。
「真菜!? 一年のオマエがどうしてここに?」
「今回の実戦訓練に、特別に参加することになったからです」
「それで、私がこの娘のお守りというわけよ」
和真の疑問に真菜がそう答えると、咲耶が今回一緒の班である意味を答える。
この実戦訓練は小規模な次元の歪み近くまで行き、二年の訓練生全員で下位のアグレッサー2~3体をボコろうというものであり、比較的安全な訓練となっている。
そのため、未来の戦力<マナルーラー>所持者の真菜を特別に同行させて、経験を積ませようという事になった。
だが、そこで真菜が「
本来ならこのような我儘通るはずがないが、SSランクとSランクギフト保持者は、受け入れられることがある。
何故なら、彼女彼らのような強力なギフト保持者は貴重であり、他の国から好条件の引き抜きにあうことがある。
もし、機嫌を損なえば、その引き抜きで他国に行くかもしれないからで、人権上それを止めることは出来ない。
そのためSSランクの真菜の我儘が通ったのである。
とはいえ、実戦であるため命の危機は当然あり、そのため2年で一番の実力者である咲耶が護衛役に選ばれたのであった。
「私は
だが、真菜は咲耶の護衛が不満なようで、このような悪態で返す。
不満な理由はもちろん、咲耶が和真に近づくのが嫌だからである。
「教官達の判断は、あながち間違っていない。郁弥はともかく俺の力量では、自分自身を守るので精一杯で、オマエまで守ってやる事はできないからな」
ギフトが発動すれば別ではあるが和真の今の実力では、真菜を守るのは難しく教官達の判断は正しい。
「俺も例え親友の義妹でも、三次元女を守るつもりはない!」
「流石は親友! ブレないな!」
郁也の言い放った言葉に、和真はオタクの信念を見た気がした。
彼は別に意地悪や本心でこう言ったわけではなく、自分が護衛を拒否することで咲耶の存在意義を確保したのである。
「そもそも、みなさん勘違いをしています。私は自分の身は自分で守れます」
真菜はこう答えるが、和真は前回の実戦での経験から、義妹に釘を刺しておくことにする。
「初めての実戦では緊張と死のプレッシャーで、自分が思うほど体は上手く動かないものだから、そんな慢心は捨てて今回は咲耶に守ってもらえ」
「…わかりました。今回は咲耶さんに守ってもらうことにします。咲夜さん、よろしくお願いします」
真菜は和真の言葉を聞くと、少し考え込み咲耶に一礼して護衛を頼む。
そして、護衛を依頼した後に意味深な表情で、このようなことも願いでる。
「でも、夜は空気を読んで、私達2人から距離を取ってくださいね。理由は、言わなくても解りますよね?」
真菜の意味深な表情と発言に、何かを連想した咲耶は顔を真赤にさせて、義兄弟にこう突っ込む。
「ちょっ ちょっと貴方達! 実戦訓練中の夜に、何をするつもりなのよ!?」
「フフフ… もちろん、ナニですよ?」
そう勝ち誇った表情で答える真菜。
「何もしねーよ」
だが、その後に和真は冷静な表情ですぐさまこう答える。
「
義妹は頬を膨らませて、義兄に抗議してくるが彼は彼女にすぐに反論する。
「
だが、義兄のこの反論に今回の義妹には、何か策があるらしく少し自信に満ちた表情で、その策を披露してくる。
「今回は実戦という吊り橋効果で、本当にそうなります!」
「いや、ならないと思うぞ? だって、前回の戦いで一緒に戦った咲耶とは、そんな事になってないし」
「なっ!? どうして、そこで私の名前をだしてくるのよ!? びっくりするじゃない…」
咲耶は肩に少し掛かる茶色の髪を触りながら、照れた感じでそう答えるとその後に凛とした表情でこう言ってくる。
「まあ、私は吊り橋効果なんて、まやかしは御免こうむるけどね」
「むぅ~」
咲耶的には自分の恋愛信条を述べただけだが、それを行おうとしていた真菜は、自分が馬鹿にされたような気がしてムッとしている。
「咲夜さん、勝負です!」
「どうして?」
乙女のプライドを傷つけられた真菜は、咲耶に勝負を申し込むが彼女はやる気はないようで、このような返事をするが義妹の方はやる気まんまんなのでこのように返す。
「どうしてもです!」
「いいけど… ここだと何だから、後でお家の庭でね」
「むぅ~」
咲耶の緊張感のない返事に、真菜は一人やきもきしているが、勝負の約束はしたのでこの場は大人しく引き下がる。
そして、放課後和真の家の庭―
一定の距離を保って、対峙する真菜と咲耶、そして見守る和真と郁也。
「和真、いいのか?」
「<マナルーラー>を得てから、咲耶の何が気に入らないのか一年に一回ぐらいの頻度で、真菜の方から勝負を申し込んでいるからな。恒例行事みたいなものだな」
どうやら、二人が勝負するのは初めてではないらしく、和真も”またか”といった感じでいる。
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