21 義妹に質問
7月3日の夜―
「真菜、お前フィマナの事、覚えているか?」
「覚えていますよ。子供の頃に、森で一緒に遊んだ異国人の女の子でしょう? 名前が似ているので、仲良くしていましたし」
真菜は覚えているらしく、フィマナの話をしてくる。
「いつから会わなくなったか、覚えているか?」
「森でアグレッサーに襲われた次の日から、急に居なくなりましたよね? 国に帰ったのでしょうか?」
(真菜は、あの日から会っていないのか…)
「そうは言っても、ついこの間突然思い出したのですが」
真菜は不思議そうな顔で、そう答えてくる。
「いつだ?」
「最上位種が現れた日です」
「そうか…」
(俺の記憶が、蘇ったからか…?)
和真がそのような推察をしていると、真菜はどうしてフィマナのことを聞いてきたのか逆に質問してくる。
「フィマナちゃんの事がどうかしましたか?」
「いや、ふと思い出したからさ」
彼がそう答えると真菜は笑顔ではあるが、目はヤンデレ目になってこのようなことを言ってくる。
「ところで、どうして私の前で他の女の話題をしたんですか? お仕置きですか? お仕置きがご所望なんですか? やっぱり、
「オマエの中では、性癖はSかMしかないのか!?」
そして、後半はドS心が燻ぶられたのか、興奮気味にそう尋ねてくる。
「そう言えば、その最上位種の調査報告が出ていたな」
和真はドMの話から、この前の最上位種出現の調査報告の話に強引に切り替える。
だが、その報告書の内容はお粗末なもので、小難しい文章が長々と書かれていたが、結論は”何故出現したか解らない”であった。
しかし、これは仕方がないことで最上位種が現れるための次元の歪みなら、自然消滅すること無くその場で存在し続けるのが、今迄の事象であるがいくら捜索しても見つけることができなかった。
しかも、最上位種が常駐している場所は常に監視されており、そこから移動した報告もないため、出現理由は不明とせざるを得なかった。
犠牲者やその家族には酷な話ではあるが…
「さて、そろそろ寝るか」
「そうですね」
和真はそう言うと席を立って、自室に戻ると義妹も後ろから自然な感じで入室してくる。
「なっ なんだと…!?」
扉を閉めようとして振り返った時、彼は初めて義妹が後ろからついてきていることに気付く。
何と義妹の気配遮断スキルはLv2になっており、和真の気配感知Lv1では気付けなくなっていたのであった。
「オマエ…」
和真は驚愕の表情で義妹を見ると、彼女は”してやったり”といった表情で義兄を見ている。
「そうか…。ここ数ヶ月俺のエロ本コレクションのうち、巨乳年上モノが購入するたびに全て無くなっていたのは、オマエが侵入していたからか!」
彼がこのような質問をしたのは、義妹が自分の部屋に何度も何度も侵入して、自分と真逆の属性のエロ本を処分していた過程で、気配遮断スキルが上がったのだと推察したからである。
「流石は
その義兄の推測を聞いた義妹は、逆ギレ気味な表情でこう言ってくるので、彼も怒りを顕にしてしまう。
何故なら、少ない小遣いで買ったエロ本が次の日には無くなっているのだから…
「オマエな! 勝手に俺のエロ本を捨てやがって!」
「そんなに、女の子の裸が見たいなら、私の裸を見ればいいじゃないですか! もちろん、結婚を約束して貰いますけどね! あと、エロ本も全部処理! エロ動画も全部処理して貰いますけどね!」
真菜はそう言って、上着の裾を捲くりあげるとその色白で綺麗なお腹を見せてくる。
「お帰りください」
和真はその状態の真菜を回れ右させると、お腹を出したままの義妹を部屋から追い出して、扉を締めドアバックルで施錠する。
「ちょっと、
扉をドンドンと叩きながら、義妹は室内の義兄に抗議してくるが、暫く無視しているといつぞやのような反応が扉の向こうから返ってくる。
「そんなことだから、いつまでも童貞なんですよ!」
「誰が童貞だ! いや、童貞だけど…」
義妹の抗議に突っ込んでみるが、真実なのでイマイチな切れになってしまう。
「
真菜はまた廊下をバタバタと足音を立てながら、自室に戻っていった。
「さあ、寝るか…」
「明日は良い事があるといいな」
和真はそう願いながら、眠ることにした。
「よし、喜べオマエら! 明日から3日間掛けて実戦訓練を行う! 各自準備をしておくように!」
だが、昨晩の願いは教官のこの一言で、脆くも崩れ去る。
教官の言葉に、一度実戦を経験しているとはいえ訓練生達はざわめき立つ。
前回の戦いを経験しているとはいえ、まだまだ圧倒的に実戦経験が足りていないため、やはり命の危険のある実戦となれば緊張が走ってしまう。
和真も緊張しているが、あれから訓練したスキルとギフトの力を試すいい機会なので、心は少し躍っていた。
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