20 義妹のお願い
「
「おお、
ある日の夕食後、真菜はこのような突拍子もない― いや、一ヶ月に一回は言ってくる事で今月のノルマを達成しただけであり、和真も慣れたように断る。
だが、今回は少し違うようだ。
「間違えました。私の恋人役になってください」
「どうして、最初からそう言わなかった?」
「あわよくば、恋人になってくれるかと思ったからじゃないですか!」
義妹は少し逆ギレ気味に答える。
「実は私は入学してから、ここ3ヶ月で20人ぐらいから告白を受けました。まあ、興味が無いので、誰からとか正確な人数は覚えてはいませんが」
真菜は見た目だけは、完璧な黒髪ロングの清楚系美少女であるため、ヤバい中身を知らない男子からは好意を持たれて告白される。
「いきなり、自慢か? 俺なんて、一度も告白されたこと無いのに…」
「安心してください。もちろん全部断りましたよ」
ここから、義妹は恋人役を頼む理由を説明する。
「私の心も体も既に
「理由説明の前半部分が明らかな嘘だったから、告白されたのも嘘だな。じゃあ、俺は部屋に帰って、明日の訓練の準備をするわ」
和真がそう結論づけて、部屋に帰ろうとすると義妹は義兄の腕を掴んで、言い訳をしてくる。
「違うんです! 確かに先程の説明の中に、一部誤解を招く表現があったかもしれませんが、告白されているのは本当なんです! だから、恋人に! 恋人役になってください!」
そして、今一度恋人役を依頼してくる。
「恋人役になったとして、何をすればいいんだ? 一緒に登下校か? 一緒に昼食か? それ、今も全部しているぞ?」
「恋人だと解らせるために、人前でキスする振りをしてもらいます。物語でよくある恋人役シチュエーションの定番です」
また、ラノベの影響かと思いながら、和真は小細工なしのストレートで本音を聞いてみる。
「本音は?」
「もちろん、本当にキスするに決まっているじゃないですか! 私のさくらんぼの柄を結ぶ訓練で鍛えた舌技で、
すると、真菜はそのストレートをフルスイングして、ホームランで返してくる。
「そのまま転げ落ちてくれ」
「酷い!! よく自分をこれだけ想う可愛い
「どうして、そうなる!?」
義妹の飛躍した推察に、義兄は思わず突っ込むが彼女は自分の推論を述べ続ける。
「私の今迄の愛故の行動への冷たい対応といい、この前の私への羞恥プレイの強要といい、ドSだったとすれば全て納得がいきます!」
「早朝の寝込みを襲う事への対応とそれらしい理屈を付けて、キス(それ以上の行為)を求めることを拒否することがドS行為になるのか? あと、羞恥プレイは、オマエが勝手にやったことだからな?」
和真は当然自己弁護をするが、真菜は聞こえていないのか義兄の言葉を無視して話を続ける。
「まさか
「あのヤンデレお仕置きの発想から、オマエは明らかにドSだろう…」
あんな爪は剥がしたり、指を折ったり発想が出来る人間がドMなわけがない、そう考えた和真は真菜に指摘するが、彼女からはヤンデレ理論によるヤンデレ反論が返ってくる。
「何を言っているんですか? アレは恋人として裏切った
「凄い理屈だな、明らかに罪とお仕置きの内容が釣りあっていないけどな…」
和真はそう突っ込むが、真菜は無視して自分がドSで無い理由を話し続ける。
「現に私の心は、
「モノはいいようだな!」
それはMではない気がすると思う義兄であった。
「疲れた……。真菜、俺はもう風呂に入って寝るよ。別に何も誘ってないからな。振りでも何でもないからな!」
和真は前回の経験を活かして、そう詳しく告げると風呂に入る。
「
あれだけ脱線したから、忘れたと思っていたが義妹はちゃんと思えていた。
和真は少し考えた後に、こう答えて風呂場に向かおうとする。
「俺はドSらしいから、オマエが告白されて困る姿を見て、楽しむ事にするから断る」
「そんな!? どうせなら、直接私に何かしてください!」
義妹がそう懇願してくると、和真は(また、話が脱線したな)と思いつつ立ち止まると、また少し考えてこのような命令を出すことにする。
「そうだな。だったら、そこで目を瞑り正座しろ。そして、俺がいいというまで、その体勢を続けろ」
「ここで目を瞑り正座だなんて、私は一体これからどんなエロい事をされてしまうんですか!?」
ソファーの上で期待に胸を膨らませながら、正座している義妹を尻目に和真は風呂に入り眠る準備をする。
「
リビングからは、義妹の声が聞こえてくるが、暫く放おって置くことにした。
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