19 和真の過去その2と義妹のスキル向上提案
そして、最後の制約は最初の危機が訪れるまで真のギフトの事を記憶から消去することである。
「この能力があれば、君はその事に甘えて自分の能力を磨こうとしないであろう。だが、それではこの力が発動した時に、使いこなすことは出来ないであろう。何故ならば、自身で修練して手に入れていない能力が強化されても、それをどう扱えばいいか解らず上手く扱えないからだ」
つまり、何でも斬れる名刀を手に入れても、剣術ではなくゴルフのスイングをしていては、その刀の性能を100%活かせないという事である。
まあ、これは言葉の意味もあるのだが、和真がピンチにならなければこの娘が与えた不正な能力は発動しないので、ワンチャン一生発動しないかもという思惑もあった。
現に和真は父親が殉職しなければ、普通の学校に進み討伐者にはならないはずであった。
当事者の和真には、選択権はなく親子の間で話は勝手に進み、和真が記憶を消される前にフィマナが話しかけてくる。
「和真、また会おうね」
「いや、フィマナちゃん、もう駄目だよ!?」
娘の発言を父親は却下するが、娘は冷めた表情と声で一言だけこういう。
「家出する」
「はい… 好きにしてください」
父親は即行で、娘に白旗をあげる。
最後まで親バカだった彼女の父親は、像の目から和真にビームをあてると彼の記憶は消えていく。
ちなみにフィマナは、和真の前に咲耶にSランクギフト【紫電一閃】、次の年には特に仲の良かった真菜に【マナルーラー】を与えており、彼女の父親は二人からギフトは取り上げなかったが記憶は消している。
それは、フィマナがギフトを与えることができるという事と自分と繋がりがあるという都合の悪い事実を消すためである。
フィマナの父は、【 マナのヒ 】をクソ雑魚能力と言っていたが、対ヤンデレ義妹用としてはとても重宝しており、今は少し感謝している。
(明日から、マナの操作と近接用の刀の訓練を重視して、扱い方のコツを覚えよう。そうすれば、【フィマナのヒ-ロー】を使用した時に、もっと効率よく戦えるはずだ。あと回避力も上げておかないとピンチを通り越して死んでしまう)
和真は明日からの訓練目標を立てると、眠ることにする。
次の日、訓練生達は今回の犠牲者の追悼式兼合同葬儀の出席のために、ジートロス教会にやってきていた。
支部長の長くて有り難い弔辞に始まり、司教の慰めの言葉に続く。
参加者の中には、故人を思い出して泣く者もいて、和真も犠牲になった級友を思い出し辛くなる。
式が終わった後、郁弥が火葬場の煙突から出る煙を見ながらこう呟く。
「お互い送り出される側には、ならないようにしようぜ」
「ああ… そうだな」
そう短く答えた和真は、
(俺のギフトで、もう誰も死なせはしない! そのためにも、訓練を頑張らないと!)
心の中で決意を新たにする。
半月後、マナの操作で悪戦苦闘していた和真が、夕食後に庭でマナの操作の自主訓練をしていると義妹が話しかけてくる。
「
大気中のマナからオドに効率よく変換する方法があるのなら、消耗したオドをすぐに回復する事ができて、戦場での生存確率は大きくあがる事になり、和真にとってはぜひ知りたい内容である。
「いい方法があるのか、
「はい。立ち話はなんですから、部屋の中で」
真菜に促され部屋に入ると、彼女は早速本題に入る。
「それは口移し! つまりキスです!!」
「…… まあ、説明を聞こうか
和真は長い沈黙の後、時間の無駄になるであろうが、一応説明を聞いておくことにする。
義妹の説明はこうである―
義妹が口移しでマナを義兄の体内に送り込むことによって、なんやかんやで変換能力が上がるらしい。
なんやかんやとなっているのは、義妹がそれらしい事を言っていたが、(そんな事あるわけ無いだろうが!)と和真が思ったからであり、正しくそうである。
「 ―というわけです! 私だって別に好きで
これ以上義妹の欲望を聞くのは精神衛生上悪いので、和真は彼女の言葉を遮るように次のような事を話し出す。
「おい、
義兄の疑問に、義妹はこのような答えを出してくる。
「えっ? ラノベですよ?」
「予想以上に、酷い答えだな!! せめて、友達の友達が試して成功したのを更にその友達から聞いたぐらいのモノを持ってこいよ!」
完全フィクションとフィクションかどうか怪しいでは、まだ後者のほうが信憑性は高く、まだ試してみるかとはなるが、フィクションでは試す気にはならない。
「さあ、風呂に入って寝るか…」
和真が呆れた感じで、風呂に入ろうとすると義妹が激しく興奮して、このような事を言い出す。
「えっ!? それって<先に風呂に入って待っているから、後でオマエも入浴してから来いよ。キスよりもっと凄い方法で魔力の高めてやるよ>という、第3巻で主人公がヒロインに提示したあのやり方ですか!?
「いや、そんなん知らんがな…」
義妹のあまりのぶっ飛びっぷりに、和真は思わず関西弁で否定してしまう。
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