10 ギフトとスキル





 この世界では、【天啓(ギフト)】が全てといっても過言ではなく、後天的に得る事ができるスキルで多少はカバーできるが、同じ努力をすれば5(ギフト)+3(スキル)=8と10(ギフト)+3(スキル)=13となるので、有能【天啓(ギフト)】を所持する者が勝ち組であることは覆りようがない。


 それでは、ここでSSランク【天啓(ギフト)】保持者の喜びに満ちたインタビューをご覧ください。


「はい、そうですね。SSランク【天啓(ギフト)】を得てからというもの、自分に自身が持てるようになって、大人しく引っ込み思案だった性格が改善され、今では性格も社交的になりました。更に【討伐者育成学校】に入学してからは、金運も上がり、恋愛運も上がって、長年想いを寄せていた片思いの彼から、逆に告白されて今ではラブラブです! さあ、みなさんも【討伐者育成学校】に入りましょう!」


 ナレーター以下ナ) そう嬉しそうにインタビューに答えたのは、SSランク【天啓(ギフト)】<マナルーラー>を所持する【ジートロス教会】管轄組織【アグレッサー討伐組織ユビキタス】直営の【討伐者育成学校】所属1年生の<月浦真菜(つきうらまな)>さんであった。


「ほう、義妹いもうとよ。恋人ができたのか、初耳だな。今度紹介してくれ、義兄あにが見定めてやる」


 ナ) そう彼女に話しかけたのは、インタビューの見学に来ていた義兄の同学校所属の2年生<三上和真(みかみかずま)>君である。


 ナ) 二人の両親も【討伐者】として、この街の国の平和を守っていたが、和真君の母親を残して名誉の殉死を遂げてしまった。


 ナ) それでも、義兄弟揃って平和のために【討伐者】を目指す、二人の勇気と信念には感嘆するしかない。


「おや、義兄にいさん。もしかて、ヤキモチですか? フフフ… 心配しなくても恋人とは、もちろん義兄にいさんのことですよ」


 ナ) ん?


「そんなモノになった覚えもないし、こっちから告白した覚えもないぞ?」


 ナ) んん?


「カット!!」


 プロパガンダの為にインタビュー映像を撮っていた監督が、二人の会話に怪しさを感じて、撮影を止めさせる。


 監督は慌てて真菜に近づくと、事実を確認する。


「月浦さん。このインタビュー映像は国の公的なモノだから嘘は困るんだ…? えーと、確認するけど、二人は付き合っているんだよね?」


「付き合っていません!」


 和真は真菜が嘘を重ねる前に即答する。


「監督さん、嘘ではないです! 今は違うかもしれませんが、将来的にはそうなるんです(願望)!!」


「現時点で付き合っていないなら、今回の映像には残せないね。恋人の件を抜いて、もう一度取り直すよ」


 監督もこういう手合に慣れているのか、真菜の反論を無視して淡々と大人の態度で話を進めていく。


 SSランク【天啓(ギフト)】所持者で、見た目もアイドル並に可愛い真菜に、政府や機関は広告塔としたのだが、再検討が必要になるかもしれない。


「これより、オド(体内魔力)による<自己再生スキル>の訓練を行う」


 <自己再生スキル>とは、オドを傷口付近に集中させ、自然治癒力を活性化させ、傷を治すスキルである。


 マナ(自然魔力)による治癒能力は<治癒スキル>といい、こちらは他人がマナを使用して傷口の自然治癒力を活性化させ治療するスキルである。


 この2つの能力は、高レベルのスキル保持者が使用すると欠損した部分ですら、新たに再生でき我々の世界の自然治癒能力を遥かに凌駕する治療を実現する。


 この治癒能力のおかげで、この世界の人間、特にアグレッサーと戦う討伐者は戦闘で腕がもげようが、足が千切れようが、極端な話胴体に穴が空いても即死せずに回復が間に合えば、死なずに済む。


 まあ、アグレッサーとの戦いでの死因は、頭部を失ったり、体を真っ二つに引き裂かれたり、大穴が空いたりの即死がほとんどであるが…


 体内のオドを消費すると周囲のマナを体内に取り込んで、オドを回復させる。

 <オド回復スキル>が高ければ、この回復速度も上がる。


 和真は入学から1年掛けて、<自己再生スキルLv1>と<オド回復スキルLv2>を取得している。


 <自己再生スキル>は、きっと真菜がお仕置きを実行した時に、彼の助けとなるであろう。


 因みに真菜は<治癒スキルLv2>を所持しており、その目的はお仕置きを受けた義兄あにが、いつまでも痛みで苦しまないようにという義妹いもうとの優しさである(本人談)。


 そもそも、<お仕置きしないのが優しさでは?>と思われるかもしれないが、そのような選択肢は彼女にはない。


 次に和真は、オド武器の一つ<オドライフル>を扱う訓練を受ける。


 武器訓練は選択式で、アグレッサーを遠隔から攻撃できる遠隔武器は人気の訓練であり、彼もよく選択している。


 オド武器の内部には、体内のオドを吸収して蓄積し放つための特殊なクリスタルが内蔵されており、このクリスタルは<教会>から提供されている。


「よく来たな、この✕✕✕野郎ども! 今のお前達は虫けら以下だ! だが、俺の訓練に耐えきれば、お前達は立派な― 」


「軍曹殿。下品な煽りはやめて、早く訓練を始めてください。でないと教育委員会にセクハラで訴えますよ」


「あっ はい…」


 女生徒達に抗議を受けた軍曹は、言葉をそこまで止めると大人しく武器の訓練を開始する。


「いいか! フルオートライフルは、必ずこまめに<指切り>して射撃しろ! 馬鹿みたいに連射しているとすぐに体内のオドが枯渇するぞ!」


 ※<指切り>… フルオート射撃時に引き金を引きっぱなしにせず、弾が数発発射された時点で引き金を戻す射撃方法、いわゆるバースト射撃。


 フルオートの銃は、連射しつづけると反動で銃口がいずれかの方向へ動いてしまい、命中率が下ってしまう。


 そこで、軍曹の忠告通りバースト射撃することで、銃を安定化させ命中率をあげ、しいては無駄弾を抑えるのである。


 特にオドライフルは、通常の銃と違い弾が尽きれば弾倉交換とはいかず、体内のオドを回復させねばならないため、スキル次第ではかなりの時間的ロストとなり、この射撃方法はとても有効である。



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