11 義妹ヤンデレ抗議する





 次の<マナ操作>の授業で、遂に和真がマナで作ったマナの弾は的まで届き、被弾部分に穴を空けることができた。


 これにより、和真は一年がかりで<マナ操作Lv1>を、取得することが出来た。


 和真が更新したスキルプレートに新たに記された<マナ操作Lv1>を見て、感慨にふけっていると<マナ操作>のレベルが上がった郁弥が神妙な面持ちで話しかけてくる。


「和真… 俺はようやく気付いたよ… マナをどう扱っても、二次元になんて入れやしないことを… 」


(おお、親友よ…。ようやくその事に気付いたか…)


「だが、俺は絶望の中で閃いた! マナ操作を極めれば、マナで槍や矢の形を作り出す要領で、二次元キャラの方を現実に呼び出せるんじゃないかと!」


(流石だな、親友。そのブレないところ嫌いじゃないぜ。だが、それも多分無理だ。何故なら、それができるならマナ操作頂点のギフトを持つ真菜が、やらないわけがない)


 和真の推測通り、もし真菜にそのような能力があれば、和真2号を作り出して色々しているであろうが、幸いにもそのような事はできないため、彼の精神衛生は保たれている。


 親友があまりにも希望に満ちた表情と夢を追う輝いた瞳をしていたために、和真はその悲しい現実を告げることができずに


「その夢…、叶うといいな」


 応援する言葉を掛ける事しかできなかった。

 次に和真は、接近された時のために近接戦闘武器の訓練を受ける。


 彼が選んだのは、刀型のオド兵器<オドのカタナ>を扱う訓練で、そこには同じく刀を選んだ咲耶がいた。


「どう? 私と模擬練習する? それとも一人で的を相手にする?」


 咲耶は手練れで、<カタナスキル>のレベルも高く、練習相手として格上となるが、強い相手と戦えばこちらの戦闘経験値は上がるが格下と戦うことになる咲耶は、あまりあがらない。


 それでも、咲耶が相手をしてくれるのは、幼馴染の友情からであろう。


 近接オド兵器は柄とハバキで構成されており、その柄についているスイッチを押すと内蔵している特殊クリスタルが起動して、体内のオドを自動的に吸収しハバキより吸収したオドの刃が伸びて刀身を形成する。


 遠距離型との違いは、対象と接触した部分だけオドが消費されるので、その分消費を抑えられ継戦能力が伸び、ライフル型が弾による点の攻撃に対して、刀剣武器は線、槍は大きな点と線と対象に与える面積が大きいため必然的にダメージも大きくなるが、近接せねばならないため命の危険も高くなる。


 そのため接近戦をする者は、<反応強化スキル>と<移動速度強化スキル>が高いことが望まれる。


 演習用のオド武器は、練習用クリスタルが使用されているため、銃も刀剣も相手に当たるとビリッとくるだけなので、体に命中しても「痛い!」で済むようになっている。


 この仕様に目をつけた真菜は、義兄お仕置き用に一つ譲ってくれと学校にお願いしたが、しこたま叱られていた。


 咲耶は<カタナスキル>と<反応強化スキル>、<移動速度強化スキル>が総じて高いため、今の和真では彼女が手加減してくれなければ、勝負はすぐに着いてしまっていたであろうが、いい感じに手加減してくれたので和真には良い訓練となった。


「ありがとう、咲耶。いい訓練になったよ」

「まあ、また気が向いたら、相手してあげるわ」


 咲耶は一時間も和真の相手をして時間を無駄にしたのに、恩を売った感じも出さずにそう言ってその場を後にした。


 彼女の友情のお陰で、和真は<カタナスキルLv1>を習得することができ


(咲耶、ありがとう。今度何か奢るよ、真菜に見つからないように…)


 心の中で感謝する。


 その夜、真菜が夕食を作っている台所に隣接するリビングで、教本を見ていると彼女に声を掛けられる。


義兄にいさん♪」


 その声は少し弾んでおり、そのため和真も警戒せずに真菜の方に振り向くと、彼女は笑顔のまま右手に持ったフォークを投げつけてくる。


「うお!?」


 和真は<反応強化スキル>のお陰で、頭を素早く下げて自分の頭を目掛けて飛んでくるフォークを回避することに成功する。


 避けたフォークは彼の背後の壁に刺さっっており、その衝撃で柄が上下に僅かに揺れている。


 それを見て和真は、このような暴挙に出た義妹いもうとに問い質すと、彼女は素直に謝罪してくる。


義妹いもうとよ、これはどういうことだ?」

義兄にいさん、ごめんなさい。手が滑ってしまいました」


「手が滑っただけで、フォークが壁に刺さるわけがないだろうが!」


 だが、真菜はあくまで事故だと言い張ると、和真のツッコミを無視して、今度は彼女の方がこのような事を問い質してくる。


「それよりも、義兄にいさん… どうして、避けたのですか? 避けたらお仕置きにならないじゃないですか?」


「避けないと怪我するだろうが!」


 彼が少し怒った感じでそう突っ込むが、彼女は笑顔のままでこう答える。


「大丈夫、”頭イタイイタイ”になるだけですよ」


「”頭イタイイタイ“で、済むわけがないだろうが! そもそも、お仕置きって何だ? というか、オマエさっき”手が滑った”って言ったよな?」


 和真のツッコミを受けた真菜は、観念したのか暫く黙ると本音を顕にする。


「お仕置きに決まっているでしょうが!」

義妹いもうとよ、ついに本性をだしたな」


義兄にいさんが悪いんですよ! 私という可愛い義妹いもうとがいるのに、よりにもよって茶髪と仲良くして!!」


 どうやら、昼間の咲耶とのカタナ訓練での事を言っているようである。


(何故、知っているんだ…)


 真菜は他の授業を受けていたはずで知りようがないはずなのに…

 和真はそう思いながら、次のように答えるが


「あれは、訓練していただけだ!」

「二人で何の訓練をしていたのやら…」


 真菜は怪訝そうな表情でそう返してくる。


「カタナに決まっているだろう! 卑猥な訓練していたみたいに言うな!」


 和真が正当な反論をおこなうが、真菜は彼の言葉を無視して、いつものようにヤンデレ理論を発言し始める。


「そもそも今の義兄にいさんに、傷ついた義妹いもうとの抗議を込めた愛ある行為を批難する権利なんて、微塵もありませんよ!」


(いや、あるだろう…)


 和真は口に出しても、今のヤンデレ義妹いもうとには無駄なので、心の中だけでそう呟いていると彼の予想通り、真菜はヤンデレ反論を一方的に続ける。


「それに、ギリギリまでフォークにしようかこの果物ナイフにしようか悩んで、軽症で済むようにフォークを選択肢してあげたんですよ? そんな義妹いもうと義兄あにを想う優しい心に、義兄にいさんは感謝のキスかハグ、むしろ両方するのが正解なのに、批難をしてくるなんて大間違いにも程がありますよ!! 赤点ですよ!」


義妹いもうとよ、俺にはそんな高難易度な答えは思い浮かばなかったよ。あと、今度からは投げないという選択肢を選んでくれ…」


 義妹のヤンデレ問題の高難易度な正解に呆れつつ、和真はどうせ意味はないと思うが、一応次への要望を伝えておく。


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