06 スキルプレート
5時半という早起きのおかげで、和真と真菜は時間に余裕を持って、家を出ることが出来たが、二人共眠そうにあくびを何度もしながら朝の清々しい通学路を歩いている。
「おはよう、二人共」
後ろから、二人を見かけた咲耶が、朝の挨拶をしてくる。
そして、幼馴染である咲耶は、二人が寝不足の表情でいるのに気付いてこのような質問をしてくる。
「珍しく早く登校していると思ったら、えらく眠そうね? 二人して夜ふかしでもしたの?」
その質問に真菜が意味深な表情をして、このように答える。
「あら? それを聞くのですか、咲耶さん? 同じ屋根の下に男女が二人っきりで暮らしていて、共に眠そうにしている… 答えは言わなくても解るのではないですか?」
「なっ!?」
その思わせぶりな発言を真に受けた咲耶は、顔を真っ赤にして驚くと恥ずかしそうにこう言ってくる。
「あっ アナタ達! いくら、義兄弟とは言え、そっ そんなこと破廉恥なんじゃない!?」
その慌てている咲耶を見て、真菜は少し勝ち誇った顔をしている。
何も勝っていないのに…
「別に何もしていないよ。ただ、いつものが、5時半になっただけだよ」
「ああ… いつも、のね…」
咲耶はその言葉だけで、全てを察する。
「
「嘘で優位に立って、虚しくないか?」
嘘であっても年上の余裕で対応してくる咲耶の優位に立っていたかったのか、真菜は不服そうな表情をしている。
和真は睡魔と戦いながら、授業を終えるとそのままホームセンターに向かいあるモノを購入する。
「すまないな、
それは、ドアバックルで和真は扉の内側に取り付ける。
和真の作戦は図に当たり、翌朝6時半―
「
真菜は扉の前でドアを叩きながら、泣きそうな声で部屋の中にいる和真に文句を言ってくる。
「
和真は、昨日自ら起こすことが目的ではないと言っていた義妹にそう言い返すが、彼女からは冷静な声でこのような言葉が返ってくる。
「何のことですか? 昨日は朝早かったので、寝ぼけて聞き間違えたのではないですか? 困った
どうやら、このヤンデレ
「
「駄目です。そんな事を言って、二度寝するつもりでしょう。部屋に入って、起きているか直接確認します。開けてください」
和真がこう言って、真菜にお帰り願うと彼女からはもちろん”ノー”とばかりの返事が返ってくる。
「……」
和真が黙っていると扉越しから聞こえてくる、その声はどんどん低くなっていく。
「
「いいぞ、やってみろ」
「……」
和真がそう答えると真菜は暫く沈黙した後に、
「酷いです、
恨めしそうな声で扉の中の義兄に声を掛ける。
和真もそれが解っていての発言であった。
「
真菜はドタドタと足音を立てて、廊下を走っていった。
こうして、義兄弟の朝はいつもどおりに過ぎていく。
この世界では12歳の時に、神から【啓示】を授けられ【天啓(ギフト)】を与えられる時、一緒に【スキルプレート】を与えられる。
このスキルプレートは神の奇跡の力により、所有者の顔写真、ギフトと現在会得しているスキルが表記され、【ジートロス教会】と【ユビキタス】関連施設、【討伐者育成学校】に設置されている、スキルプレート更新装置で内容を更新することができ、スキルプレート所持者は自分が新たに得たスキルを確認することが出来る。
スキルプレート所持者は就職時にこれを見せて、自分にはこんなスキルが有るとアピールする事ができ、採用者はそのスキルを見て採用するか決め、スキルに合った適材適所の仕事を与えることができ、職場によってはスキル手当も給与に上乗せされる。
因みにスキルプレートは、5年に一度必ず更新するように法律で義務付けられており、紛失した場合、近くの教会で<お布施>という名目で1000円納めると再発行してもらえる。(カード・電子マネー利用化)
今回の更新で和真のスキルプレートには、新たに<精神耐性Lv1><早起きLv1>が追加されていた。
これはもちろん、真菜による連日の早朝襲撃とヤンデレ発言によるもので、これを知れば彼女は嬉々として自分の手柄だと主張して、これからも襲撃してくるであろう。
「黙っておこう」
和真はそう思いながら、スキルプレートを大事にプレートケースに入れて保管する。
ドアバックルで朝の平和は守られ、理由はともあれスキルも増えた和真は順風満帆の思いでいたが、彼は義妹の能力とヤンデレ力を過小評価し過ぎていた。
彼は明日の朝、その身を持って知る事になる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます