冒険者ギルド
反応があった方向を注意深く見ていると3人の男が走って飛び出してきた。すると男のひとりが私を見てニヤリと笑った。
「わりぃが、囮してもらうぜ?『ウィンドカッター』!」
なんとその男が私に向けて魔法を撃ってきたのだ。
「っっ!?」
いくら魔法やスキルがすごくても所詮子供の体。しかも私は戦闘経験などない。簡単に男達が走ってきた方向に吹き飛ばされた。
「いったた...いきなりなんなの!?」
憤っていると後ろからズウゥン...という何かの足音がした。
「え...?」
振り向くとそこには巨大な炎を纏うクマがいた。
「グルルルルルゥ...」
「ひあ...」
完全にそのクマは私を獲物としてみている。
逃げなきゃ...逃げなきゃ...でもどうやって...?
クマが右腕を振り上げ私を叩く。私は吹っ飛び木に激突する。
「か...はぁ...」
たったの一撃で左腕がちぎれ、脇骨が砕け、内臓が引き裂かれる。
すぐに再生するがクマが近づいてくる。
「死に...たくない!死にたくない!死にたくない...」
必死に対策を考えているとクマが口を開きながら近づいてきた。
喰われる...そう思った私は咄嗟に顎をなぐった。魔力放出を全力で使って...
ぐしゃぁあああああああ!!
腕が潰れる音と共に突風が吹き荒れる。
恐る恐る目を開けてみるとそこには首から上が無くなったクマが倒れ込んでいた。
「へ...え...?」
しばらく放心していたが、すぐにあの男達を追いかけることにした。クマはアイテムボックスにしまっておく。
「あんの野郎ども絶対許さない...!」
男達が走って言った方向に走っていくこと1時間...街についた。
「おぉ〜街だ!」
その町は壁におおわれていた。門には『ようこそ!ウダールへ!』と書かれていた。
門に近づくと門番に話しかけられた。
「お、嬢ちゃん1人なんか?」
「うん」
「親いないのか?」
「いないよ」
すると門番はバツが悪そうな顔をした。
「そうか...なんか悪いこと聞いたな」
「いえ、ギルドってどこかわかりますか?」
「ウダールは初めてなのか?」
「うん」
「商業ギルドか?」
「んーん、冒険者ギルド」
「あぁ、依頼か」
名前があっているか不安だったがあっていたみたい。この門番さん私が依頼しに来たと思ってるんだ。見た目ってやっぱり重要だよね〜...
「冒険者ギルドはこの道を真っ直ぐ行ったら左側にあるぞ。看板に冒険者ギルドって書いてあるからわかると思うが...見つからなかったら街の人に聞いてみてくれ。」
「分かりました!」
門番に言われた道を真っ直ぐ行くと左側に大きな家が見えてきた。
「あれかな?」
近づいてみるとおおきな看板があり、冒険者ギルドと書いてあった。
「よし...いくぞっ!」
入ってみると中は慌ただしかった。とりあえず受付所に行き、受付の男の人に何があったのか聞いてみた。
「何かあったんですか?」
「フレアベアーが出たんだ...悪いけどたぶん依頼はフレアベアーが倒されるまでは受けて貰えないと思うよ?」
この人も私が依頼しに来たと思っているみたい。
「あ、いえ...魔物の買取をお願いしたいんです。あとフレアベアーを見つけた人を連れてきて欲しいんです!」
「魔物の買取ね。そこの板に魔物置いてくれる?フレアベアーを見つけた人は今ギルマスと話してるからちょっとまっててね」
受付の人が言っていた板ってこれかな...?金属でできた板で私の今の身長と余り変わらない。
「多分うさぎとかだと思われてるんだろうな〜...ま、いーや」
私はその板にクマを出す。
ズズウゥゥゥンンン...
クマを出すとさっきまで騒がしかったギルドがシーンと静かになった。
「お...お嬢ちゃん...これは...?」
さっきの受付の人が話しかけてきた。
「多分さっき話してたフレアベアーですね」
「ちょ、ちょっとここにいてください!ギルマス読んできます!!」
「あ、うん」
数分待っていると受付の人が入っていったドアが勢いよく開けられムッキムキの男の人がでてきた。その男の人の後ろに受付の人と擦り付けてきた男3人組がいた。
「まじか...」
「だから言ったじゃないですかギルマス...」
どうやらムッキムキの人がギルマスらしい。
「いや、どこに少女がフレアベアーを狩ってきたなんて話を信じるやつがいるんだよ...」
「それは...そうですけど...」
「はぁ...なあ、これは君が倒したのか?」
ギルマスと呼ばれていた人が話しかけてきた。
「うん」
「まじかぁ...」
「あっでもね!その3人組が私にこのクマ押し付けてきたの!」
「は?」
すると3人組が慌てだす。
「な、何言ってんだ!」
「そんなことするわけないだろ!」
「ふざけるな!ギルマス信じないっすよね!?」
するとギルマスは受付の人に何かを話す。受付の人が奥のドアに入っていく。
「今真偽玉を取りに行ってもらっている」
「「「っ!?」」」
すると3人組がむちゃくちゃに慌てだした。
「ただの子供の戯言ですよ!気にする必要ありません!」
「ただのイタズラですよ!」
「そうです!冒険者の俺達にかまって欲しくて言ってるだけです!」
「じゃあそのフレアベアーはどう説明するんだ?」
「それは...冒険者が倒したのをアイテムボックスを使ってかっさらったんです!きっとそうです!!」
「ふむ...獲物の横取りは重罪だな。それを確かめるためにも真偽玉は必要だからな」
さっきの受付の人がドアを開け、こちらに歩いてきた。手には緑色の水晶があった。
「さて...と。もう一度聞くぞ?これを倒したのはお前か?」
「うん」
ギルマスがその水晶をみるが特に変化はない。
「それじゃ次だ。フレアベアーをこいつらに擦り付けられたのはほんとか?」
「うん」
またギルマスがその水晶をみるが変化はない。
「そうか...おい!こいつらを連れていけ!」
周りにいた冒険者達が3人組を囲みどこかに連れていった。
「あの人たちどうなるの?」
「10年契約の奴隷ってとこだな」
罪を犯すと奴隷になるんだ...覚えとこ。
「とりあえず聞きたいんだが...どうやってこれ倒したんだ?」
変なことを言うと疑われそうだから素直に答えることにした。
「なぐった!」
「殴っただけでフレアベアーの首から上が無くなるわけないだろ!?」
「ほんとだもん!」
真偽玉は何も反応しない。
「まじか...はぁ...まあいい。で、お前は冒険者なのか?」
「ちがう。あっ冒険者登録できる?」
「してないんかよ...おい誰かギルドカードを用意しろ!」
ギルマスは特に私に詳しく聞くことも無く部屋に戻って行った。
ギルドカードをもってきた女の人が登録の仕方を教えてくれた。
「えっと色々書くところあるけど必要なのは名前とパーティ希望かソロ希望かだけだよ」
名前は神楽 るな...っと。ん〜ソロかな。
「はい、できました」
「ソロ...ですか...」
女の人はちょっと複雑そうな顔をしていた。
「ソロだと何か問題があるんですか?」
「あ、いえ。何も問題は無いです。ただ...ソロだと死ぬ確率が高いので...」
「そうなんですね。」
「ほんとにソロでいいんですね?」
「うん」
「分かりました。カード作ってくるのでここでお待ちください」
女の人に言われた通りに待っているとギルマスが真偽玉をもって来た。
「わるい。最後に確認しときたいことがある」
「なんですか?」
「おまえ、種族は人間か?」
「人間です」
ビィィィィイイイイイ...
真偽玉が音を出しながら赤く点滅し始めた。
「......」
ギルマスがじっと見つめてくる。
「に、人間です!」
ビィィィィイイイイイ!!
「......」
「に、人げ『ビィィィッ!ビッビッビィィィィイイイイイ!!』」
この真偽玉煽ってきてない?
「......」
「......に『ビィィィィイイイイイ!ビッビッビビビビィィィイイ!』」
へーほーふーん...おっけ〜この玉ぶっ壊す!
真偽玉を掴み床に叩きつけようとするとギルマスに手を捕まれ止められた。
なっなにぃ...!?魔力放出を全力ではないとはいえ使っているのに腕が動かせない...!?このギルマス...一体何者!?
「はぁぁぁぁあ...」
ギルマスが大きなため息をついて手を離した。
手を離されたので再度床に叩きつけようとすると真偽玉を取り上げられた。
「壊そうとするな!」
「ご、ごめんなさい...」
「にしても...まさかとは思ったが人間じゃなかったとはな...見た目完全に人間なんだがな...」
「もしかして冒険者って人間じゃなかったらなれないんですか...?」
「いや大丈夫だ」
ほっとしているとさっきの女の人がカードらしきものを持ってきた。
「それじゃ俺は仕事に戻るからな」
「あっはい!」
ギルマスが帰っていった。
「えっとこれがギルドカードになります」
見た目は普通のカードで名前や職業などの欄があった。私は名前とソロ希望にチェックがされてるだけだけど...
「それではギルドカードの説明を行います。まず初めにこのカードに魔力を注いでください」
言われた通りに魔力を注いでみる。体内にある何かを注ぐイメージをしてみると簡単に出来た。するとカードがひかり、カードの端っこに星のマークがついた。
「はい。これであなた以外の人が使うことが出来なくなります」
「おぉ〜!あ、魔物の討伐とかってどうなるんですか?」
「このカードにどこでどんな魔物を倒したかは自動で記録されるので大丈夫です」
異世界技術すげ〜!!!
その後色々な説明を受け、宿代を得るために簡単な薬草採取クエを受けた。ちなみに対応してくれた人の名前はイリアって言うらしい。ギルマスの名前はガンツって言うんだって。
早速街から出て草原にいき、鑑定を使って薬草を探した。
「よし、これで20本目!これで依頼完了っと!」
早速冒険者ギルドに戻って報酬を貰い帰ろうとするとイリアさんに呼び止められた。
「どうしたんですか?イリアさん」
「さっきのフレアベアーの換金が出来たよ!」
そう言ってイリアさんはお金の入った袋を渡してくれた。
「ありがとうございます!」
冒険者ギルドを出て今持っているお金を確認したところ金額1枚、銀貨5枚、銅貨20枚だった。さっき売店などを見て硬貨の価値を確認してみたところ最も安いのが鉄貸でだいたい1円で100枚出動画と同じ価値になるみたいだった。
「さて...と、宿はどこかな」
売店で買ったなにかの串焼きを食べながら探しているとそれらしき店を見つけた。入ってみると女の子が受付をしていた。
「いらっしゃいませ!おひとりですか?」
「うん、ひとり」
「何泊されますか?」
「とりあえず2週間で」
「おひとり様で2週間ですね!晩御飯と朝ごはんは付けますか?」
「つける!」
「お風呂はつけますか?」
「うん」
「おひとり様で朝晩付きでお風呂がある部屋を2週間ですね!銀貨2枚になります!」
銀貨2枚を払い部屋の鍵をもらってその日はそのままどこにも行かずに寝た。
――――――――――――――――――――――
鉄貸1枚=1円
銅貨1枚=100円
銀貨1枚=1万円
金貨1枚=100万
白金貨1枚=1億円
こんな感じです。
異世界旅 @yamagamiyamagami0315
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。異世界旅の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます