第50話 悪党の真理

 フェイが退魔士を退けてから、数日が経過した。退魔士を退けてからは自由都市は平和に包まれていた。

 

 さほど大きな事件はなく、ただただ平穏な日々が過ぎていくだけであった。しかし、それはあくまでもフェイにとっては平穏と言う意味。


 彼はいつも修行をしている。強靭な肉体を作り上げるために常軌を逸した訓練を平和であってもやり続けるのだ。

 朝からは素振りをして、汗を流す。



「フェイ様ぁぁあああ!!!!」



 そんな彼に勢いよくモードレッドは両手を広げて突っ込んだ。フェイはそれを避けながら、鬱陶しいと言う顔つきをする。


「うざい」

「そのようなことを仰らず!」



 グイグイフェイに迫るがずっと手で顔を押しのけられる光景がしばらく続いた。


「おい、それより手合わせをしろ」

「勿論ですわ! フェイ様!!」



 フェイは彼女の一番の魅力は戦闘能力の高さと訓練による経験値が一番稼げることだと思っている。彼女は暴力を自身に平気で振るってくるので一番きつい訓練が出来るからだ。



「――行くぞ」



――フェイは彼女に向かって駆けだした……そして、二人の勝敗は……




◆◆



 アリスィアは自由都市を一人で歩いていた。理由はフェイが訓練で倒れてしまったからだ。毎日の恒例行事とも言えるのだが、フェイはモードレッドとの訓練が終わったら大怪我やら気絶やらでベッドの上で寝てしまう。


 彼女そんな彼の看病のために果物などを買いに自由都市内をうろついているのだ。


「私と服買う約束あるのに……全然買い物付き合ってくれないし……」



 ぶつぶつ独り言をしながらフェイに対して文句を彼女は吐き出した。膨れっ面で歩きながら彼女は果物屋で色々と購入して自身の鞄に入れる。


「あとは……」



 きょろきょろ出店を見て回っていると衣服屋が眼に入った。女性専用の店のようで女性下着、スカート、可愛らしい服などが売っている。


「へぇ……うわ、こんなギリギリな下着売ってるの……」

「お客様、こちら女性から物凄い人気の品になっております」

「嘘でしょ……」


 黒色のビキニみたいな下着、隠す所が小さくてほぼ丸見えと言っても良い感じすらしていた。


「大人しい男性もこれで獣になるとか聞いております」

「……普段クールで興味ないみたいな人でも獣になるのかしら?」

「なります」

「なら、買うわ……」



 アリスィアは際どい下着を買った。そして、寝ているフェイの元に帰ろうと道を歩いていると、彼女の前方に女の人に囲まれている長身の男性が眼に入った。


 長身の男性? はイケメンで清潔感もあり逞しいので、そんな人に女性達は声を思わずかけている光景だった。


「いや、ごめんね? 僕も忙しくて」

「いいじゃん、お兄さん。私達と飲みに行こうよ」

「カッコいいお兄さん、あんまり冷たくしないでよー。ちょっと飲むだけだからさー」

「まだ、朝だし、僕はお酒はちょっと」



 長身の男性? は囲まれている。しかし、取り囲む女性たちを男性は跳ねのけて、距離をとり始めた。しかし、釣れない男性に再び女性たちが声をかける。困ったようにしている彼はアリスィアの姿を視界に入れた。


 彼女は興味無さそうにそこを去ろうとしていたが、僅かに同情的な眼でその場を去ろうとしていたので僅かに目立った。


「あー、貴殿はここに居たのか! 久しぶり!」



 長身の男性? は女の子たちをはねのけてアリスィアに向かって走り出した。流石に相手が既に居るとなれば彼に声をかけていた女性達も諦めてその場を離れる。



「いやー助かったよ」

「誰? ってか私に話しかけないでくれる? 勘違いされたら最悪だし」

「あ、貴殿は好きな人が居るのか」

「そうよ……あれ? アンタ……」



 アリスィアは長身の男性を見て違和感に気付いた。歩き方、そして、独特の雰囲気が見た目と合っていない気がしたのだ。



「アンタ……女よね?」

「お、よく分かったね! そうなんだー、僕、きゃぴきゃぴの女の子なの」

「……それにその物凄く悪い目つき……」

「目つきが悪いのは気にしてるから言わないでよー。僕の家って全員目つき悪いの遺伝らしいからさ」



(この娘の、人殺しみたいな悪い目つき鬼ぃちゃんフェイに似ている気がしたけど……気のせいね。もっと本物は怖いし)



「そ……まぁ、どうでもいいわ。そろそろあっち行ってくれる?」

「冷たい! もっと話そうよー。僕あんまり友達いなくてさー」

「ふーん。まぁ、私は話せる人居るからどうでもいいわね」

「いや、話してよ! 僕も友達欲しいんだ! ずっと旅してるから親しい人居ないんだよ!」

「……面倒ね。ギルド行けば仲間とか紹介してくれるわよ」

「いや、僕は君と仲良くなりたい! なんか、仲良くなれそうな気がするから」

「あっそ」

「えー、冷たすぎない? まぁ、初対面だけどさ……あ、そうだ。実は僕、探し人が居るんだ」

「そう、ギルドならあっちにあるからそこで色々聞くといいわ」

「も、もっと会話を広げてよ。実はね、僕は自分の兄を探してるんだ」

「……私と同じ」

「え? 貴殿も?」

「そうともいえるけど……」



 アリスィアは自身と同じで兄を探していると言う長身の女性に僅かにだが、親しみを抱いた。



(私と同じで兄を探してるか……最近はフェイ居るし、どうでもよくなっちゃった感じしてたけど……)



 アリスィアは既にあんまり探す気はないが、嘗ては兄を探していた。そんな自分と彼女は近しい存在と言えるから僅かに心を許したと思っている。しかし、彼女自身の顕在意識ではフェイと彼女の悪い目つきが僅かに似ているから親しみを抱いていた。



「私はそんなに今では探してないわね。前は凄い探さないとって思ってたけど……私には帰る場所あるし」

「そっか」

「で? 兄ってどんな人なの?」

「え? 手伝ってくれるの?」

「手伝いはしないわ。ただ、似てる人が居たら教えてあげるくらいはしてあげる」

「わーい! えっとね、僕の兄はね、優しくて、カッコよくて、魔法が得意? なのかな? 多分得意のはず……あとはね、イケメンで優しくて、誰に対しても手を差し伸べる感じでね。後は……」

「知らないわね」



(もしかして、フェイの事かと思ったけどアイツ優しい感じとか全然出さないしね。優しいは優しいけど、この子が言うイメージとはだいぶずれている気がするわ)



 アリスィアは彼女が語る兄について何も知らないと言う結論をつけた。


「あ、でも、私の知り合いに色々旅をしてたり、聖騎士やってたりしてる人が居るから。聞いてみたら?」

「え!? いいの!?」

「いいわよ。ただ、それが終わったらすぐ帰ってね。私達が居候している家の主……元ロメオの団長のおばあちゃんなんだけど、あんまり騒がしいの嫌いらしいのよ」

「あ、居候しているんだ。しかもロメオって超有名レギオンなのに、凄いね」

「まぁね。知り合いにロメオの現団長のバーバラって人が居るんだけど、未来の私の彼氏がその人に色々恩を売ってるから、流れで家賃無しで住んでるの」

「なにそれ、凄いし羨ましい」



 二人がフェルミの家に入る。すると中には頭に包帯を巻いているフェイが居た。彼はパンや肉を食べて栄養を補給している。


「フェイ、起きてたのね」

「……(もぐもぐタイム)」

「ちょっと、心配かけてごめんなさい位言ったらどうなの? 気絶してさ」

「……俺が気絶しない方が珍しいだろ」

「まぁ、そうだけど」



 アリスィアは溜息を吐きながら台所の方へ入って行くが、アリスィアが連れて来た長身男装女性はフェイを見て、あーっと! 指を指す。


「あー! 貴殿はあの時の!」

「……誰だ、お前は」

「都市ポンドであったでしょ!? ボクだよ!」

「……」


 都市ポンドでフェイと実はあっている彼女。彼女はフェイの事を覚えていたが、フェイはあまり覚えていないようだった。


「知らん」


 フェイは覚えていないようだった。


「いやいや、ほらほらボクの顔をよく見て! 絶対会ったって! こんな顔立ちのいい女の顔忘れるとかないよ!」


 彼女はフェイに顔を近づけるがフェイは未だに虚空を見るような眼で見ているだけだった。一瞬であるが都市ポンドでかなり濃い絡みがあったのに一切覚えていない事が彼女は無性に何故か悔しかった。だから、フェイに物凄い絡みに行ってしまった。


 しかし、それがアリスィアの怒りを買ってしまう。アリスィアは彼女の首元をグイッと引っ張って、小声で冷たく言い放つ、


「ちょっと、私の未来の旦那にちょっかいかけるのやめてくれる……?」

「あ、ごめん。別にそう言う意図はなかったんだけど……」

「分かれば良いのよ。でも、次、私の鬼ぃちゃんにちょっかい出したら……激おこだからね」

「いや、貴殿、怖いよ……。でも、気を付ける……あれ? 鬼ぃちゃん? でも、お兄ちゃん探してるって言ってなかった?」

「お兄ちゃんは探してるけど、鬼ぃちゃんはフェイなのよ」

「……そっか」



(複雑な家庭環境なのかな……?)



「そう言えば、アンタの名前ってなんなの?」

「あ、僕の名前はね……モルゴール」

「ふーん、モルゴールね。覚えたわ。私はアリスィア、そっちの目つき悪いのがフェイよ」

「よろしく!」



 フェイはモルゴールと言われた女の子に手を差し伸べられるが無言でそれを無視して、ご飯を食べ続けた。


「あと、モードレッドと言う子がいるわ」

「……モードレッド?」

「知ってるの?」

「うん。僕のお母さんとお父さんが言ってたから……」



 モルゴールがモードレッドについて何かを語ろうとした時、バンっと家のドアが開いた。モードレッドが所要から帰ってきたのだ。



「フェイ様ー! 起きられてよかったですわー!」

「……」

「あらあら、ワタクシに負けて不貞腐れるフェイ様も可愛いですわー!」


(この人がモードレッドなんだ……)


 モルゴールはモードレッドを見て、自身の父と母に言われていたことを思い出した。それについて彼女に語ろうとした時、モードレッドがアリスィアの方に向いた。


「そう言えば、貴方にギルド職員が用があるらしく探しているそうですわ」

「え? 私に? なにかしら?」



 アリスィアは自身をギルド職員が探していると言われて、何か問題を起こしてしまったのかと不安になった。


「ワタクシは行きませんので、行ってきらして?」

「え、えぇ……一人はちょっと……ねぇ、フェイも一緒に行こう?」

「構わない」

「本当! ま、まぁ、嬉しくはないけど一緒に来て貰おうかしら?」



(なに、この謎の好意と素直になれないプライドのせめぎ合いは……未来の旦那とか言ってたのに……変わってるなこの人)



 フェイに対してツンツンした対応をしている癖に、裏では手を出すなとか牽制をするアリスィアに対して、モルゴールは変わった人判定になった。


(ボクも一緒に行こうかな……アリスィアが誘ってくれたから、ここまで来たけど。彼女が居ないなら居ずらいし……)



「ボクも行ってもいい?」

「……え? いや、別にフェイと二人っきりが良いとか思ってないけど……え? 来るの?」



(地雷踏んだかも。この子、地雷の範囲広すぎない?)



「まぁ、いいわよ。ついて来れば?」

「あ、うん、そうするね」



 アリスィアにモルゴールはついて行くことにした。そして、フェイを合わせて三人はギルドへ向かった。




◆◆


「あ、聖女様!」

「英雄様だ!!」



 アリスィアに対して、その言葉はかけられていた。フェイが居ない間に彼女はこの都市で色々とイベントがあった。本来ならそのイベントで心身ともに疲弊してしまうのだが、モードレッドが裏から色々と動いていたので難なくイベントは消化され、二つ名も授けられた。


 人の為に人事を尽くした彼女の二つ名は聖女英雄プリンセス・ヒーロー。本来のゲームの原作でも彼女にはイベントがあり、エグイ目に遭いながらも生き残り戦い続けていたので同じような二つ名を貰っていた。


 だが、フェイのせいで色々と変わってしまっている。そして、フェイ自身は認知されていない。魔物が進軍したときは誰も狂気で呑まれて記憶障害が残っており、龍との対戦時は丸焦げだったので誰も姿は覚えていない。


 本人もわざわざ自分から語るタイプではないのでフェイについてはさほど、認知されていない。眼が潰れて義眼になった事も一時期話題になったが、フェイは暫くこの都市を離れ聖騎士として活動をしていたので、殆どの者は覚えてすらいない。



「あ! 聖女英雄プリンセス・ヒーローのアリスィアさん! 緊急クエストを受注したいのですが!」

「緊急クエスト?」



 緊急クエスト、冒険者ギルドから冒険者へ、またはレギオンへ。事態に緊急を要するときに行われる制度。


 ある程度の知名度があるアリスィアにはその依頼が来ることがある。



「23階層にフォーレインの滝と言う場所があるのですがそこで正体不明の魔物が発生しているらしいのです。一部冒険者が発見したのですが、逃げる途中で一人がはぐれてしまって未だに帰ってこないと……そこで貴方にならと依頼を」

「……私に……依頼が……分かったわ。受けるわ」



 彼女が承諾をするとギルド職員は急いで緊急クエストの受諾作業に入る。その間にアリスィアは不安そうにフェイの方を見た。


「あ、あの……一緒に来てくれない?」

「元から用があるから行こうと思っていた。お前が案内しろ」

「う、うん! 分かったわ」



 モルゴールはフェイが準備満々に刀を握っていることに気付いた。


(へぇ、アリスィアの為にあんな気の利いた言い回しが出来るなんて……案外、良い人なのかな?)



 本人は主人公イベントだなと思っているが、周りから見るとまぁまぁ、マシに見えていた。


 モルゴールはちょっとフェイが気になったのでついて行くことにした。原作ゲームシナリオでもアリスィアはモルゴールと出会ってこの依頼に行くことになる。唯一の違いとしてはモルゴールは精神的に追い詰められて、廃人のようになってしまっていたアリスィアに放っておけないと思ったからだ。

 

 両者共に兄を探していると言う共通点があり、情が湧いていた。


 しかし、今はフェイと言う男性に純粋な興味をモルゴールは抱いていた


 三人はダンジョンに入り、下に下にと向かって歩いて行く。フェイが魔物を切り刻み、魔術を二人が行使し、順調に行くべきはずであった階層に到着した。



 23階層 フォーレインの滝


 

 ダンジョン内部、そこには大きな滝があって落ちた水が軽い池になっていた。足首くらいまで浸かるほどの水が階層中の地を殆ど張っているような不思議な場所だ。


 

「なんか、不思議な場所ね……」

「フォーレインの滝……始めて来たよ、僕」


 アリスィアとモルゴールが神秘的な景色に圧倒されている。その隣でフェイは左右上下を僅かに見渡した


「……来る」

「え?」



 フェイがそう言ったが……暫く経っても来なかった。その後、謎のモンスターを見つけるためにその階層で待機をする。


 クエスト目的である魔物はどこにも見つからない。そもそも一人を見失ったと言われているがその階層は見晴らしも良く、人が見つからないと言うのも怪しく思えてきた。


 何処までも水平線が続き、木々も一本もない。


「ねぇ、ここで本当に魔物が居て、人が消えてるのかしら……」

「なんだか、僕もそんな気がしてきた……」




 アリスィアが静けさに疑問を抱き、その不安がモルゴールに伝わり感情がリンクしたその時、水面が大きく揺れた。



「な、なにっ?」



 アリスィア達に目掛けて、一人の男性が近づいてくる。バサバサの髪は緑色、体は鋼鉄のように固そうで肩幅も厚い。顔には隠すように仮面をしている。



「……聖女英雄プリンセス・ヒーローだなぁ?」

「……だったら、なによ」

「そうか、そうか。ヒーローか、心地よく、同時に腹が立つ。だが、俺の前に立った、対立だ、悪と正義の対立だぁ!」

「……何言ってるのよ、こいつ」

「分からなくていい、感じればいい。眼の前に悪が現れた、ならばする事は一つだろう!? ヒーロー!?」



 彼女をヒーローと呼ぶ、男。何を言っているのか言葉は理解できた。しかし、その言葉に含まれている意味を彼女達は理解できなかった。


 彼は両手を大きく広げた後、嬉しそうに語りだした。



「やばいわ、コイツ……話が通じない」

「勧善懲悪、悪はいつもやられる。どうしてか。俺は悪に成りたいのに、正義を志す存在として生まれてしまった、それは何故か」



 彼は語りだす。アリスィアとモルゴールは何を言っているのか理解できない。



「だが、そんなことはどうでもいい。俺は悪として、おとぎ話に出てくる悪に成りたいのだ!!! 故にヒーローを、正義を潰すのだ!! 正義を屈服させる!! それこそが俺の流儀ぃぃぃ!!!」




 ――アリスィアに向かって狂気的な目を向ける……


 彼の名はダバーシュ。アーサーやモードレッドと同じ原初の英雄の細胞を埋め込まれて居る青年だった。


 彼は生まれた瞬間から、悪に憧れていた。物語に必ず出てくる悪という概念、しかし、彼の憧れであり、魅力的であった悪は必ず倒されてしまう運命であった。



 悪はこんなにも魅力的であり、悪党は、魔王はカッコいいのに負けてしまう。必ず勝者にはならないのだ。正義に負けてしまう、英雄に負けてしまう。


 そして、それに彼は怒りを覚えていた。だから、彼は歴史に名を残しそうな武の達人を殺しまわった。


 大成をするである英雄の卵を殺しまわった。


 幼い女子供を殺しまわる果てに、彼は『子百の檻』という場所に囚われたのだ。そして、そこでは世界を救う英雄の研究がされており、皮肉な事に彼は過去の英雄の力を無理やりに埋め込まれてしまった。


 彼は怒りに満ちていた。その正義の力を悪に染め、そして、魅力的な悪に、自分が憧れていたように悪を体現するために生きている。



 今もそうなのだ。自由都市に現れた、アリスィアと言う英雄の卵を彼は殺しに来た。その為に依頼を偽造し、彼女に無理に発注をさせた。


 全ては自分が魅力的悪と体現するため……


 ヒーローとヴィラン、魔王と英雄、正義と悪。彼はその常識を変えるためにヒーローアリスィアを殺す。


 本来のイベントならばここでアリスィアと彼が相対するはずであった。彼女の成長イベントのような物で片腕を引き換えにダバーシュに傷を与えられるのだ。


 ある程度、彼女の攻略対象の好感度が高ければ助っ人として参戦をしてくれるキャラも居るのだが、ライン達はさほど接する機会が無かった。


 そして、最終的にモードレッドが乱入してくる。彼女がダバーシュに止めを刺すのだが、そこで衝撃的な事実が明らかになるのだ。

 

 だったが、それはゲームの話だ。


 ダバーシュが彼女達に言っている言葉。それを唯一、誰よりも理解できている存在が居た。


「なるほどな……言いたいことは大体わかった」

「「え?」」


 フェイは理解し、そして……その先を見ていた。悟っていた。彼は自然に刀を抜いて、彼女達の前に立った。



「悪を語る者よ。お前の語る理想も分からなくはない……が少々浅いな」

「……なにぃ?」

「お前は悪という存在の真理が分かっていない。悪がなぜ悪たるのか、なぜ、高尚にお前自身が見えていたのか。お前自身が理解を己に落とし込めていない。その不完全……俺が埋めてやる」

「……ヒーローの前座には丁度いいか。ヒーローは遅れてくるからなぁ? 最初に倒しておくかぁ?」



 ケタケタ笑うダバーシュと、主人公と勘違いした踏み台が激突する。地に満たしている水面が揺れる。フェイの刀と彼の拳、威力はほぼ互角であった。



「きゃッ」

「なにこれ!? 二人共化け物」

「……そうよ、でもね……鬼ぃちゃんの方が……」



 アリスィアとモルゴールを二人の激突で起こった突風が襲う。強風によって眼が開けない二人だが、アリスィアは僅かに開いた眼でフェイを見て、勝ってくれると信じていた。



「やるなぁ! お前……だけどなぁ? 俺には原初の力があるんだよ!!」



 ダバーシュの周りを光が覆っていた。美しく、だがどこか狂気的に見える。黄金色のオーラに包まれた拳がフェイに向いた。


「喜べ! 喜べよ!! オラオラ! 悪の踏み台に成れるんだ!! 世界に知らしめるための土台にしてやるよ!!」

「……」



 悪を知らしめる、悪を語る、悪になる。彼はそれしか頭にない。 悪になったいるつもりの彼は無慈悲に意味もなくフェイに拳を打ち付ける。


 光と言う概念の付与、力の上限は上がっており、更に高熱のエネルギーが内包している拳は彼の肩付近に叩きつけられる。


 フェイの方の服は弾け飛んで、殴られエネルギーによる崩壊で肩の肉の一部が抉れた。赤黒く、痛々しい肩になって、モルゴールは思わず目を閉じる。


 しかし、彼女の耳には何事もないように剣戟の音が聞こえるのだ。


「え?」


 ゆっくりと眼を開ける。そこには本来なら使えない、使おうとすら思わない大怪我をした肩を無理やりに動かし剣を振っていた。


 顔は無表情で痛みを感じさせないのに、体は痛々しい。しかし、眼は死んでおらず螺旋のように底が見えない狂気を垣間見た気がした。



(ちょっと、待って……あれ、本当に人間……?)



 ダバーシュと言う狂人に戦慄をしていた彼女だった。


 しかし、それはあくまでも自身が知りうる人間という枠組みにおいての理解不能。だが、フェイは気持ち悪い程に、狂っているような気がした。


 理解できずに、不快感を感じたわけじゃない。モルゴールはフェイの姿が理解できないが『美しく』見えた。そして、『怖く』も見えた。


「……綺麗」

「は? アンタ、鬼ぃちゃんが傷ついてるのに――」

「――違うの、怪我とかじゃなくて……昔、世界一美しい滝を見たことがあったの。そこは本当に美しくて、そこだけ別世界で、神秘的だったんだ……その時に思ったの」



「――ここが凄く怖いって」



 モルゴールが何を言っているのか、最初は分からないアリスィアだったが徐々に理解をしていく自分が居ることに気付いた。



「本当に神秘的で狂ったほどに美しいものってさ……怖く見えちゃんだよ」

「……ちょっと分かるわ」



 フェイは真っすぐなのだ。誰よりも真っすぐで折れない、折ることが出来ない。挫折をさせられない。挫けることもしない。



「おいおい、しつこいなぁ! しつこい奴は嫌われるんだぞ!!」


 フェイを殴る、蹴る、フェイは血を流した、義眼が潰れた。足が折れた、腕がしびれて来た、肩の肉が抉れた。


「……こい、悪党。教えてやると言ったはずだ……悪の真理を」

「……語るねぇ!!!」



 再び光の拳が迫るがフェイはそれを避けつつ、カウンターを腹に叩き込む。綺麗に鳩尾に拳が入って、ダバーシュは胃液が逆流した。


「ごえッ」

「……既にお前の動きは読み切れる。微調整に僅かに時間を喰ったがな」



 アーサー、モードレッド、原初の英雄の細胞が体にある者は知らず知らずのうちに動きが『原初の英雄アーサー』に近くなる。僅かに個人差があるが基本的には近い。


 つまり、僅かな微調整が済めば後は単純な作業と同意義だった。



「!!!!! お前、! 俺の拳を完璧にッ、ごっ!?」



 今度はフェイの右の回し蹴りが顔面に決まった。先読みを使って、既に彼は攻撃を未来に置いておいたのだ。


 その足蹴りを喰らって、ダバーシュは戦慄をし、同時に怒りを覚える。


「……こんな急に完璧に見切れる訳がないッ! 俺は悪、最強の悪にッなり、世界の頂点に立つッ、悪を布教するんだッ!!」

「……それが違うと言うのが分からないのか……?」

「……なにッ?」

「悪とは、倒されるからこそ悪だ。英雄譚に登場する悪にどうして親しみを抱く者が出てしまうのか。その答えは一つ……倒されるからだ。最後には片づけられるからだ」

「……」

「倒されない悪はただの人殺しだ。人が娯楽を悪に感じるのは、悪が実際に自分の前に居ないからだ。災害が目の前に起こらないからだ。だが、倒され、紙面に記され、英雄譚となれば、ただの人殺しが魅力的な悪になる」



 いつもはあまり話さない彼が雄弁に語る。その語りの中に彼の世界への認識が漏れ出しているような気がアリスィアにはした。


「――倒されることで人殺しは悪になる……喜べ、人殺し。お前は俺に倒されることで理想を手に入れる」

「吠えたなぁ!!! 愚者が!!! この俺に対して!! 自分が正義のつもりか!!!」

「正義と悪などと言う崇高な戦いはここにはない。ただの剣士と人殺しの戦いだ」

「――ッ!!!」



 フェイの口が三日月のように僅かに上がる。ボロボロの体を驚異的な意志で動かして、彼の頬に拳を叩きつける。


「くっ……お前がッ」

「本気で来い、でなければこの戦いに真理は得られない」

「正義を語る勇気もないッ! そんな小童に俺が……」



 ダバーシュに焦りが生まれていた。フェイは縦横無尽に走って、何度も殴り続けてくる。捌きによる防御も、狂気による攻撃も血に染まった彼から出る、それは見る者を魅了し、恐怖させる。


「――お前の理想は俺の拳で叶えられる」

「――ひ、ひィ!?」



 上、というより考え方の次元が違う気がした。今まで考えを理解できるものすら居なかったのに、彼はそれを理解し、更には己よりも先の真理を得ていた。そして、そんな彼は既に眼の前の自分から興味を失っていた。



 戦い続けて、真理を得たのに。更に上、その矜持による行動をしている類まれなる頭のネジが吹き飛んでいる存在に、ダバーシュは恐怖をして拳で沈められる。


 決着はついた。ダバーシュは水面に沈んで立ち上がらない。そして、フェイはそう言えばと聞こえないはずの彼に話しかける。


「聞こえないと思うが……一つ言い忘れていた、ただの剣士と人殺しの戦い……だが、それを後に……人は英雄譚と呼ぶ」



 それだけ言って、勝利を手に収めたフェイも気絶をした。




◆◆


 最近退魔士とか言う奴らとやりあったけど、そこからあんまりイベントがないなぁと思っていたら……。



 謎の魔物が出ていると言う話が……あれ? なんでその話が俺じゃなくて、アリスィアにされるんだ……?


 おいおいギルド職員さん、主人公はその子じゃなくて俺ですよ? そんな面白そうなイベントは俺にしてくれないと……


 あれ? なんで俺には言われないんだ? 俺主人公なのに……


 え? 主人公なのに……主人公だよね? なんてな!! 不安がることはない、俺が主人公なのは既にこれまでのイベントで分かっている


 ちょっと手違いがあったのか? シナリオがここだけ矛盾があるみたいな感じなのかもしれない!!


 しょうがないから、アリスィアについて行くか


「えへへ、いつもフェイは私の為に来てくれるのね……アンタ、どんだけ私の事が好きなのよッ。もう!」


 ちょっと何を言っているのかよく分からない。別にそんな好き勝手訳でもないし……。まぁ、嫌いでも無いけどねさ。


 あ、そう言えば知らないうちに新キャラ出たんやね。身長が高くて目つきの悪い子……前にどっかで会ったらしいけど……うーん、確かに見覚えあるな。


 それより、モルゴールだっけ? 君目つき悪いね、子供に嫌われてそうだなー



 ダンジョンに潜って下に下にと降りていく。すると、滝があって水が張っている階層に到着した。


 綺麗だな、こんな景色は見たことがない……事はないな。対戦格闘ゲームの背景ってこんな感じだった気がするし。


 戦闘が始まりそうな気配がプンプンする場所だが……


 あ! 謎の鉄仮面男が飛び出してきた!!


 魔物が来ると思っていたんだけど、人か。どっちでもいいけどね。相手はどうやら悪を自称している変わっている奴だ。


 悪党の癖に主役になりたいみたいなことを言ってるけど、それは無理じゃね? 

 

 俺も悪役を好きになったりすることはあるけど、それって倒されるからだし。犯罪してる奴が最終的に生き残ったりするのはね?


 それに現実で悪党に憧れる奴を創ろうってのは無理だと思うよ。悪役好きな奴は沢山居るけど、それって自分からすごい遠い場所に居るからだし。


 現実に居たら悪はただの犯罪者だからね。でも、大丈夫、安心していいよ。俺と言う主人公に倒されることによって、悪は完成する。悪は魅力的な敵となるんだ。


 だから、教えてあげないと!! 主人公である俺が頂点、英雄であり全てが俺が勝利するための布石であると言う事をさ。


 悪は俺の踏み台よ。肩とか抉られたり、メッチャ殴られたが……まぁ、俺が殴られたり、肩が抉られない方が不安になるしな。


 いつも通り、勝ちながら流れるように俺は気絶をする。


 ふぇいは めのまえが まっくらになった!!



◆◆



 事の顛末は衝撃的だった。突如現れたモードレッドが気絶をしているダバーシュに光の魔術を展開し、塵すら残さず殺した。


 フェイが勝利し、ダバーシュは戦えない状態に彼女は止めを刺したのだ。そして、その後、ウキウキの笑顔でフェイを運んでダンジョンからフェルミの家に戻る。


 そして、気絶をしている彼の手当てを済ませた。その治療途中でフェイは目覚めることになる。


「全く、アンタは無理しすぎなのよ」

「……そんなことはない」

「ある! 怪我は私が殆ど治してあげたけど……一部はまだ残ってるし、折れてた部分はまだ少し無理に動かしてもダメよ! 勝手に動かないようにワタシが腕を掴んでるから!」



 アリスィアに念を刺されて、勝手に動くならと腕もガッチリとホールドをされてはフェイも動けない。物凄く不機嫌そうな顔で振りほどこうともするがアリスィアも意地になってずっと掴んだまま。


「凄い汚れてるから、お風呂行くわよ」

「……」

「不機嫌な顔してもダメ、行くの!」



 フェイは怪我が治ったが、一部治りきっていない部分があり無理に力で押されると逆らえず運ばれてしまう。


「フェイ様ー、ワタクシもご一緒にー!」


 モードレッドも一緒に二人について行く。取り残されたモルゴールはどうしていいのか分からず、オロオロしてしまう。


「入って来な。あたしは構わないよ」

「え、あ、ど、どうも」



 家の主のフェルミに勧められるままに彼女も一緒に向かう。フェルミの家は凄く大きい豪邸のような一軒家だ。お風呂は露天風呂でかなり大きい。


 脱衣所で服を脱ぐと彼等は風呂に入る。風呂に入り、体を一通り洗うと湯船につかった。


「モードレッド、アンタ……最初から隠れてたのね」

「あの悪童はワタクシが追っていた相手ですの。まぁ、ワタクシの実力にビビッて隠れていたのでしょうけど……」

「だから、私達とはぐれたふりをしてたって事?」

「アイツは、悪を語り勇敢な戦士、英雄の器、そう言った存在に近い者達を狙っていましたから」

「私の二つ名とか、色々有名だから……狙ってきたのね……」

「まぁ、本当なら姿を現した直後に殺そうと思っていたのに……フェイ様が余りにカッコよすぎて見入ってしまっていましたの!」

「あ、そう。見てたんなら最初から、アンタが倒しなさいよ」

「ふふふ、それは無理というモノ。まぁ、フェイ様が勝つのは分かっていましたし」

「負けたらどうするのよ」

「それはあり得ませんわ。フェイ様はワタクシにも勝ちましたし」

「はぁ!? あ、アンタに!?」

「星元無しの純粋な勝負なら……ワタクシの実力に近いですわ。まぁ、フェイ様の場合、原初の力を随分と理解しているようで経験に基づく特攻、未来視のようなことが出来ると言うのが加味されておりますが」

「……マジ? フェイ、アンタ相変わらず人間やめてるわね」



 隣にいるフェイに向かってアリスィアは人間じゃないと言いたげな眼を向ける。フェイは特に何も言わずに無言で眼を閉じて湯につかるだけだ。


「そう言えば、貴方は誰ですの?」

「え!? 今更!? 僕はモルゴール! 何回か言ったよね!?」

「さぁ? 覚えていませんわ」

「覚えていてよ! モードレッド・アインシュタインさん!?」

「……あら、ワタクシの家名を知っていらしているとは」

「知ってるよ」



 モードレッド・。家名を言ったことは一度たりとも無いのに、知らない人物にそう言われると流石の彼女も少し興味がわいた。


「ワタクシの元家名は既になくなっているはずですが、よくご存じでしたわね」

「そう言えば、アンタって元は貴族だったのよね。フェルミさんが一時期使用人してたんだっけ」

「そうですわ。それで、モルゴール様はどうして、ワタクシの名前を?」

「僕も貴族なんだ。元だけどね。それで、僕は兄を探して旅をしているんだけど……その兄の許嫁の名前が……モードレッド・アインシュタインなんだ」

「あら、そうでしたのね。まぁ、ワタクシはフェイ様と添い遂げるので許嫁云々はどうでもいいですが……」

「僕の家とアインシュタインの家、二つの家の両親同士が仲が良くて、将来は娘と息子を結婚させようって言ってたらしい」

「へぇー、そうなのね。アンタ、結婚すればいいじゃない」

「ワタクシはフェイ様が居るので無理ですわー」

「そうね、アンタならそう言うわよね。それに兄が行方不明なんでしょ? モードレッドアンタ世界を見て回ってるんだから、何か答えたげないさよ。元許嫁なんだし」

「フェイ様の前でそう言う話は控えて欲しいですわ。許嫁とか、フェイ様がワタクシに嫉妬したらどうしますの!」

「フェイはアンタに嫉妬とかしないでしょ」



 モードレッドは無言のフェイに絡みつきながら話を聞いていた。仕方ないのでモルゴールに色々と答えてあげようと彼女に目を向ける。


「えっとね。多分だけど、僕の兄は凄くカッコいい。眼つきも多分悪い、僕が男装をしてるのは男性から声をかけられないようにって言う両親の頼みもあるんだけど。血の通った兄妹から男装すれば兄を見つけやすいって言う理由もあるんだ」

「なるほどね、アンタの男装姿に似ている人が居れば、もしかしたらって言う可能性も出てくるって訳ね」

「ふむー、でも申し訳ありませんが、基本的にそこら辺の凡人を一々覚えておりませんの」

「あ、そうなんだ……じゃあ、僕の家は代々凄い貴族の家で魔術が得意な一家なんだ。魔術が得意な人とかいないかな? 知り合いとかで」

「さぁ、ワタクシより弱い魔術使いしかおりませんし」

「そ、そっか……」

「なんか可哀そうだから、フェイも答えてあげてよ。聖騎士だし、あっちこっち行ってるんでしょ」


 フェイが話を振られて、ようやく目を開けた。鋭く、吊り上がった眼がモルゴールを射貫く。


「知らん、そんな男は」

「貴殿は柄が悪いな。会った時から知っていたけど……あと、目つき凄く悪いから女の子に嫌われるかもよ。そういう態度ずっととってると」

「興味ないな」

「あ、そう」

「フェイ様はワタクシに好かれてますのでダイジョブですわー」

「アンタはそろそろ、フェイから離れなさいよ……そう言えばフェイとモルゴールの目つきの悪さは似てるのかしら?」

「僕自身もそう思った……けど、僕の兄だからもっと優しくて、天使みたいな人に決まってるよ。それに魔術が得意な人だと思うし。それにこんなに僕も目つきは悪くないよ」

「フェイ様は魔術はからっきしですわ。でもそれを補って余りある才能が沢山ありますの! だから、ワタクシ好きですわー」



 ギューッとフェイに抱き着く彼女。タオルを巻いているがほぼ裸体の彼女に体を当てられて、アタフタする……という事はない。しかし、アリスィアは嫉妬で歯軋りをしていた。




「まぁ、僕の兄探しがこんな簡単に終わる訳ないか……あー、どこに居るんだろ。僕のお兄様は……ねぇ、貴殿フェイは聖騎士なんでしょ? もっといない? こう、僕みたいな美形と言うか」

「知らんな。興味もない」

「……うぅ、そんな冷たくしなくても」

「……知らんが……何かあれば独り言は言うかもな」

「……あ、そ、そう?」


(意外と……優しい? 戦闘は化け物みたいな人でも、優しい一面も持ってるみたいな感じかな?)


「はぁ、しょうがいなから、私も探してあげるわ」

「ほ、本当か!? アリスィア、やはり僕と貴殿は通じ合うものがある!」

「うん、いいわよ。でもね――」


 アリスィアはニコニコ笑顔を浮かべながら、モルゴールの耳元で小さな声でこういった。


「――鬼ぃちゃんに手出したら、マジでぶっ飛ばすからね」

「あ、はい。しません」



 ニコニコ美人の笑顔でもこんなに怖い事ってあるのかと、モルゴールは戦慄した。はぁと下を向いて溜息を吐き、その後目線を上げるとフェイの姿が目に入った。



 体中に異様に傷があり、だが、恐ろしい程に鍛え上げられている肉体。腕の筋肉も凄いが極太ではない。細身のようだが力が内包しているのがよく分かった。


 胸板も凄く熱く鍛えられている。



(初めて見た……年頃の異性の体ってッ……こ、こんな感じ、なのかな? 触ったら、どんな感触なんだろう……)



「フェイ様ー、相変わらず体中カチコチですわねー。鍛え方がやはり違いますわー。ワタクシとは全く別の体で興奮しますわ!」

「黙れ、あと離れろ」



(や、やっぱり女性の体とは全然違うんだろうな……ちょっとだけなら触ってもいいかな……?)




(あとで、頼んでみよう)













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