第24話 永遠機関

 とある場所に永遠を求める者が居た。最初は無垢でバカげた願いだった。そんなことは不可能で出来るはずはない。誰もが不可能だと笑う。


 しかし、それを願う者が次第に数を増やし、異なる目的であるが利害が一致した者が歩み寄り、いつしか大きな組織として永遠を求めるようになる。不老不死と言い変えても良いかもしれない。生命の理の範疇から外れたその目的。


 誰もが死ぬのは怖い。だが、それを簡単に成し遂げられる訳が無い。真っ当な方法で実現できるわけがなかった。


 実験が必要だった。新たな神秘の形態が必要であった。それを一体どうやって確立するのか。簡単だ。現在の生命たちで道を切り開くだけ。



 そこに犠牲の枠があるのは当たり前だった。いくら犠牲を払ってでも構わない外道。


 ある場所に三人の姉妹が居た。優しい母と一緒に暮らしていた。いつかは三人で仲良く花屋を開くのが夢であった。そんな少女たち三人の父は研究者であった。



 熱心に生命の神秘を研究してはいたが、特に可笑しなことは無かった。だが、生活が一変した。



 三人は永遠を求める為の道具になった。痛みが支配をしていた。感情が欠落をしていった。自分たち以外にも子供は居て、研究者のような人も多数存在していた。


 三人の母は助手として働き、父に従い何も言わなかった。痛みが襲う毎日、一体どれほど味わったのか分からなくなるほどの痛みを味わった。


 三人の母は恐怖でずっと娘を救うことが出来なかった。見捨てられる毎日であった。しかし、転機があった。母が三人を逃がしたのだ。


 そこから、母がどうなったのかは知らない。だがきっと。三人はそれを知っていた。


 三姉妹の長女には恨みが湧いていた。二人の妹が残虐な目に遭って、そして、怒りこそあるが優しかった母も殺したであろう父に。


 妹二人にはそんな感情すら残ってはいなかった。自由を得ただけでもと感謝していた。


 確かにと長女は思う。大切な妹が残っているのならそれでいいかもしれない。だがそれだけでは満足できない怒りが……





■◆



 新種のダンジョン、その近くの村に一同は滞在していた。その理由はたった一つ。とある聖騎士が大怪我をして出血多量で倒れてしまったためにその応急処置の為だ。



「ねぇ、先生。そいつ大丈夫なの」

「大丈夫だろう。幸い命に別状はない」

「……そう」




 簡易なベッドの上にフェイが静かに瞳を閉じていた。死人のように生気が無いようにも見えるがしっかりと生きている。アルファ、マルマル、ベータ、ガンマ、カマセもフェイを見ている。



 思い出す、あの猛々しい姿。記憶に焼き付いて離れない死闘。あれほどの騎士が身近にいた驚き、様々な感情が交差していた。


「まぁ、大丈夫なんやろ? 分かってたけどな。ここで死ぬような男ちゃうわ」

「そうだな。僕様はちょっと昼食取ってくる」

「ワイも行くわ。これ以上此処で辛気臭い顔してても何の得にもならへんしな」



そう言ってエセとカマセは部屋を出て行った。フェイがここで死ぬはずはない。アイツならば大丈夫だろうと確信をしているようであった。



「ま、取りあえず僕も一旦出ようかな。ここを用意してくれた村の方達にお礼とかも必要だしね。フェイが目覚めるまではこの村に居る予定だから昼食とか済ませたりしておいてくれよ」



マルマルも部屋から出て行った、残されたのは三人の少女達。ベータがじっと未だ起きないフェイを見つめている。



「どうしたの?」

「……!」



ベータが自身を指さして何かを訴える。数秒経過する。アルファが首を傾げ、デルタも答えが出ずに唸る。ベータは次にガンマを指さし、そしてアルファも指を指した。


そして、再びフェイを指さす。アルファがその行為の一連でベータの言いたいことに気が付いた。



「……同じって言いたいの?」

「……ッ」



ベータが一度頷いた。ガンマもそこでようやくハッとする。あり得ないと彼女は口を手で覆う。


「あり得ないのだ……」

「いや、ベータの言う通りかもしれないわね。コイツも私達と同じの被験者、もしくはその関係者……。そういえば言ってたわね。アイツ、完璧な魂が永遠のカギの一つだって」

「で、でも」

「でも、普通じゃなかったわよね? 実力は剣の腕が眼を引くくらいだけど……異様な精神力、完璧と言っていい程に淀みが無かった。死と言う恐怖の超越、極限を超えようとする狂気が混ざり合っているような混沌……あんな精神力を持つ人間が自然発生するかと言われたら確率は低いわね」

「い、居なかったのだ。あそこには、こ、この人」

「あそこだけが研究所じゃないって可能性あるわ。単純に気付かなかったとか……まぁ、本当に自然発生の可能性も無きにしも非ずね……。コイツ、暫く見張るわ。関係者だったら私が対処する」



 そう言ってアルファは眼を細める。フェイが一体何者なのか。そして、


(あの時感じた、狂気……相手を刺し違えてでも殺そうとする覚悟。あれが、もしかしたら私に足りない……暫くこいつを観察しましょう。そして、見極める)



 アルファはある意味ではフェイに釘付けだった。恨みを晴らすため、自身の復讐の確率を少しでも上げる為、全てに彼女は気を配っていた。



(復讐の道に人は完全に堕ちると……もしかしたら、自分を顧みずに成しえるために力を求める、コイツみたいになるのかもしれないわね)



 あの姿に彼女は畏怖をした。だが同時に自身の未来を見た気がした。何もかも捨てて、命を投げうって、孤独になって、誰からも理解できない存在になるのかもと。


 彼女の勘は間違ってはいない。きっと、彼女が完全に復讐の道に落ちた時、もう誰も理解をする者は居ない。誰も止められない存在になるのだから。


 



(そう言えば、行きはコイツが一番ましな異性とか思ったけど、一番ヤバい奴だとは思わなかったわね……)



 アルファは自身の観察力の無さに少しだけ、溜息を吐いた。



■◆



 フェイが目覚めた。あれほどの重症であったのに恐るべき回復力であると感心をされ、帰らなくてはならないフェイ達は村を出る。村で買ったハムサンドを歩きながらフェイは食べる。


「なぁ、フェイ。ダイジョブなんか?」

「何がだ?」

「なにって、傷や傷。ダイジョブなのは知っとるで? ただ、一応心配しとるんや」

「あれくらい、必要経費だ」

「何の?」

「……それを話したところで意味はない。俺にしか分からない魂の叫びだ」

「ふーん」



 どこか虚空を見て、フェイは答える。そのままハムサンドを食べる。そんなフェイをアルファは怪しむような視線を向けていた。



「そう言えば、フェイは自由都市って知っとるか?」

「僕様は知ってるぞ!」

「いや、お前に聞いてないわ」

「……あまり聞かんな」

「世界最大級の一つであるダンジョンがある場所や。レギオンって派閥とかあって、色々と面白い都市らしいで、カジノとか、剣術大会とか」

「……そうか」

「グレンとフブキとか言う同期に聞いたんやけどあそこは血の気が多い奴が多いらしいで。一応治安は良いらしいけど」

「ダンジョンか……いずれ向かうか」

「お、ええやんけ。ただ、聖騎士の中には冒険者なんて訓練とか苦労せずに簡単になれるから無法者とか言って馬鹿にする奴おるからな。聖騎士をあまり良く思わん冒険者とか居るみたいやで、気を付けるんやな」

「……誰でもなれるか」

「ワイらも全員合格って言われたのにな。まぁ、仮入団の期間とはあったけど、冒険者はそう言うの無いみたいやし。きつい訓練した俺達の方が強いんやで! って言いたい奴がおるみたいやね」

「……下らんな」

「まぁ、価値観の問題なんやろうな。フェイみたいな奴は他にはエルフの王国とかも良いと思うで、あそこも世界最大級のダンジョン、奥底には伝説の武具が眠っているとか」

「……そうか」



フェイはあまり口数は多くない。それに興味がない事に反応はしない。フェイが僅かに反応をすると言う事は彼の何かを刺激するモノがエセの話にあったと言う事だ。



「僕様的に、ダンジョンに言って一攫千金を狙いたくもある!」

「あほ。お前みたいなのが出来るかい。冒険者も楽な職業ちゃうぞ」

「いや、僕様は成功できる気がする。カジノで」

「カジノって……借金とかできるで」

「借金が出来てもギャンブルで返せば問題ない」

「ギャンブラーの鑑か」




 フェイの興味が一切消えた。最早二人の会話はどうでも良いと言う事なのだろう。フェイはハムサンドを食べ終えて、冷ややかな顔で先頭を歩く。夕暮れで辺りは赤く照らされている。


 先頭を歩く彼の背は、惹きつける魅力があった。



 王都に到着をしたら一同は解散をする。フェイは孤児院ではなく、とある場所に歩みを進める。そんなフェイの後を付ける影が三つ。


「ちょっと、アンタ達はいいのよ」

「……!!」

「が、ガンマはアルファを一人にしたくないのだ」

「も、もう……まぁ、いいわ。気付かれないようにね」



 ベータが体の前でバッテンの文字を腕で描く、ガンマも気になってついてくるのでアルファは溜息をついて、二人の動向を認めた。フェイは一人、夕日によって赤く染まった王都を歩いて行く。一体どこに向かっているのか。三人は疑問に思っていた。



一方、そのころ、同時刻、同場所、そこにジャイアントパンダの影あり。



「あ、フェイ」

「え? 何処に居るんだ?」

「ほら、あそこ」



 アーサーと一緒に歩いていたボウラン。二人は同任務を終えて先ほど帰還をしたばかりであった。


 アーサーが指を指した先にはフェイの姿があった。


「あ、確かに居るな。アイツ、こんな時間になにやってたんだ?」

「折角だし、声かけようかな」

「夕食一緒に行くか!」

「うん……あれ?」

「どうした? 早く夕食誘おうぜ」

「誰かいる」

「ん?」

「ほら、あれ」

「……誰だあれ?」



フェイの後ろには紫の髪が綺麗な三人の少女が後を付けていた。


「……大変、フェイがストーカー被害に遭ってる。守ってあげなくちゃ」

「いや、でも、偶然ってことも」

「ううん。きっとフェイに何か悪い事しようとしてる。尾行をして護衛をする」

「え、それってストーカーじゃ」

「違うよ。守る為に尾行をするのは護衛って言うから」

「そ、そうか? アタシはあんまり知らないって言うか」

「ボウランは15歳、ワタシは17歳、ワタシの方が二歳年上、だからワタシの方が賢い。言う事を聞くべき、年長者の言う事聞いた方が良い、絶対聞くべき、フェイはストーカーされてて大変だから助けるべき」

「た、確かに……そうともいえるかも……?」

「助けるべき」

「そ、そうだよな! 助けないといけないのよな!」


 ピュアボウランのピュアに漬け込んだ、洗脳アーサーによって二人はフェイを護衛を勝手に非公認ですることになる。



 アーサーとボウランはこっそりアルファたちを尾行する。そして、そんなアーサーを尾行をしていたサジント。



(なにやってんだ。アイツら)



 ただそれだけが彼の感想であった。




■◆



 王都にとある鍛冶師が居る。拘りが強く、認めた者にしか剣を与えない頑固者。ガンテツと呼ばれている熟年の鍛冶師だ。店に名前はなく、殆どの者が門前払いをくらうのでそこに行く者は殆どいない。


 気付けば客など殆どいない。


 錆びれた小屋のような内装。あらゆる武具が一度も宿主を見つけることはなく、ただ眠っているその場所。


 誰も来なければ、誰も求めなくなってしまった鍛冶屋。


 ガンテツには悲しみと憐れみがあった。この時代に自身が心の奥底から剣を託したいと言える若者は居ない。幼い時から英雄の武具を作るのが夢であり、それだけに魂を注いだ。


 気付けば腕利きの鍛冶師に成ってはいたが、彼が求めるような武器が作れなくなっていた。魂を注いで剣を託したいと思える存在はいずこに。


 求めてはいる、店はいつも開いている。だが、誰も来ない。待ち人はこない。



(今日も、なしか)



 求めて期待をし続けた彼の元に、今日も誰も来なかった。白髪で黒目、頑固な精神を持つ老人鍛冶師など時代遅れかと哀れに思い自身へ嘲笑を投げかける。


 

 夜が近づき、店を閉めるかと思ったその時……誰かがそこへ足を踏み入れる。黒髪に黒い眼。鋭い眼がように見えた。黙ってただ、その男は剣を見る。


「……」

「……」



(なんだ、この男は……)



 いつもならガンテツが見定めるというのに、全くの逆であった。眼を開いてただ、見極める。そして、はぁ、とため息を溢した。



(――ッ。コイツ!)



 その溜息に彼のプライドは深く傷ついた。いや、許せなかった。全く知らない聖騎士、覇気はあるがまだまだ若いひよっこ。そんな相手に長年鍛冶師として腕を磨いていた男が落胆をされる。侮辱であるように思えた。



 男はそのまま店を去る。



「待て。餓鬼」

「……なんだ?」



 背を向けかけていた男が再びガンテツに眼を向ける。人と呼ぶには余りにその眼は異様だった。思わずごくりと唾を飲む。早く済ませろ、お前に用はないとでも言うようにその男は眼力を上げる。



「なんだ? だと、どういうつもりだ」

「……ここに用はない。お門違いだった、ただ、それだけだ」



 熱量が全く違った。ガンテツにとって最大級の侮辱であったがその男にとっては息をするように当然の行動。『お門違いであった』、自身と言う存在にここの門はあまりに小さい、つまり『俺に見合う剣はここにはない』そう言いたげな眼であった。



 その男は、黙って再び背を向ける。



「また来る。その時に剣を買おう」

「ッ」



(コイツ、その時までに俺に見合う剣を作っておけとでもいうつもりか!?)



怒り、それよりも驚愕とでも言うべきか。ここまで自身を下に見られたことは無かった。ここを知る者は少なくなっている。だが、少し見ればここの置いてある剣がいかに凄いかは剣士であれば分かるはずだ。


だが、それでも足りない。俺に見合わない。だから、作って置け。


傲慢、その言葉が頭の中に埋まる。あまりに分不相応、強欲であるその態度。許しがたい。一生門前払いをしてもいい程であるとガンテツは感じる。


感じたはずであったのに、不思議と剣を打ってみたいと思った。ここまで大きな口を切った馬鹿は一人も居なかったからだ。


そこにもう、黒の男は居ない。


いずれ来る再会に備えて、竈に再び炎が上がった。




■◆



 んー、俺は目覚めた。話を聞くと出血多量で死にかけていたらしい。へぇー、一歩間違えば死んでたんだー、へぇー、ふーん、かなりの量が出てたんだー、へぇー。


――それよりも気になることがある。


 ベッドの寝心地が悪い!!


 何処なのか知らないけどさ。ここのベッドちょっと感触悪いな。エクター先生の保健室の方が絶対最高だった。


 出血多量で起きた時に寝心地が悪いベッドだとちょっとね。いや別に、介抱してくれた人に文句とは言わないぜ? ただ、ちょっとベッドがなぁ。


 出血多量の後に目覚めるならふかふかのベッドが個人的には良いなって……介抱してくれた人に失礼だから口には出さないけど。


まぁ、起きたわけだし帰りますか。そう言えばあの一戦はかなり最高だったな。右足に刺さって……ん?


 あれ? そう言えばこの間ユルル師匠が膝枕を……膝枕、俺が頭を乗せた場所って、今回刺されたところでは……? 


 いや、これはヤバいでしょって話だよね? もうこれはユルル師匠のパンドラの箱を開けてしまったも当然だよねってこと。


 ユルル師匠はいつも、伏線を張ってくれている。いや、これはもう、ヤバいでしょって話だよね? もうこれは、ユルル師匠のパンドラの箱を開けちゃったも当然だよね?


 必ず伏線を張ってくれるって話だよねって事。


 そう、今回の敵は金貨の中に隠れていた……ここで思い出すのはあのセリフだよね?


 『はい。だから、手で隠しちゃいます!』


 これは、膝枕中にユルル師匠が言ったセリフだよね? つまり、眼を隠す→眼に頼るな、眼で見えている事だけが全てではない! 眼だけでは対応できないイベントがある →見えないところに骸骨のボス。


 これはもう、ヤバいでしょ、ユルル師匠の伏線は見えない場所にも張られてしまったと言う事の証明だよねってこと。


 信じるか信じないかは俺次第。信じます! ユルル師匠!!


 いや、流石だわ。もしかして、アーサーのせいでイベントの重要性薄れたけど、膝枕って恋愛イベントかなって思ってたらガチガチの伏線かよ。そしてそれを見抜けなかったがちゃんとイベントに反映した俺ね。

 これが師弟の絆って奴だな。相互理解、互いに互いを理解してるッてことだよね?


 今後もついていきます!! ユルル師匠!!


 ジーンとか言う人から報奨金貰った。俺だけちょっと多めに。良い物を見せてくれた礼だとか。普通に嬉しい、。遂に俺に新しい武器が来る。


 主人公としては普通だよな。新しい武器を獲得、久しい強化イベント。前から気になっていた武具のショップがあったんだよね。



 帰り道にハムレタスサンドを食べながら帰る。エセが何か言ってる。自由都市? あ、前から気になってたんだ。もしかしたら俺の活躍の場はダンジョンかもしれないしな。


 主人公がダンジョンに潜るというのはあるあるである。そこから俺の物語が加速するという可能性もあるな、今度長期休暇とかあれば行って見よう。



 王都に着いたので、早速以前から気になっていた店に向かう。凄い古臭い汚い、非清潔、ボロボロなお店。俺は綺麗好きだから住むとしたらこんな場所は絶対願い下げであるが、こういった場所に意外と良い剣がある気がする。


 俺は賢いので分かります。


 中に入ります。剣を見ます。奥にTHE職人って感じの人が居るな。銀座の高級すし職人みたいな感じがする。


 さてさて、どれが良いかなー。俺ここ一回も入ったことないから分かんないんだよねー。


 基本的に買わないのに店に入るとか、店の人に失礼かなって思うからあんまりしないようにしてるし(急な良識)



 お、これいいじゃん。買おう……え? 嘘でしょ? 高い!? 今日特別報酬貰ったのに買えないんだけど!?


 えー、これは溜息だな。折角買えると思ったのに……いやこれはお店の人に悪いな。買わないのに買うみたいな感じ出しちゃったし(唐突な良識)


「なんだ? だと、どういうつもりだ」

「……ここに用はない。お門違いだった、ただ、それだけだ」


いや、マジでお門違いだった。お金足りないもん。また、今度来た時に買うから許してね? おじさん。


そう言って店を出る。


あー、もしかしてあのお店……実は凄い隠れた名店とかじゃなくて、普通に経営に厳しいお店だったのかな。


奥さんに逃げられて、脱サラして始めたカフェみたいな……。お客さんとか全然いなかったし、久しぶりに来たと思ってた客が何も買わずに帰ったら不機嫌にもなるよな。


剣の値段が高いのも、それくらい高くしないと生活が凄い厳しいのかも……。やっぱり悪いことしたかな……



今度、買ってあげよう。隠れた名店を発掘するスコッパーみたいな感じで、主人公である俺が剣を使えば有名になること間違いなし! 今度、絶対買ってあげよう。



「フェイ」

「……なんだ?」



気付いたら後ろにアーサーが居た。どうして、こんな場所に居るんだ。普通こんな場所で遭遇するか? 寮の近くでも無いし、何こいつ、ストーカーでもしてたの? ボウランも居るし。



「任務お疲れ様」

「……要件を言え。まさかそれだけではあるまい」

「うん、実は……フェイの周りに変な奴がウロチョロしてるから気を付けて欲しい」



いや、それお前。



「フェイをストーカーしてる複数犯と断定してる」



いや、それお前とボウランだろ。



「……そうか」

「うん。気を付けて」

「それよりさ、飯行こうぜ! 飯!」

「断る」

「えぇ! いいじゃん、飯行こうぜ! 飯!」

「なら二人で行け」

「いいじゃん、飯行こうぜ! 飯!」


ボウランしつこいな。どんだけご飯行きたいんだよ。飯行こうぜbotか。しつこいなと思っていたらボウランが片腕をがしっと掴んだ。



「よし行こうぜ。アタシお前の任務の話とか聞きたいんだ!」

「なら、ワタシも行く。気になる」



行く方向で完全に話が進んでいる。



「フェイ、お肉好き?」

「……なぜ、行く方向で話が進んでいるのか分からんな。俺は行かないと言っている」

「と言いつつフェイは来てくれるでしょ? ワタシ分かる。フェイ優しいから……、でも、年上のお姉さんとご飯行くの恥ずかしいなら逃げてもいいよ?」



なにその……お隣アパートに住んでるからかい上手系年上大学生風みたいな感じは……


その感じは素でなんかムカつく。顔かなり整ってるから余計になんかムカつくな。別にドキドキとかしないけど。逃げてもいいよ? みたいに言ってくるムカつく。行ってやるよ。



「……貴様らは俺に本当に手間をかけさせるな」

「よっしゃ!」



まぁ、いいか。クール系はやれやれ見たいな感じだったら飯行ってもおーけーだからな。



「フェイって、もしかして……ツンデレ♂?」

「……」



コイツ絶対いつかしばく。



■◆





「あぁ♪ 見つけましたわ♪」



 とある場所、檻のような場所。そこに金髪に血が混じっているような真っ赤な瞳を持つ少女がとある男の胸倉を掴んでいた。美しい顔立ちからこぼれる狂気の笑みは不気味さを感じさせる。



「な、なにを!」

「別に、殺そうとしただけですわ♪ ただ、その前に……ちょっと♪」



 そう言って左手で額に触れる少女。



「なるほど……ここでしたのね……噂では善良であっても、行っていることは非道とは面白い物ですわね、人間って♪ 貴方もですけれど♪」

「くっ、殺すのか!?」

「当り前ですわ♪ 貴方がしてきたことに比べたら死ぬだけなんて、お釣りがくると思いますわよ?」

「ぼ、ぼくは! 未来の為、人の為に、あれを行ったんだ!! 多少の犠牲を払ってもそれが未来の!!」

「はぁ……永遠機関と言い、、本当にクズですわね♪ ワタクシ自身もクズですけれど♪ 結局、根が善良であろうとなかろうと、正義を盾にしても、しなくても、人とは何かを理由にして、何かを簡単に虐げられる生き物ですわね。まぁ、別にもう、いいですわ♪」



 そう言って、剣を向ける。ぐさりと、顔面から血が噴水のように吹きでた。


「はぁ……闘争が死闘が、魂が沸騰するような激戦が欲しいですわ……。次が当たりなら良いのですけれど……」



 欲求不満であるような少女はそのまま檻のような場所を去る。そこに捕らえられていた少女達。だが、誰一人として既に息はしていなかった。



「まぁ、良いですわ……せめてもの慈悲を……」



そう言って、右腕を振るう。光がそこに満たされて、何かが浄化する。そのまま、彼女は再び、腕を振るう、今度は右腕に異様な極代の光を集めて。



そのまま、そこは跡形もなく消え去った。



 ――ある場所で、一つの任務が発注された。鬱がトゥルーを襲う任務が……本来ならあり得ない再会。異分子が入った事でそれは大きなうねりとなる。










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