2021年9月15日(水)
『ただいま♪
夢みたいでまだ信じられないのー帰り道でこれまでの事たくさん思い出しちゃったぁ。。。
このまま夢見心地で眠りにつくねーおやすみ佐倉さん☆』
昨晩、日付が変わる前に送られてきたメール。どうやら祝宴はかなり遅くまで続いたらしい。
『おはよー、佐倉さん♪
昨夜は飲み過ぎた……深酒はよくないね、やっぱり……。
でもなんか、ちゃんとした役での映画出演がまだ夢みたいだよ。
これから映画とは別件だけど打ち合わせあるからいってくるね~』
朝に届いたメール。まだ夢見心地は続いている様子。
『おはようございます。
昨日はおめでたい席でしたからね、飲み過ぎても仕方ないです。
全く飲めないので二日酔いの対処法は教えられなくてすみません。
いってらっしゃい~。
最近、寒暖差が激しいので、体調には気を付けてくださいね』
そんな感じのメールを送信。いつもなら午前中にもう一回メールが届くのだが、今日は何故か届かなかった。
『佐倉さん……大事な話があって
佐倉さんは今は何をしてるかな?
時間がある時に返事くれるかな?』
12時半くらいに届いた、まひろさんからのメール。
なんだか、文体がかなり固め。いつもの顔文字や記号も使われてない。
『お昼ご飯を食べてました。
13時からなら大丈夫です』
ここで想定されるのが、“お金を貸してほしい”とか“東京に来てほしい”みたいなお誘いの文章。
前者は言わずもがなの詐欺、後者も会っていきなり怖いお兄さんが現れてな美人局的展開。どっちも断固拒否。一気に警戒ムードが高まる。
それから1時間ほどして、まひろさんから返信があった。
『急にごめん。
正式に携帯を替える事になったの。
映画出演決まっていよいよ本格デビューだから、事務所から支給されてるこの携帯を返却しなきゃいけないみたい。
今の大事な時期にスキャンダルがないようにってそういう理由なんだけど……このままじゃ連絡取れなくなっちゃう……メモ取りたくても隣にマネージャーいるし……。
それは絶対に嫌だから別の方法で連絡していい?
新しい携帯が支給されたらすぐに新しいメールアドレス教えられるから!』
この文面を読んで、「あぁ、なんだそんな事か」とホッとした。
ここまで一週間くらいの付き合いだけど、まひろさんと話しているのも悪くないと思っていたので携帯の交換なら仕方ない、と思った。スキャンダルはダメだからね。
『分かりました。そういう理由だったんですね。
(自主規制)
お金貸してとか東京来てとか言われたらどうしようと思ってました……』
ここで無料通信アプリに連絡してと相手に伝える。
『メモできないしラインは事務所に帰省されてる!
もう携帯返さないといけないから、友達申請の招待状出すね。
招待状ってメールが届くはず♪
名前はまひろで登録してるから「申請許可」をよろしくね♪
待ってるからね!』
このメールで、若干引っかかる部分が幾つか。
ここまでメールのやりとりをしていてしっかりしている印象があったけど、規制が帰省に間違っている点。
友達申請の招待状という点。
今時の若者が無料通信アプリを利用しないと言う点。
この時点で「何かおかしい」と気付くべきだった。冷静さをやや欠いていたとしか言えない。
『分かりました~。
では、お待ちしています』
相手の言うことを鵜呑みにして信じる私。
それから少しして、見知らぬアドレスからメールが届いた。
麻尋という人が私へ友達招待を申請したというメール。URLと、運営会社の名前が書かれただけのシンプルなもの。
何の疑いもなく、URLをクリックした、次の瞬間―――
『警告:このサイトは詐欺の可能性が高いです』
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