夢から覚めてまた覚めて

私が中学生の頃、部活で疲れた身体を癒すため早めに寝た時のこと。よく夢を見る私はその日も深い夢の中にいた。


こんなにも楽しい瞬間があるのかと思うほどの良い夢もあれば、べったりとした汗をかくほどの怖い夢の時もある。


それでも私は夢の世界にいる時が一番幸せだった。


夢をよく見るとわかるのは、明晰夢というのだったか、とにかく今私は夢の中だと理解していることが多いと言うことだ。


何度も同じ夢を見ることもあれば、初めましての夢もある。


クラスメイトと、知り合いと、まだ見たことのない誰かが入り乱れて登場することも多く、なかなかドラマティックな展開の夢の時は目を覚ますのが本当に惜しかった。


その日は特に代わり映えのない普段の生活を送る夢を見て、そう確か学校から帰りお風呂に入り、布団に入る夢だった。


夢の中でもちゃんと歯磨きをして、寝巻きに着替えてと、寝る前の身支度はしっかりしていた。


さて寝るぞとなった時、ふと尿意がくる。


トイレに行ってから寝なきゃ


そう思いトイレに入りいざ用をたそうとしたとき、そう、これは夢だとギリギリで気づく。


ここでトイレを済ませてしまったら中学生にもなっておもらしをしてしまう。危なかった。


こうして私は難を逃れることに成功した。


目を覚ました私の部屋はもう明るくなっていた。朝までぐっすり寝たんだなぁなんて思いながら、そうだトイレに行きたかったんだと思い、急いでトイレに駆け込む私。


あぁ間に合った。おもらししなくてよかったと思いながら便器のフタを開ける時にあることに気づく。


あれ、どうやってトイレまできたんだっけ


起きて布団から出た記憶はあったのに、部屋を出た記憶はない。それどころか、トイレのドアを開けた記憶もない。


これは罠だ


もう一度、強く意識を集中すると、あら不思議もう一回重い瞼を開ける感覚があるではないか。ゆっくりとみわたすと、眩しい朝日をしっかりと感じるではないか。


助かった


夢から覚める夢なんて、こんなトラップ反則じゃないか。


それからすぐトイレに行き用を足したけど、これもまた夢だったらどうしようと何度も腕をつねってみたが、今度はしっかり現実だ。


なんて思ってはいるけど、実はまだ長い長い夢の途中だったりして。


世にも奇妙な物語、この話を原作で一回作ってください。主役は誰がいいだろう。


みなさんも夢の多重トラップにはお気をつけて。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

風吹けば日々日記 @zulatan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ