第1話 いつもの日常

おばあちゃんは私が赤ちゃんの時からとてもかわいがってくれた。

成長するにつれて一緒にお祭りなど遊びに行くことが増えていった。

歩くとなれば、いつも私の手を温かい皺だらけの手で握りしめてくれて、

バスや母の運転する車の中だったら

「寒くないかい?」

そう言ってタオルケットをかけ、おばあちゃんの肩を借りて仲良く寝ていたのを覚えている。

また、私の母方の家庭はお米屋さんのため、近くにコイン精米機があった。

毎年、毎月、いや毎日。

おばあちゃんは雨の日でも、風の日でも、いつも手入れに行っていた。

私や妹、兄2人に、母が

「手伝う?」

と声をかけても、

「これが私の生き甲斐なんだ!」

笑顔でそう言って91歳を迎えても手入れに行っていた。

おばあちゃんの様子を見に行っただけでもおばあちゃんはよく

「今日もかわいいね、こんな孫に恵まれて、私は幸せだ」

という言葉を口にしていた。

学校の授業で戦争について学んだ時もおばあちゃんは戦争を経験した今となっては数少ない人の1人だった。

「戦争はどんな感じだった?」

中学生にもなって興味本位で聞いたこの質問も、今考えれば、本人や被戦者からしたら辛かったかもしれない。

しかし、そこまで考えないで聞いてしまった質問におばあちゃんは当時のことを教えてくれた。

「あの頃はどこもここも大変だったよ...」

話してくれて最終的には『私は幸せ者だよ』と本当に幸せそうな笑顔で言っていた。

それでも、やっぱり思春期に入ってからはおばあちゃんの話が長いと感じることが多くなった。

勉強の量が中学校に入ってから小学生の倍で増えた。

学校の勉強に遅れないように母が開いている塾にずっといてやっていた。

自然とおばあちゃんの家に行くことが少なくなっていった。

塾の窓からいつもおばあちゃんがコイン精米機の手入れをしに向かう足が見えた。

夏場でも、冬場でも、年中、おばあちゃんの足が見えるたびに塾を抜け出しておばあちゃんを手伝いによく行っていた。

私はおばあちゃんの手伝いが好きだった。

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