第44話 上島家にて

「ただいまー」

恵子が帰宅しリビングに行くと家族が集合していた。

皆、いつもより晴れやかな表情にみえる。

入れ替り最終日、何とかなったみたいね。

恵子は微笑んだ。


いつもと同じように夕食を終えてから今日一日の報告をする。


一音は冷蔵庫からケーキを取り出し

「松沢さんから。騒がしいけどいい人ね」と言った。

家族は目を丸くした。

一音は普段、松沢のことを「うるさいおばさん」と評している。

冷血から脱しつつあるようだ。


将太は「発表を頑張った!」と子どもみたいに言い、「ただ、ちょっと先生に誤解されたかもしれん」と笑った。

「何で、お酒の話なんかするの」三哉がむくれ、将太は「すまん」と素直に頭を下げた。


恵子は四つ葉スーパーとの顛末を話した。

「そうか、どうにか断れたようで良かった」将太は胸を撫で下ろした。

「宮田さんも辞めないでくれると良いわね」恵子が優しく笑った。


健二は羽山の味方をしたこと、美理に文句を言ったことを話した。

一音は「そうなんだ、良かった」

とスッキリした表情を浮かべた。

「あ、川畑におめでとうって言ってやったぞ。ま、新しい相手探すんだな」と続けると思い切り殴られてしまった。


三哉は、「お兄ちゃん友だち多いね。あと小池くんが意外と恐かった」と、吉田との揉め事を報告した。

「小池久々に怒ったな」

健二はケラケラ笑っている。


「あ、あとね……」

三哉がモジモジしている。

「何だよ、ハッキリしろ」

「亜沙美さんと会ったよ。

綺麗な人だったね。で、明日話しに行ってね。約束したから」

健二の顔はみるみる赤くなり

「そういう事は皆の前で言うんじゃない、アホ!」と三哉の頭を叩いた。

ハッキリしろって言ったのに理不尽、と三哉は心の中でむくれた。


各自報告が終わった。もう、明日の伝達事項はしなくて良い。

「もうすぐ0時だぞ~」晃太郎が笑顔を浮かべる。

入れ替りが終わり元の生活へー。

明日からは自分に戻れる。どんな1日になるかな?

三哉はドキドキしながら目を閉じた。

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