第38話 上島家にて
「……ただいま」
将太が恐る恐る玄関を開けると怒り全開の健二が待っていた。
「おい!ふざけんなよ!何してんだよ!
ボール当たって鼻血出して頭も打った?
馬鹿か!」
「すまん。でもそんなに言わんでも……」
「これでも言い足りん!」
健二がギャンギャン喚いていると台所から恵子が出てきて
「まあまあ済んだことは仕方ないわ。健二、ほらハンバーグ味見する?」
と宥めている。
「お!俺が材料買ったんだ」
健二の表情が明るくなった。
単純な息子で助かった、と将太は胸を撫で下ろした。
将太がリビングに行くと三哉が暗い表情で体育座りをしていた。
「三哉も帰ってたのか、どうした?」
三哉は「……後から伝達事項の時に話す」と項垂れている。
「外見が変わっても暗い奴だな」ハンバーグを頬張りながら健二が呆れた口調で呟いた。
一音が仕事から戻り夕食を食べ終わり今日あった出来事の報告会となった。
恵子が「中学校で社会の先生と揉めちゃった」と苦笑いを浮かべ言うと三哉は卒倒しそうになった。
「ごめんね~。あ、でも川上先生は良い先生よね」と付け加えると健二は首を傾げていた。
三哉が「あの……謝っちゃった。それで……」と帰る間際の川畑先生への一部始終を伝えると一音は烈火のごとく怒り出した。
「謝るなって言ったでしょ!何でそれ位できないのよ!根性なし!
だから美理になめられて逃げ帰る羽目になるんでしょ!」
三哉は「ごめんなさい」を連呼するしかなかった。
健二はそんな姉弟の姿を見ながら
「まあまあ明日は俺が一音になるんだから大丈夫だ」とヘラヘラ笑っていた。
一音は失恋したことは伏せ久木野先生が来たこと、美理の父親に受けたパワハラの件は表に出したくないことを話した。
将太が今日の出来事を話そうとすると健二に「胸糞わるい!言わんでいい!」との一喝で終わってしまった。
健二がスーパーで起こったことを話すと皆は目を丸くし「偶然とはいえ」「これは使える」と喜んでいたが、恵子だけは「人の姿で乱暴なことしないでよ」と呆れていた。
その後、明日入れ替る同士で伝達事項を確認していく。
そんな家族を晃太郎はニヤニヤしながら眺めていた。
何はともあれ明日で入れ替り最終日
「明日は男子高校生か」
三哉は大きく深呼吸をして眠りについた。
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