第33話 三哉 梅学高校にて(2)
昼休みになり、三哉はコンビニで買ってきたサンドイッチを取り出した。
美理が「一音、こっちだよー」と声をかけてきたので驚いてしまう。
朝、謝ったので許す気になったのだろうか?
これまでの休み時間は話しかけられないように寝たふりをしていた。
びくびくしながら、美理グループの元へへ向かう。
居心地が悪い。
早奈子は「余計なことは言わないように」とチラチラ視線を送ってくる。
栞、真菜は事情を知らないようで楽しそうに話している。
そんな中、一見笑顔の美理の目は冷たい。
羽山と同じように1人で食べたい。
「なんか今日の一音、挙動不審だね」美理に声をかけられゲホゲホむせてしまった。
自覚はあるものの実際に言われるとショックだ。
「そう?私は可愛いと思ったけど」真菜が無邪気に笑う。
美理は小さく笑い
「ねえ、考えといてあげる、って朝言ったでしょ。
あれ決めたから。6時間目に川畑のとこ行って質問しなよ。
それで写真撮ってあげるから、ハートとかで加工してLINEのアカウント写真にして。それで許してあげる。」
この人は何を言っているんだろう?
三哉は固まって動けなくなってしまった。
背中を嫌な汗が伝う。
先ほどまでの楽しそうだった雰囲気が一変する。
「え、なにそれ?」栞が少しおどけた感じで聞くが空気は悪いままだ。
やっぱり、一音は川畑のことが好きなのだ。
それを嫌なことに利用しようとしている。
三哉は残りのサンドイッチを口に押し込み立ちあがった。
「ねーえ、どうするの?やりなよ」
美理が笑う。
もう嫌だ!高校生恐い!
三哉は席に着きうつむく。
うつむいていたので隣から羽山が心配そうに見ていたことにも気づけなかった。
さて、6時間目、問題の英語の授業、川畑先生の登場である。
三哉は身を固くした。
川畑はどちらかというと大人しそうな見た目をしており、授業も面白い話を挟むでもなく静かに進んでいった。
姉の好きな人をこんなに、まじまじ見ることになるとは思わなかった。
終業のチャイムが鳴る。川畑が教材を片付け、教室を出ようとする中
「一音~川畑先生に用があるんじゃないの?」
美理の声が教室に響いた。
「上島さん?」川畑と視線が合う。
三哉は慌てて目を逸らした。
「一音!」美理の冷たい声がする。
この人は何なんだろう、なんで意地悪をしたいんだろう?
「ああ~!もう嫌だー!」
思ったより大きな声が出て三哉はびっくりした。
そして鞄をつかみ走って逃亡した。
「え、上島さーん!」
川畑の声が追いかけてくるが立ち止まらなかった。
三哉はスカートが揺れるのを感じ、下に短パン履いてて良かった。
と、どうでも良いことをぼんやり思いながらバス停まで全力で駆けていった。
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