第12話 健二 緑野中学校にて(1)
つまらん!ダルい!帰りたい!
健二はイライラする気持ちを静めるため机に突っ伏した。
でも他の家族が何とかやっている中、俺だけ帰ったら負けだ。と思い何とかこらえる。
市立
うるさい教師からやっと解放される、と思っていたのに再び来ることになるとは。
それにしても、
もう3時間目になるというのに、今朝、教室に入ってから誰とも口をきいていない。
話しかけてくる生徒がいないのだ。
入れ替わり中の身としては、ありがたい事ではあるが、誰とも話さないというのも息がつまる。
勉強が嫌いな健二は、友だちと会うためだけに学校に行っていたようなものなので、今の状況は本当に退屈で仕方がない。
せめて体育でもあればいいのだが、残念ながら今日は座って受ける授業ばかりだ。
あんな変な薬のせいで……。
思わず「くそジジイが」と呟くと
「何だって」という声が頭上から降ってきた。
突っ伏していた顔をあげると三哉の担任である川上が、どんぐり眼を更に大きくして睨んでいた。
川上は生徒思いで一般の生徒からの評判はいいのだが、健二たちのように問題行動を起こす生徒からは敬遠されている。
健二が中3の時の生徒指導担当教師でもあり、散々呼び出された嫌な思い出しかない。
「上島、授業始まってるぞ」
健二はむくれながら黒板を睨み付けた。
習ったことがあるはずだが一切覚えていないし、今さら覚えるつもりもない。
健二はノートを取る気ががないのでシャーペンも握らずにいた。
すると、すぐさま「上島ー!」と川上が怒鳴ってくる。
「どうした、急に兄ちゃんの真似か。制服もいつもみたいに、ちゃんと着んか」
緑野中学校の制服は学ランである。
三哉はいつも学ランのボタンは上まできちんととめている。
しかし、健二はそんな息苦しいことは嫌いなのでボタンを2つ開け上履きの踵は踏んづけている。
健二が反応しないでいると川上が怒りの形相で近づき、教科書で思いっきり頭を
懐かしい痛さだったのが癪に障る。
「もう一度言う。ちゃんとしろ」健二は不機嫌なままボタンをとめ、黒板の文字をノートに書き写した。
教室がざわざわしている。普段の上島三哉とあまりにも違うからだ。
三哉、すまん。大人しくしてたけど怒られてしまった。一応、心の中で謝っておく。
休み時間になっても、クラスメイトが自分の方を見ながらひそひそ話をしているのが分かった。
言いたいことがあるならはっきり言え。
健二はイラつき前の席の椅子をガンッと蹴った。
「狭い」「……ごめん」可哀想に前の席の男子生徒はかなりギリギリまで椅子を引き窮屈そうにしている。
完全なる八つ当たりだ。
初めて喋った内容が「狭い」「ごめん」とは……三哉、すまん。と健二は再び反省した。
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