第65話 チロの選択

チロは夢を見ていた。



ごみ溜めにうずくまり、暗闇を唯一月が明るく照らしてくれる部屋。チロは薄汚れた服に傷だらけの身体で眠っていた。衰弱状態を見ると、この先後どのくらい生きていられるだろうか。



「おにゃか…しゅいたにゃ…」



チロは虚ろの目で食べ物を探すが何もない。絶望の中で虚ろな目がゆっくりと閉じようとした時、目の前が優しい光に包まれる。光の中心に現れたのはエチカだった。



「チロ!しっかりして!」



異臭を放つチロを、愛おしそうに抱き抱えて泣いている。



「チロ!大丈夫ですか!」



光の中からランバートもやって来て、泣きながらチロに水を飲ませてくれる。場面は変わり、この屋敷でエチカとランバート、そしてカイデルとビビアンに囲まれて幸せそうに笑うチロと、エチカに抱っこされている赤ちゃん。チロが赤ちゃんをあやしてあげると喜んでいる。




そこで目が覚めたチロは、泣き腫らした目をぱちくりさせて周りを見渡す。チロを大事そうに抱き抱えて眠るエチカと、チロの横でスヤスヤ眠る大切な親友達。




チロは静かにベッドから降りると、部屋を出てランバートを探す。途中でセバスチャンに会ったので急いで連れていってもらう。



「とうしゃん!たいへんでしゅよ!」



いきなり入ってきたチロに驚いたが、元気な姿にホッとする。



「チロ、どうしたんだい?」



ランバートの問いかけに、爆弾発言をする。



「かーしゃんあかちゃんうまれりゅよー!かわいいんだよー!」



「「はぁ!?」」



驚くランバートとセバスチャン。



「…どう言うことでしょうか?」



「分からないが…チロ、本当かい?」何故か聞いてしまう



「うん!チロにょいもーとだよ!」小躍りして喜ぶチロ



ランバートはチロを抱っこして、エチカの所に行こうと部屋を出ると、丁度チロを探していたエチカに出くわす。



「チロ…良かったわ!いなくなったと思って…」



涙を流し座り込むエチカを、チロが心配そうに近寄る。だがここでも爆弾発言をする。



「かーしゃんにゃかにゃいで…あかちゃんがびっくりしましゅよ!」



「へ?」驚きで涙が止まるエチカ



「エチカ…医者に見てもらおう。最近体調があまり良くなかっただろう?」



エチカは最近具合が悪そうにしていて、ランバートは医者に診てもらおうと思っていたのだ。



「そうね…でもチロは何を言ってるの?」



「チロねーゆめみたにょ!」



「「夢?」」



「うん!しょこでねーとーしゃんとかーしゃんとじーじとばーばとチロとあかちゃんがいたにょー!」



そこからチロの話が始まった。

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