第64話 そろそろ寝ましょうね?

「こらー!風邪引くでしょ!」



お風呂上がって走り回るおちび達を、メイドとエチカ2人が追いかける。小さいがゆえに小回りが効いてちょこまかと動き回る。




そんな光景をまたまた唖然と見ていたカイデルが、徐に立ち上がると意を決しておちび達に向かっていく。



おちび達は思わぬ人物の登場に立ち止まる。その瞬間を逃がさないメイドとエチカは1人また1人と捕まえていく。



「お義父様、ナイスです!」



「…何も出来なかったが、良かったよ」



捕まえられたおちび達は、服を着るのに悪戦苦闘している。



「うーん…むじゅかちいでしゅ!」



「チロ~ここぼたんとめてよ~」



「かーしゃんたしゅけてー」



ボタンの掛け違いで中々着れないので、カイデルとランバートが手伝ってあげる。無事に着替え終わると、歯を磨きお布団に入ります。



「まだにぇむくにゃいー!」



「「ブー!」」



おちび達のブーイングを無視して、抱き抱えると布団に強制的にいれてしまう。最初は暴れていたが、疲れていたのか直ぐに寝息が聞こえてくる。



エチカ達は可愛い寝顔を堪能して部屋を出る。広間に戻ると、カイデルとビビアンに改めてチロの事情を説明する。



「そうか…辛い思いをしたんだな」



カイデルは涙を堪えたが、ビビアンは号泣する。エチカもランバートも自分の息子に起こった悲劇を思うと、今でも胸が張り裂けそうになる。



「その女は生きてるの?」ビビアンが厳しい顔で聞く



「辛うじてですがね…そう簡単には死なせませんよ」



ランバートが恐ろし程の冷酷な顔で言う。それにエチカも頷く。暫く4人で話していると、メイドが駆け込んできた。



「奥様、チロ坊っちゃんが泣いていて…泣き止みません」



「今日もなのね」エチカが辛そうに呟く



チロの夜泣きは良くなってきたものの、未だに続いている。昔の記憶がチロを苦しめているのだ。チロは夜になると真っ暗の中で放置されていたので暗闇が苦手だ。




エチカ達はおちび達がいる部屋に向かう、途中から子供の泣き声が聞こえてくるので、エチカは急いでドアを開ける。



「チロ!」



ベッドで、リクとエドワードが不安そうにチロを慰めている。



「かーしゃんーーうわーーん!」



チロはベッドから降りると、エチカに抱きつく。



「チロ、もう怖くないわよ!母さんと一緒に寝よう!リクちゃんもエドワードちゃんも良いかしら?」



「「うん!」」



チロはエチカに抱っこされながらうとうと眠り出す。その光景を痛々しく見つめていたカイデルとビビアン。



孫の心の傷は深いのだとこの出来事で、身に沁みて理解した。




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