第52話 おちび三人組襲来④
「いちにー」
「「しゃんしー」」
兵士達が走っている横で、我慢が出来なくなった三人はジェラルド達の周りを一生懸命に走る。
「何かの儀式か?」苦笑いのジェラルド
レオナルドとエチカは腹を抱えて笑っている。その光景を唖然と見ている兵士達。国の重鎮達の周りを走る幼子の姿はとても奇妙だ。
兵士達が走り終わらない内に、おちび達はバテてしまい大の字で寝転がっている。そこに一人の兵士がやってきて飲み物を持ってきてくれた。
「ありが…とごじゃいます!」
「「あり…がとごじゃいます!」」
三人は息を切らしながらも、立ち上がり敬礼する。兵士はホッコリしながら敬礼をして立ち去る。三人は果実水をごくごく飲む。
「ぷはー!いききゃえるにゃー!」チロが言う。
「ルルかアンリだな…」呆れるジェラルド
剣での訓練になると、おちび達の興奮ボルテージがまた上がっていく。
「「「「キャーーーー!!!」」」」
エチカは懸命にチロを落ち着かせている。
兵士達は苦笑いしながら、剣での模擬戦を始める準備をしている。そして二人一組になり模擬戦を始める。おちび達は先程の騒ぎが嘘のようにじっと見つめている。
一人ずば抜けて強い兵士がいて、次々に勝ち進んでいる。そんな兵士を見ていたチロが、あることに気付いた。
「あれー!たしゅけてくれたおにーしゃんだ!おーい!」
チロが喜んで手を振る。それを聞いていたエチカはチロに詳しく聞く。
「チロ、あのお兄さんを知ってるの?」
「うん!しんじゃいしょうだったチロをたしゅけてくれたにょ!」
「あの兵士が…」涙ぐむエチカと支えるランバート
「あいつを知ってるか?」ジェラルドがエチカに聞く
「えぇ、平民出身ながら実力はトップクラスで将来有望な子よ。名前はコーエンだったわ!」
そんな話になっているとは知らずに、次々に勝ち進んでいるコーエンは自分に手を振る幼子を見つめる。
「どっかで見たことあるんだよなー?」
「どうしたんだコーエン?」友人でもあるジンが声をかける
「いや、あの子見たことあるんだよ」
「そりゃあ有名だからな!エチカ軍総司令官とランバート公爵の一人息子で、国王陛下の可愛がっている甥だしな!」
そんな会話をしていると、エチカ軍総司令官に呼ばれた。国王陛下もいるなかで緊張しながらも最敬礼をする。
「練習中にごめんなさいね、貴方にはお礼を言いたくて…」
エチカはチロを抱っこして、コーエンを呼び出した経緯を話し出す。
「あの時の子が!そうか…元気そうで良かったです!」
「貴方が直ぐに対処してくれたから…この子は生きているのよ…ありがとうございます!」コーエンに頭を下げるエチカ
「頭を上げて下さい!当たり前の事をしたまでです!…君…大きくなったね!」
コーエンはあの時の事を思い出しながら、チロに笑いかける。
「おにーしゃん!たしゅけてくれてありがとごじゃいましゅ!」
チロは抱っこされながらも、頭を下げる。コーエンが頭を上げるように言うと、綺麗に鼻水と垂らしているチロだった。
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