第35話 閑話 リリアーナ、未知との遭遇
リリアーナは今まで着たことのない簡易的なドレスに身を包みある場所に向かう。
そう今日は1人であの孤児院に向かっているのだ。あれからの2回目でしかもお父様は今日はいないし、自分で行きたいと望んだが緊張が止まらない。
「リリアーナ王女殿下、孤児院に着きました」
「えぇ、ありがとう」
にこやかに礼を言うリリアーナに驚きを隠せない従者。最近のリリアーナは人が変わったように穏やかになった。王妃が亡くなったり、公爵家が不正でお取り潰しになったので媚を売っているや、おかしくなったと影では言う人もいるが大半の者には好印象だ。
「緊張するわ……」
深呼吸をして入口から中に入る。入る前から騒がしい声が聞こえていたが、中に入るとあの何故か前も軍服を着ていた幼子3人が小さな池(?)の周りを…あれは走っていると言っていいのか?
「ちゅかれた……」
「チロ…ぼきゅ…もうダメでしゅ」
「ぼきゅも……」
幼子3人がそう言うとバタンと倒れたので、驚いたリリアーナは走っていき声をかける。
「あなた達大丈夫なの!」
するとエチカ叔母様の息子のチロがガバッと起き上がる。
「あーー!なきむししゃんだーー!」
「なっ泣いてません!」
「にゃいてたよー」
「うん、ないてたー」
他の幼子も同意する。
「私はリリアーナって言うの!」
「リリー!チロはチロっていうのー!」
やはりこの子は心配だ。ちょっとお馬鹿さんなのかしら?
「ぼきゅはリクでしゅ!」
「ぼくエドワードでしゅ!」
「そう…元気ね。リリアーナよ」
「リリー!なにちてあしょぶー?」チロが当たり前に言う
「えぇ…え?遊ぶの?」
「「「あしょぶー!」」」
「うーん…チロが決めていいわよ」禁断の言葉を言ってしまう
「兵士ごっこー!」敬礼するチロ
「「あい!」」敬礼する2人
3人が期待を込めた目で見つめてくる。
「は…はい!」ぎこちない敬礼をするリリアーナ
そして洗礼の匍匐前進をすることになり、ドレスが泥だらけになる。前のリリアーナなら発狂していたが、何故か楽しい。
「あれは突っ込み待ちかな?」アンリが呆れている
「でも楽しそうだよ」笑うルル
「あの子にも訓練が必要ね!」とエチカさん
「元気になって良かったわ!」とキルア院長
4人に見守られながらおちび達に振り回されているリリアーナだった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
帰る時に泥だらけなので従者に酷く心配されたが、何だかそれも嬉しかった。城に帰ると1人の侍女が鬼の形相でやってくる。王妃がいなくなり横柄な態度の侍女が増え、この侍女もその1人だ。
「リリアーナ王女!こんなにドレスを汚して!私達がこの汚れを落とすのですよ!全く!」
「おい!失礼な事を言うな!」
あまりの態度に怒る従者。それを無視してリリアーナを睨む侍女。
「それがお前達の仕事ではないのか?」
そこに王の威圧感が半端ないジョンさんことジェラルド国王が歩いてくる。驚いて平伏す侍女と従者。
「お父様!…ご免なさい…汚れてしまいました」
落ち込むリリアーナをジェラルド国王は抱き上げる。周りが止めに入るが聞いてない。
「お父様!汚れます!」
「いいんだ!楽しかったか?」
「はい!兵士ごっこしました!」
その言葉に大爆笑するジェラルド国王。
「そうか!良かったな!飯を食いながら話そう!」
「はい!」幸せそうなリリアーナ
その光景に唖然とする側近達。その1人のランバートさんはチロを思い浮かべて笑う。
「あー…その侍女は城の外に放り投げておけ!そこの従者!またこの子をよろしく頼む!」
「そんな!陛下ー!」引きずり出される侍女
「ありがとうございます!はい、お任せください!」喜ぶ従者
そう言うとジェラルド国王はリリアーナ王女と共に歩いていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます