第36話 カイル王太子

僕はカイル・ラスフォード今年10歳になる。

王妃ではなく側室の子で、僕を産んですぐに母上は王妃からの嫌がらせで精神を病み…とかではなくいつも嬉々として反撃していた変わり者で、父上はそんな母上を寵愛していた。



僕は王太子として幼い頃より、父の住む城内で乳母と暮らしていた。そのお陰で安全に暮らせていた。だが母上が2人目を妊娠して事態が変わる。女の子が産まれたのだ、女の子の場合は後宮で暮らさないといけない。



母上は必死にまもろうとしたが、ある日信頼していた侍女が産まれた王女を殺めようとしてるのを偶然発見した。事態を重く見た父上と母上はおばあ様に相談した。そして忽然と王女は消えた、おばあ様もだ。




それから母上は夜な夜な泣いている事が多くなったと聞いた。事情は分からないが妹である王女の事が気になって父上に聞いても何も教えてくれなかった。



そして僕は今も部屋にこもり妹の事を考えている。



「おいカイル!いい加減部屋から出てこい!」




げっ…父上だ。僕は布団を被りいつものようにいなくなるのを待つ。だが今日は何かが違った。



「入るぞ!」




鍵を抉じ開けて入ってくる父上と……王妃の娘リリアーナ!?信じられない組み合わせに布団から飛び出す。



「お父様!お兄様すごく臭いです!」鼻をつまむリリアーナ



「お前、風呂入れ!ボサボサの髪も切るぞ!」



僕が唖然としている間に侍女達に風呂に連れていかれて、髪を切られる。その間父上とリリアーナは仲良くお茶を楽しんでいる。



「おーー!スッキリしたな!王子みたいだ!」



「お父様!王子ですよ!」笑うリリアーナ



「そうだな!」



今までこの2人が一緒にいる所を見たことがない。王妃の娘で我が儘で傲慢なもう1人の妹。とても好きになれなかったし父上も同じだと思っていた。それにリリアーナの雰囲気が変わっていてそれも驚いた。



「僕が引きこもっていた間に何があったんですか?」



「お前はいい加減成長しろ!リリアーナもルルも成長してるぞ!」



「ルル?ルルは何処にいるんですか?会えますか?」



「会いに行くか?」



僕は頷く。父上とリリアーナは悪巧みする時のように笑う…何だか嫌な予感がするがルルに会いたい。



「母上は……「やっと会えるのねーー!」



カイルが話そうと口を開いた瞬間、喜びに満ちた声をあげる母上が入ってきた。美しい金髪にキリッとした雰囲気の美人だ。王妃に最後まで屈しなかった強い人だ。



「おぉミランダ!カイルも会いに行くってよ!」



「カイル!スッキリしたわね!」頭を撫でてくるが力が強い。



折角整えた髪がボサボサになり侍女達が苦笑いする。僕達が話していとリリアーナが疎外感を感じて下を向いてしまう。それに気づいた母上がリリアーナの元へ行く。



「リリアーナ!準備するわよ!」



その言葉に驚き、そして嬉しくて涙目で頷くリリアーナ。母上はリリアーナと一緒に準備するため出ていった。



「あぁ~幸せだな、カイル!」涙声の父上



「僕も変われますか…?」



「ルルの所に行けば変われるぞ!あの子は天使なのかもな!」



僕の運命の日が始まる。









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