第28話 リクの場合

リクは2歳の頃にある事情でこの孤児院にやって来た。最初は下を向いて誰とも目を合わせない内気な子だった。



そして現在



「リクー!チロー!」



エドワードが遊びに来たが何と兵士の格好をしている。おもちゃの剣を腰にさして靴まで軍仕様だ。この服はエチカさんがオーダーメイドで作らせた本格的な軍服だ。リクとチロも同じ格好でお揃いだ。チロの着た時の興奮といったら凄まじくて、鼻血まで出した。



「リク兵士、エドワード兵士」チロが敬礼する。



「はい!」2人も敬礼する。



「何か本格的になっていくね」アンリが引いている。



「ここその内軍施設になっちゃいそうな勢いね」ルルも苦笑いする。




すると庭に見慣れない男の子が立っている。金髪碧眼の美少年だ。チビッ子3人はその男の子に気付いて剣を抜く。



「お前はにゃにものだ!にゃをにゃのれ!」チロが叫ぶ



「猫か!お前は猫か!」アンリが笑う。



ルルもあんな男の子見たことない。男の子はずっとリクの事を見ている。



「リク兵士!エドワード兵士!とちゅげきー!」



「「やぁーー!」」



「あぁ…やられたー!」



ルルは危険を感じて止めようとするが、そこにジョンさんがやってくると男の子の前に立ち2人の剣を受ける。倒れたジョンさんを見て喜ぶ3人は小躍りしている。



「なっ!陛下!?」驚く男の子



「お前、何故ここにいるんだ?」



立ち上がったジョンさんが男の子に聞く。すると男の子は涙を浮かべて話し出す。男の子はリクの兄で名はデューク・ヘルマー、ヘルマー公爵家の長男だ。今は父の手伝いをして家督を継ぐ準備をしている。



父親には母親以外に1人の愛する女性がいた。名はリタでとても美しくて聡明な人だ。父親は政略結婚で母親と結婚したが関係は冷めきっていた。だがデュークが生まれて父親は大層可愛がった、でもその父親には母親以外に愛するリタがいた。



母親はそれが許せなかったし、その気持ちに追い打ちをかけたのがリタの妊娠だった。しかも産まれたのが男の子でリタそっくりだった。母親は怒り狂いリタの元を訪れて男の子を無理矢理奪い連れ去ろうとした。



だが見張っていた護衛に阻止されるが、事態を重く見た父親とリタは男の子を断腸の思いでこの孤児院に入れた。それがリクだ。



「夫人はどうしている?」



「未だにあの子を探しています」



「あいつは離縁しようと準備をしている。リタさんとリクそしてお前と暮らす為にな」



ジョンさんが言ったことに反応して泣くデューク。デュークの母親は侯爵家の箱入り娘で傲慢で気性が激しい女性だった。デュークを産んでも面倒を乳母に押し付けて自分はお茶会等に行ってしまう。気分でデュークを殴ることもあり事態を知った父親はデュークを自分で面倒を見て、母親を離れに追いやった。



デュークはリタの元に父親と訪れていて、弟ができると分かり嬉しさ反面複雑な気分だった。自分は要らない子なんじゃないかと…でも違ったんだ!



するとチビッ子が泣いている男の子に近付く。そして3人で思いっきり変顔をする。思わず笑ってしまうデューク。



それを見て微笑むジョンさんとルル、アンリだった。

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