第10話 エチカの提案

「ちゅごーい!ほんもにょ!」



チロは喜びの小躍りをしている。エチカさんはそれを嬉しそうに見ている。



「チロにプレゼントがあるのよ!これはねお母さんが小さい時に遊んでいた木の剣よ!」



「キャー~ー!」



チロがもらったのは小さな木でできた剣で、おもちゃにしては精巧に出来ている。



「これで素振りをしてみて!」エチカさんが見本をみせる。



「あい!」



チロは一生懸命素振りをしている。それを微笑ましく見つめるランバート先生と私。この2人ならチロを任せても大丈夫だろう。



「ちゅきありー!」チロはいきなりエチカさんに斬りかかる。



「ぐわっ!卑怯な!」エチカさんいちいち演技が上手いんだよな。



「いくちゃにひきょーもくちょもにゃい!」



ランバート先生とエチカさんの視線が私に向かうが知らんぷりする。暫くチロとエチカさんの兵士ごっこを見ていると、ふと辺りが騒がしくなっていることに気付く。執事のお爺さんがランバート先生の元にきて何やら話している。



するといきなりドアが開きジョンさんが入ってくる。



「あー!じょんしゃんだー!」ジョンさんに抱きつくチロ



「おー!来てるな二人とも!」



「ジョンさんどうしたの?本当に暇?」



ルルの発言に何故か青ざめるランバート先生や執事のお爺さん。



「仕事は終わらせた!ルルに会いたくてな!」



「えー!チロはー?」不貞腐れるチロ



「もちろんチロにも会いたかったぞ!」



そう言うとチロを肩車する。チロは不貞腐れてたのにすぐきゃっきゃして喜んでいる、子供って単純ね(ルルも8歳)。



「陛…ごほん!ジョンさんどうしてここに?仕事は本当に終わったのですか?」



「あ?あぁ!」



「今の返事怪しいな!」ルルが核心をつく。



「ルル、今日も可愛いな~!」



「誤魔化しても無駄だよ!何年の付き合いだと思ってるの!」



「ちゃんと仕事は終わらせたよ!」



「チッ!チロやっちまいな!」



「あい!」



チロは肩車されている足でジョンさんの首を絞め落とそうとする。



「ぐっ…チロギブ…ギブアップ!」



「チロ止めなさい!」ランバート先生が必死に止める。



「我が子ながらやるわね!」感心するエチカさん。



「チロもういいよ!」「あい!」



「お前ら加減がなくなってるな!死ぬぞ?俺その内死ぬぞ?」



「仕事をちゃんとしないと駄目でしょ!ランバート先生にも迷惑がかかるでしょう!」



「だめでしゅよ!」チロも訳が分かってないが怒る。



そんなやり取りをハラハラしながら見つめるランバート先生。エチカさんは何か考え込んでいる。



「ルルちゃんにお願いがあるの」



「何ですか?お金ならありませんよ?」



「ルル…ここは公爵家だぞ?その手の冗談は通じないぞ?」



「お金はあるわ、大丈夫よ」真剣に言うエチカさん。



「何か…恥ずかしい!」



「提案なんだけど、当分ルルちゃんもこの家に住まない?」



どうしてそうなる?



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