第9話 青熊亭
決闘が終わった後、ルークはギルドの医務室に連れて行かれた。予想通り手首が折れていたらしい。まぁ、回復魔法ならすぐ治るだろ。
これ以上絡ませないように治療費も出してやった。銀貨二十枚を簡単に出せるなんて盗賊退治様様だな。
冒険者ギルドを出た俺達は遅めの昼食を摂るために適当な店に入る。
明日から冒険者として活動するためにサーニャさんやマリーから必須品やおすすめを教えて貰ったので、アンナさんにも聞きながら飯を食う。
「スターク様はトラブル体質なのかも知れませんね」
「なんとなく自分でも察してるんだ、よしてくれよ。それよりアンナさんのおすすめ教えてくれよ」
「ふふ、エレナ様そっくりですね。そうですね、スターク様は防具を付けていないのでそれですね」
「あんまり重いのは勘弁してほしいな。軽くて丈夫なやつとかある?」
「ご心配なさらず。魔物の素材を使った戦闘用の服が売っている店がありますから。使う素材によっては鉄製の鎧を越える防御力がありますよ。もちろん相応の値段はします」
「へぇ、じゃあそこに行ってみるか。この後は仕事に戻るんだろ?今までありがとう、アンナさん」
「いえいえ、私から言い出した事ですので。何か困ったことがあればすぐに訪ねてください」
「本当にありがとう。助かるよ」
昼食を食べ終えアンナさんと別れた俺はサーニャさんにおすすめされた
青熊亭はギルドと同じ通りにあり、青い熊の手の看板がトレードマークでかなり人気の宿らしい。かなり大きな建物で食堂として訪れる人も多いようだ。
内装は清潔でおすすめされるのも納得の宿だ。元冒険者が経営してると聞いていたから少し意外だな。
「いらっしゃいませ!お泊りですか?」
「あぁ、とりあえず一週間お願いできるか?」
五歳くらいの女の子が笑顔で元気一杯に受け付けをしていた。
「じゃあ、ここに名前と泊まる日にちを書いてね!値段は、えーと……、ちょっとまってくださいね!」
「あら、すいませんお客様。他の仕事をしていて。ほらエミリーお母さんと変わって?」
「むぅ、お手伝いできるもん!」
俺が宿帳に名前と宿泊日数を書いていると女の子の母親がやって来た。美人さんだな。
「スタークさんですね。期間は一週間。一泊、銀貨一枚ですので銀貨七枚になります。」
「ます!」
お手伝いがしたい年頃なんだろうな。両手を出してニコニコだ。
「ほら、銀貨七枚。お母さんに渡してくれ」
「はい!ありがとうございます!」
「お手伝いありがと、エミリー。お部屋で遊んできて良いわよ。」
「元気なお子さんだな」
「ええ、大変ですけどね。そうだ、期日より前に宿を出る時には声を掛けて下さい。残りの日数分のお金はお返しする規則ですので。冒険者さんのようですし、急な依頼もあるでしょうから。お部屋は二階です。案内しますね」
元冒険者がやってるだけあって冒険者に優しい宿だな。部屋に案内され、鍵を渡される。
「食事は一階の食堂で可能です。宿泊者は割引されてますので是非ご利用下さい。それと出掛ける際は鍵を受付に預けてください。お戻りの時にお渡しするので。あと、緊急時以外は夜九時の鐘を過ぎると宿を閉めますのでそれまでに戻ってくださいね」
「ああ、把握した。さっそく出掛けるから鍵を頼む」
「はい、お預かりします。あら自己紹介を忘れてたわ。私はナターシャ、ここの女将よ。あと私の夫が食堂をしているわ、美味しいから楽しみにしてて」
女将に鍵を渡して青熊亭を出る。夕食が楽しみだな。日が落ちる前に防具を買いに行くか。
アンナさんから教えて貰った武具工房にやって来た。いかにも職人が居ますよって感じの店構えだな。中も所狭しと防具や武器が並べられている。
どこにも人がいないが。奥の工房からは人の気配がするが店の方は俺以外誰もいない。盗まれたりしないのか?
俺が店内を物色していると工房から出てきたであろう人の気配がする。
「あ?客か?すまねぇな。さっきまで立て込んでたんだ。それで何のようだ?」
振り向くとそこには汗だくのドワーフが立っていた。
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