第7話 冒険者ギルド

 冒険者ギルドはかなり大きい二階建ての建物で隣に解体施設があり、この二つの建物は繋がっている。

 ギルドの前の通りはかなり広くなっており、冒険者通りと呼ばれているそうだ。

 入り口は両開きの大きなスイングドアで、これらは緊急時の出入りを簡単にするためらしい。


「冒険者ギルドって意外と静かなんだな。それにここでもめっちゃ見られてる」

「いえ、それらに関してはスターク様が原因ですね。あなたは覇気と言うか何と言うか、強さが滲み出ているというか。とにかく注目を集めてしまうのは、その外見と相まって仕方の無い事だと思います」

「そんなもん、出てるか?気配を消すのとは違うだろうしなぁ。それに俺だけのせいじゃない気もするけど」


 あんまりじろじろ見られるのはいい気しないが気にしない事と割り切るしかないな。俺のせいに静かになってたのか?

 アンナさんはもともと注目されそうな外見をしてるから分からんな。


 俺達が受付に向かうとざわざわと周りが元の喧騒を取り戻したようだ。それでもまだこちらの様子を伺っている奴が多いな。野郎に見られても嬉しくない。


「マリー、いいかな?」

「あら、アンナ。久しぶりね、ギルドに顔出すなんて珍しいじゃない?」

「ああ、用事があってな。スターク様、彼女はマリー。私の友人です。マリー、まずはこちらのスターク様の冒険者登録をお願いしたい。」

「よろしくね、スタークさん。アンナの紹介だし、気軽にマリーって呼んで」

「よろしく、マリー」


 マリーは人気の受付嬢らしく名前で呼ぶと周りから嫉妬の目で見られた。直接見なくとも気配で丸分かりだ。


 俺は返事をして、アイテムボックスから推薦状を取り出し、アンナさんの友人の受付嬢に渡す。


「えぇ!推薦状持ちなの!?しかも辺境伯家!!」

「マリー、そういうのはあまり大声で言わないようにしてくれ。スターク様に要らぬ誤解や詮索を受けさせたく無い」

「ごめんなさい。悪気は無かったの。でも本当に驚いたのよ。あなた凄い人なのね」

「特に気にしても無いし怒ってなんかないさ。それよりよろしく頼むよ」

「えぇ、少し待っててね」


 マリーは推薦状を受け取るとぱたぱたと奥に走って行った。

 賑やかな人だな。アンナさんの友人だから良い人なのは間違い無いだろうが。

 推薦状の事が聞こえた冒険者達はまた静まり返っている。推薦状持ちは相当珍しいらしいな。


 しばらくするとまたぱたぱたと音を立ててマリーがやって来た。


「スタークさん。ギルドマスターがお話ししたいとの事です。」

「分かった。案内してくれ」


 アンナさんに待っててもらい、マリーに案内されギルドマスターのところへ向かう。

 長いのでギルマスと略すが、ギルマスは応接室で待っているようだ。

 流石に、貴族からの推薦状を持った相手を無碍には出来ないみたいだな。


 二階にある応接室にたどり着き、マリーがノックをする。


「入ってくれ」


 中から凛とした、よく通る鈴の音のような声が聞こえた。ギルマスの声めっちゃ可愛くね?

 つか、女性だったのな。勝手にムキムキの中年男をイメージしてたわ。

 緊張で左右の手足が同時に出ているマリーと共に応接室に入る。


「ほう、ギルドマスターの私に会うというのに少しも緊張してないな。これから所属する組織の長とも言える存在に対してなら、何かしらの反応があるべきだが、全くの自然体とはな。辺境伯から推薦状に書いてある事は間違いないらしい。マリー、ありがとう。君はそっちに座ってくれ」


 部屋から退出するマリーにお礼を言いギルマスに向き合う。

 尖った耳に薄緑色の長髪と瞳、スレンダーな体型と、いかにもエルフって感じだな。内包してる魔力は莫大だが。ラムザよりも強いだろうな。それとやっぱり声が可愛い。


「すまん。挨拶が遅れたな。私がギルドマスターのサーニャだ。見ての通りエルフだ」

「俺はスターク。見た目じゃ分からないかも知れないが龍人だ」


 お互いに軽い自己紹介をして本題に入る。


「推薦状を読んだよ。君が件の龍人で、しかも毒風のラムザに加え複数の元Bランク冒険者を討伐したことも。盗賊の件は既に報償金を払える状態だ。」

「仕事が早くて助かるよ。それなら何で俺を呼んだんだ?」

「君を直接、私の目で見たかったからだ。辺境伯からの推薦だから問題は無いだろうが、実力や人となりを確認したかったのでな。」

「なるほど。それで俺は合格かい?」

「ああ、実力は私では計り知れないし、悪人には見えない。エレナ様の息子でもあるしな。少々、傲慢な所はあるようだが」

「敬語や畏まった態度が苦手なだけだ。これでも強者には敬意を払っているし、別に弱者を虐げるつもりはない。俺より強い者はそうそう居ないとは思っているがな」


 ニヤリと笑って言い放つとサーニャさんは呆れた様子で口を開いた。


「まあ、そうだろうな……。強者を求めて喧嘩を売るんじゃないぞ?あまり揉め事を起こさないようにしてくれ。

 話は変わるが、本来冒険者は初めにEランクに登録される、しかし君は推薦状を持っているし毒風のラムザの討伐という実績もある。この二つの件を踏まえて、Cランクで登録しようと思う」


 そういうとサーニャさんは再びマリーを呼び出し、報償金と登録の手続きを命令した。

 それを待つ間、なぜCランクからなのかサーニャさんに尋ねる。


 サーニャさんの話では推薦などで飛ばせるのはCランクまでであり、そしてCランクでの登録のは少ないらしい。

 Cランクからは盗賊の討伐や護衛などの人を殺すことを伴う依頼があるからだそうだ。

 さらに貴族や大きい商会からの介入を防ぐための規則らしい。冒険者ギルドの立場は中立なんだそうだ。


「話はこれで全てだ。そろそろ手続きは終わってるだろう。受付に行くと良い。君の活躍を期待してるよ」


 サーニャさんにお礼を言い、応接室を出る。階段を降りていると一階から大きな声が聞こえてきた。


「昨日、丸一日東の大森林を探し回ったんだ!なのに毒風のラムザたちは見つからなかった!それなのに西の龍の森で冒険者でもない奴が倒しただって!?ふざけんじゃねえ!!俺達は一週間掛けてあいつらを追い詰めていったんだぞ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る