第4話:過ち

 そして私は光輝に抱かれた。

 私は何をしているんだろう。何で優李じゃない男性に抱かれているんだろう。私は抱かれながら心の中で優李に「ごめんなさい」とずっと謝っていた。


 そして光輝に抱かれながら優李との思い出をたくさん思い出していた。

 優李に告白した日のこと、優李と初めてキスをしたことやエッチをしたこと、励まし合いながら受験勉強をしたこと、合格発表会場で2人とも合格をして抱き合ったこと、そして今日の優李の笑顔。


 優李じゃない人とエッチをしながら、優李のことを考えているとお腹がキューっとしてきて、頭が真っ白になってきてしまう。



(優李、優李、優李、優李、優李……)



 頭の中で優李のことを考えれば考えるほど、身体は敏感に反応してしまった。



(ダメ。私は優李だけ。私は優李だけのものなの)



 私は必死に優李のことを考え続けていた。

 しかし、優李のことを考えるたびに、それと比例するように快楽が襲ってく来た。



(あっ、もうダメ………)



 そして私の頭の中は、真っ白な光に包まれて溶けていった。




 -




 翌日優李といつも通りに学校へ向かった。

 私は優李に申し訳ない気持ちでいっぱいで、まともに優李の顔を見ることができなかった。



「羽月さ、なんか今日は元気ない?」



 やっぱり優李は凄い。

 罪悪感を拭い去ることができてないくせに、それでも平常心でいようとしてる私の変化をすぐに見抜いたのだ。

 だけどさすがの優李でも、昨日親友の光輝と私がエッチしたことなんて思いもつかないだろう。本当は優李に洗いざらい話してしまいたい。そしてごめんなさいと謝ってしまいたい。



「ううん。何でもないわよ。優李いつも気にしてくれてありがと」



 優李に本当のことを言う勇気のない私は、初めての本気の嘘を付いて隠し事をした。




 -




 卒業式当日。

 あれから私と光輝は、エッチはもちろん2人で一度も会ってもいない。


 卒業式が終わってから、光輝は優李を呼び出して卒業と同時に引っ越しをすることを伝えていた。優李は「何でだよ!」「もっと早くに言ってくれよ!」と言っていたが、光輝は「急でごめんな」と一言伝えるだけだった。


 私はその光景を無表情でただ眺めるだけだった。




 -




 高校へ進学したら新しい友達やコミュニティが形成されて、気付いたら光輝のことは言われないと思い出せないようになっていた。私と優李、そして奏の3人で遊んでいても、光輝の話題は誰も出さなかった。


 そんな日々が終わったのは、高2の夏休み前だった。

 優李から「光輝って覚えてるだろ?あいつそろそろ戻ってくるみたいだぞ」と聞かされた。

 私の心臓がドクンと跳ね上がる音が聞こえた。何で?忘れてたのに何で戻ってくるのよ。もう二度と会わないからあんなことしたのに、帰ってきたらまた優李への罪悪感で心が潰されちゃう。


 だけど私はそんな心の動揺を優李に見透かされないように「そうなのね。久しぶりに会えるのは楽しみね」と強がりを言った。




 -




 家に帰り部屋に入ると、私はお風呂にも入らずベッドの上で横になった。




(まさか光輝くんが帰ってくるなんて思わなかったわ……)




 私はあのときのことを思い出して、優李にまた申し訳ない気持ちになった。私にとってあのときの行為は悪夢でしかない。実際にあのときから、優李にバレてしまってフラれる夢を頻繁に見るようになってしまったのだ。




(最近はあまり見なくなったのにね……)




 私は優李に対してあまりにも申し訳ない気持ちになって、自然と涙を溢してしまった。


 しばらくの間、優李に対する罪悪感に押し潰されそうになってベットに埋もれていたら、スマホの画面が光った。

 優李からのメッセージだったので、スマホを急いで開くと『光輝が今度帰ってくるから、奏も誘って久しぶりに4人で遊ぼうぜ』という内容だった。


 いやだ。会いたくない。優李のことを裏切りたくない。だけど、ここで拒絶すると優李に怪しまられてしまうかも知れない。


 なので私は拒絶する心を振り払い「うん、分かったわ。会える日が楽しみね』と一言返すことができた。会いたいなんて思ってないのに。また優李に嘘を付いてしまった。私は知らなかったのだ。一度嘘を付いてしまうと、その嘘を誤魔化すために、またその嘘の上に嘘を積み上げないといけないことに。



「優……、うぅ………優李………ごめんなさい、ごめんなさい………」

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