第54話
次の朝、廊下を通りがかると掲示されている順位表、結果を見上げていた。
生徒は疎らにいる程度で順位よりは興味は湧かないらしい。結果を一瞥して教室に入っていく生徒がほとんどだ。
尤も俺たちのように特別な事情がない限り、グループの順位から計算して、ランクが上がるか把握できるので期待といったものはないのだろう。
勿論俺たちのグループに変化はなく現状維持というつまらない結果に終わった。
「先生、随分捻くれてますね」
「出会い頭に批評されるとは思わなかったよ。一体何のことだ?」
「俺、先生から処分結果聞いていません」
「言ってないっけ?でも既知の通りだ」
聞いていない。
俺に退学と言ったと思っていたが実は桑原に対しての言葉だった。どうして俺に対しては言及せずに桑原へ伝えたのかは謎だが、どうせ忘れたと誤魔化される気がする。
そして勘違いした桑原に絡まれ、透百合の登場によりなあなあになってしまった。
「適当ですね」
「それも既知のことだろ?」
「ええまあ。今回、色々透百合と動いてくれたみたいじゃないですか」
「...桑原君たちの件か。はあ〜。あいつ言ったのか...」
「正直に言えば良かったじゃないですか」
「別に君のためではないよ」
先生は少し考えたような表情を取ると再び順位表に目を戻した。
「桑原君たちに少し引っかかっていたから事実を証明したまで。それと透百合君には勝てなかっただけだ」
「正直じゃないなー」
実際偽りのない言葉なのかはわからないが、照れ隠しとして把捉しておく。
透百合に勝てなかったのは本音であるに違いない。
「君だって、あの子たちなんて退学にしておけば良いものを、随分とお人好しだな。また面倒事を吹っかけられても僕は何もしないぞ?」
「大丈夫です。何か有れば今度は容赦しませんし」
「ふっ、最下位ランクが調子に乗るな。Eランクの分際で」
嘲笑しながら憎まれ口を吐き捨てるが、いつものように不快感はなかった。
「グループとしてはそうですけど、俺一位なんで。刀の使いも自信あるので」
反論するように、俺も先生にニヒルな笑みを見せた。
「良い顔するじゃないか。なら僕に証明してくれよ。グループとしてAにまで上がってくれば認めてやらないこともない。だろ?最下位の最上者殿」
試すような言い分を残し、手を挙げて去っていく。
振り返る際のわずかな横顔しか見えなかったが、微かに笑った気がした。期待をこめたような笑みが。
そうは言っても先生への態度は何も変わらない。これから媚びたり追従する気も毛頭無い。継いで毛嫌いすることの方が多いと思う。
だから、ただの性格の悪い教師に感謝など全くする気も起きなかったが、先生への印象が少しだけ変わったように思えた。
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