第47話

「拓真君、前言ってたように実力見せてよ。どれくらい強いのか。アタシ負ける気はしないんだよね」

木刀を構えながら挑戦的にこちらへ問いかける。随分となめられたものだ。

挑発には乗りたくないが、やる気は申し分ない。絶好の機会だ。

「藍水からかかってきて良いぞ?どうせなら真剣を使うか?」

「やめておく。切っちゃったら嫌だもん」

「変な斟酌は要らないぞ?」

「しんしゃく?」

「ああ...いいや。じゃあ、どこからでも」

会話を諦め木刀を構える。

「やあああああ」

威勢よく甲高い声を響かせ、飛びかかるように自然な流れで踏み込んできた。

それも俺のところまで来るまでに減速し続け、打ち込みも弱くなっていた。

そのまま連続して縦横に打ち込んでくるが、姿勢が定まっておらず全然遅い。

藤桜と比較すると軸は整っていて、的確に同じ場所を叩いてくるため、多少素質があるかもしれない。

「なんで...当たらない...の」

だが次第に息も弾み始め、打つスピードもどんどん落ちてくる。

藤桜のように簡単に止めることなく、打ち続けてくる。根性があるのか、それとも負けず嫌いなだけか。

「はぁ..はぁ、、、はあ...」

「もう降参か?」

「......」

俺の顔を睨みつけてくるが、途切れつつも無心にぶつけてくるだけで隙が更に見えてくる。

一瞬だけ息を整えるところを狙い、首に横一線に振った。

「え...?」

何が起きたか戸惑いつつも、首横に木刀が迫っていたことに目を丸くしている。

もちろん寸止めだ。

「クッ」と腹立った顔で片手を上げた。

「はあ...良いわよ。アタシの負けで」

地べたにへばりつくと、息を切らしてこちらを睨みつける。

「認める気になったか?」

「...別に。このくらい。今は少し手加減していたくらいだし」

口だけは達者なものだ。打ち込んでくるのを辞めなかったのはただの負けず嫌いだったようだ。

「泣いているくせに一丁前なことを言うな」

「泣いてないし!何か入っただけだし!」

相当怖かったに違いない。木刀が首の横に来た途端、目視できていないにせよ気配でわかったのか瞳に涙が溜まり始めたのをはっきりと見た。

「まあ藍水、根性は認めるぞ。重心も整っている」

「でしょでしょ?」

虚に染まっていた目に光が灯り、乗り出してくる。「だがお前は一点を狙いすぎて一心不乱に振り回しすぎて周りが見えていない。そのせいで隙だらけだ。太刀筋を見なければ確実に切ることはできない。それと...」

「わかった、わかりました!悪いところ褒め言葉より言い過ぎじゃない?アタシだけじゃなくて、翡翠ちゃんともやりなよ!」

飴と鞭は使いようと言うが、鞭は打ちまくっていくスタイルで決めている。

後ろを見ると、藤桜がじっとこちらを見つめている。

「やってみるか?」

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